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2011/08/19

原発に頼らなくても日本は成長できる エネルギー大転換の経済学 円居総一

【送料無料】原発に頼らなくても日本は成長できる
「原発に頼らなくても日本は成長できる」 エネルギー大転換の経済学
円居総一 2011/07 ダイヤモンド社 単行本 237p 240p
No.0411★★★★☆

1)3.11以後における、今日的状況においては、表題のようなタイトルで主張することは、それほど難しいことではない。難しいどころか、すでに、絶対達成しなければならない課題になっている、とさえいえる。

2)この本の骨子は、エネルギーは短期的には天然ガスを多用し、いずれ代替ネルギーに変えていくべきだ、という内容で、当たり前と言えば、当たり前である。

3)その当たり前のことを、誰が、何時まで、どの位達成するか、ということになると、分析はなかなか難しい。

4)著者は、どうやら大学に籍を置く経済アナリスト、ないしは経済評論家、という位置づけだから、まぁ、おいしいことは、いくらでも言える立場である。また、前言を翻すことだって、できないことはないだろう。要は、この人は、この言説を責任もって、いつまで「実行」できるかにかかっているわけだが、そのような試算は、この本からは見えない。

5)代替エネルギーとは言うものの、水力、火力、地熱、風力、など、一般人にはなかなかとっかかることができないものばかりだ。所詮は、選挙のときに、そういうポリシーを持っている候補者に一票をいれるとか、自分の可処分所得の中で、なんらかの商品を自分用に購入する程度のことだ。

6)当ブログがこの数週間、図書館の本をめくってきた限りにおいては、一般人が自分の行動として脱原発をするなら、まずは、可能な人は、太陽光発電を導入すべきだろう、ということだ。これが出来なければ、あとは、節電とか、他の人頼み、ということになる。

7)太陽電池自体は2009年1月から国の補助金制度の復活と自治体独自の補助制度も併せて導入が広まったため、同年には太陽電池の国内出荷量も一挙に増加に転じている(太陽光発電協会)。また、同年11月には、太陽光発電システムで発電した余剰電力を、通常の2倍の料金で電力会社が買い取る制度も開始され、その拡大・普及への環境は整備されつつある。p117

8)私のようなドシロートだから言えるのだが、この売電という奴が、どうもいまいちはっきりしない。このような連携型ではなく、各家、蓄電池を用意して、昼発電したものを、夜、自家消費する、という形の方が、より、自らの発電という意識が高まるのではないだろうか。

9)太陽光の弱点は、天候や日照時間等のよる出力の不安定性にあり、また、太陽光を電力に変換できる割合である実質変換効率も13%程度にとどまっているのが現状だ。今後、変換効率を3倍くらいに上げていけば、発電コストも15円kWh程度まで引き下げが可能になると試算されている(同太陽抗発電協会)。p119

10)産業用の「良質」な電力が欲しければ、火力を中心としたエネルギーで当座をしのげばいいわけで、蓄電システムが各家庭に普及すれば、それほど「安定的」な電力なんて、必要ないのではないだろうか。ストーブの薪がなくなれば、さっさと寝てしまえばいいわけで、真夜中まで安定した電力なんて、一般家庭では、必要ないだろう。

11)競争的効率性を得ていくにはまだ時間を要するだろうが、今後、送配電の自由化とスマートグリッドの導入などが進められていけば、分散型電力供給システムの中で太陽光の小型の特性がより発揮されるようになり、地域的な電力源の主役の一つとなっていく可能性があろう。p120

12)可能性があろう、なんて高見の見物するのは、誰でもできるわけだから、とにかく責任のある人たちは、自ら、隗より始めてほしい。

13)電力の大量消費、オール電化に向けたライフスタイルへの反省なども同じだ。国民がそれを積極的に求め、推進してきたわけではない。むしろ、原子力発電の推進システムの結果として、大量生産と大量消費の必然性が生まれ、個人は、その推奨・宣伝に受け身的に乗っかってきたのが実体だ。p128

14)モータリゼーションのこれだけの普及には賛否があるが、車社会が伸びたのは、中古車市場というものが発達したからだった。新車だけでは車に乗れない家庭や若い人たちでも、とりあえず中古車を買い、あちこちこすったり、ぶつけたりしながら、運転の技術を磨いていく。

15)太陽光発電も、すでに20年の歴史があるわけだから、高価なものを減価償却数十年で売りつけることばかり考えないで、安価な太陽光パネル中古マーケットを生み出すことはできないのだろうか。

16)数十万で中古のシステムが組めて、屋根に上げるのは経費がかかるから、とりあえず庭においてみる、なんてビギナーがどんどん生まれてもいいはずだ。

17)社会的なコストとメリットという文脈では、原子力発電からの脱皮が、地球共生の持続的経済成長への扉を開き得るというきわめて大きなメリットを有している。p225

18)ちょっと白けた気分になれば、一個人にとっては、日本全体の成長なんてものは、どうでもいいのだ。安全神話とともに、セットになってきたのが、この成長神話じゃなかったか。これらの言葉の蔭で、なにか大事なことを忘れてきたようだよ。この20年、成長成長といいつつ、成長なんてぜんぜんしていないのだから。

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37)3.11天地人」カテゴリの記事

コメント

やんばるさん
貴重なご意見ありがとうございます。
広瀬隆流の論理に敬服します。
ただ、私は推進派の人々を「敵」とまでは思っていません。専門家たる人びとは、その立場で「人間らしい」決断をして欲しいと思っています。

投稿: Bhavesh | 2011/09/19 05:20

広瀬隆さんの本「こういうこと」98頁に、「反原発運動をやっている人々に、これだけはお伝えしたい。原発を止めたらどうしたらいいかというと、自然エネルギーを普及しなさい、という声をたくさん聞きます。これで一番喜んでいるのは誰だと思いますか。原子力産業なんです。自然エネルギーで5000万キロワットの原発をまかなうことはできない。これはあいつらの思う壺になるのです。・・こういう言い方は原発を20年も、30年も延命させます」と書いてあります。つまり、「原発の代わりに自然エネルギーを普及しなさい」だけでは、敵に反論の根拠を与え、電気が足りないから原発とのベストミックスという世論誘導に使われてしまいます。国民を誤った方向に導く格好の材料になるのです。だから、「原発がなくても、火力と水力で電力は十分に補える。特に火力はLNG革命で熱効率を採取方法も良くなっている。その間に自然エネルギーを増やして、火力に代替していく。さらに電力を自由化する。」という言い方をしないと、敵は生き残ってしいます。どうしたら、産業界をまきこんで敵をやっつけられるかを考えることが必要だと思います。

投稿: やんばる | 2011/09/18 12:05

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