プロが教える太陽電池のすべてがわかる本 最新の太陽電池技術を基礎から学んでみよう! 太和田善久
「プロが教える太陽電池のすべてがわかる本」 最新の太陽電池技術を基礎から学んでみよう!
太和田善久 2011/09 ナツメ社 単行本 255p
No.0413★★★★★
1)当ブログ現在のところ、2011年9月発行とされる本の第一号。もっとも新しい最新刊である。(現在はまだ8月)。それだけに、情報が新しく、太陽光発電に対する頼もしい情報が、きちんと整理されている。
2)従来の太陽光発電システムでは、発電した電気をためておくことができないため、余剰分は電力会社に売電というかたちで買い取ってもらっていた。この余剰分をバッテリーに蓄え、日照のない夜間や悪天候の日に使用するのが、蓄電池付太陽光発電システムだ。p163
3)ドシロートの私にはどうしてこの「蓄電池付き」が、積極的にこれまで開発されてこなかったのかが不思議だった。余剰電力を売ることのできる「系統連係運転」だけが開発されてきたが、これでは地域独占の電力会社に対する対抗力には成り得ない。蓄電池付きの「自立運行」が基本にあってこその太陽光発電だと思う。
4)蓄電池の開発コスト、設置コスト、メンテナンスの複雑化、などいくつかの難点はあげられるが、バッテリーの開発も進み、結局は停電時には使えないとか、売買電のシステムの複雑さへの嫌悪など、蓄電化への想いをもっている一般家庭人は多いはずだ。
5)東日本大震災の影響から原子力発電が見直され、自然エネルギーへのシフトが望まれるようになった今、さらには計画停電への対策としても、蓄電池付太陽光発電システムの需要が高まっていくと予想される。p163
6)当ブログは今後も太陽光発電をおっかけてみたいと思うが、余剰電力の売買システムや、メガソーラーシステムより、この蓄電池付太陽光発電システムをメインとして期待したい。
7)日本の太陽光発電のビジネスは、太陽光パネル(あるいは、付住宅)を販売するところで、つまり「モノ」を売る所で終わっているのに対し、ドイツなどでは、その後のコストや効率の運用システムの提供がビジネスモデルとなっている。
8)ドイツのビジネスモデルでは、「システム・インテグレーター」が重要な役割を担う。その機能は、製品の卸(ディストリビューター)、プロジェクトの設計(プロジェクト・デベロッパー)、装置の設置(インストアラー)といった内容--より具体的には、コンサルティング、太陽電池やその周辺機器の選定と購入、大規模発電用の土地探し、システムの提案・設計・設置・管理・保証などだ。1社でこれらすべてを担うこともあれば、複数社が分担することもある。p58「日本とドイツのビジネスモデルの違い」
9)太陽光発電に関心を持っても、どこに相談したらいいか悩んだりするが、この部分をもっと積極的に押し出して、コンサルティングをメインとするビジネスモデルが日本にも必要だ。これなしには、説得力のある今後の太陽光発電推進にはならない。
10)私案の一つに、太陽光発電による震災地の復興策がある。これは仙台平野の津波冠水地区の面積1.1万ha、福島原発周辺の米作付け禁止水田1万ha、計2.1万haを国が借り上げ、太電池ギガファームを建設するというものだ。
これにより、おおよそ21GWの太陽光発電所が建設可能で、発電量は24.8TWhkだから、仙台平野と福島原発周辺だけでも、福島第一原発に近い電力供給が可能になるわけだ。p7大和田善久p7「はじめに」
10)仙台平野の住民の一員として、こんな馬鹿げた<戯画ファーム>には断固として反対する。こんな私論は、実際に仙台平野や福島の現地に立ったことのない人が考えることだ。あの緑なす豊かな大地は、大市場を控えた農地であってこその豊かさなのである。太陽光発電だけが目的なら、他にそれに適した地があるはずだ。
11)それに、大体において、メガソーラーから大都市に電力を送る、という発想も好ましく思わない。それでは結局は原発設置と、おなじような発想構造になってしまう。エネルギーもまた地産地消でいくべきだ。まずは、自分がつかう電力は、自分の生活圏内での生産を試みるべきではないか。規模を大きくするだけがよいことではない。
12)p124の「日本各地の日照時間ランキング」を見ると、宮城県は47都道府県のうち41位である。岩手県が36位で、福島に至っては44位だ。以下、青森、山形、秋田が最下位、と最も日照時間が短い地域が東北なのである。投資を回収する、と言う意味では、東北はメガソーラーの適地とは言い難い。
13)また、このことは、個人設置の自立運行や系統連係運用にしても、現地の人間としては、キチンと把握しておく必要がある。
14)2030年には、7円/kWhの世界を実現しなければならない。ちなみに、「7円/kWh」という数値は、日本の火力発電所の平均的な発電原価に相当する。つまり「発電コスト7円」とは、発電所建設の展開を促す一大メルクマールであるとともに、太陽光初d年が飛躍的に普及し、産業として自立化するための前提条件でもあるのだ。p225「『7円/kWh』で開ける展望 2020年10円、2030年7円」
15)売電システムだけで考えるのではなく、自立運用として、費用対効果が「投資100万円、10年で減価償却」、「中古マーケットの活用」という当ブログの手さぐり目標が、上の数値でいうと、どれほどになるのか、今後、さらに調査してみたい。
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コメント
三陸海岸、宮城中北部、福島海岸の日照時間は意外に多い。1kWの太陽電池システムで年間1000kWhの発電が期待できるので、年間3.6万円から4万円/kWシステムの売電売り上げが期待できる。投資ビジネスにできる。住宅地は地権者が多くて纏めるのが難しいが、農地ならha単位で設置が可能。但し、農地法という厄介な問題がありますが、
投稿: えい吉 | 2011/09/13 00:48
仙台平野の津波冠水地域は塩抜きしないと稲が育たない。メガソーラーで敷き詰めれば雑草のはえるのが少なく、発電の売り上げから150万円/haの配当があり、経費は他にかからない。米を作って最高品質で150万円/ha、いろいろ経費がかかって残るのは80万から50万円。米を作るより実入りが良いし、作業を伴わない。福島で米を作っても放射性Csの半減期は30年だから、汚染米はうれない、メガソーラーで電気を売る分には放射能はふくまれないのでビジネスになる。第一新規の雇用を多く創出するのが魅力。この作者、なかなか良いことをいう。孫さんよりずっと賢い。
投稿: えいきち | 2011/08/23 00:35