基本を知る放射能と放射線 藤高和信
「基本を知る放射能と放射線」
藤高和信 2011/07 誠文堂新光社 単行本 143p
No.0414★★★★☆
1)3.11以降、この手の本はたくさんでているに違いない。当ブログでも何冊か手にとってみたが、大体似たような内容で、分かる所は分かるが、分からないところは、いつまで経っても分からない、というのが本音。
2)この本は「JAXA宇宙放射線被曝管理分科会委員」という肩書を持つ人の本であるだけに、推進派とも脱原発派ともとれない、ニュートラルな表現が続く。
3)ただ、本体としては、見開きページで、横書き左半分が文章で語られ、右半分が図解やイラストとなっており、前ページ、オレンジと黒の二色刷りなので、とっつきやすく、読み切りやすい。どうかしたら、小学生だって読めてしまう。
4)1986年4月26日のソビエト連邦(現ウクライナ)のチェルノブイリ事故は原子炉暴走型の爆発で、その規模は広島型原爆の600倍程度でした。実験する予定だったレベルで実験できず、低いレベルで実験を行ったのが原因とされてます。
事故処理者は合計で80万人、移住させられた者は40万人という説もあります。また多くの者がガンと白血病に苦しんでいるといいます。死者数はまだはっきりしません。
この事故は福島第一原子力発電所の事故と同じレベル7です。現在も、原発から北東に向かって約350kmの範囲内でにはホットスポットとよばれる放射能高濃度汚染地域が点在し、農業や畜産が全面的に禁止されています。
世界中の眼を向けさせた大事故でしたが、これらから教訓を得なければなりません。p45「チェルノブイリ、スリーマイル島原発事故」
5)チェルノブイリもまた、直下型地震が原因だったとする説もあり、いまだに死者の数も確定できないなどという。世界中、なぜにこれほどまでに、原発のこととなると、情報が十分に公開されないのか。教訓を得ようとしても、十分に公開されていないので、得ることのできない教訓がたくさんある。
6)原子力と宇宙の研究はともに時代の先端に位置するものです。広大なインフラストラクチャーを備え、その各成分がつつがなく動くこと、これが保証されないと動きません。皆さんはその全貌をつかみ、それを遠くに眺めながら、そのほんの一部分の課題とも真面目に取り組んでください。p142「あとがき」
7)なにも「時代の先端」に位置するのは原子力や宇宙の研究ばかりではあるまい。コンピュータを中心と知る情報工学にともなうインフラの変貌や、内的宇宙である意識の研究は、脳科学の発展とともなって、「人間とはなにか」という先端の研究ということができる。
8)そもそも、「時代の先端」である、という傲慢な考え方が、科学や原子力の盲信と暴走を生んだのであり、すくなくとも今回の原発事故を踏まえて、「原子力研究」は時代の「最後端」に廻って、すこしおとなしくしてもらいたい。
9)本書では、皆さんに幅広い分野を紹介するため、モニタリングの方法や、加速器までをカバーしました。また、温泉における放射線についても取り上げました。放射能や放射線について考え、正しく理解し、これからについてじっくり考えていきましょう。
皆さんの未来の活動に期待します。藤高和信 p142「あとがき」
10)現場の現役の人間が、「自分たち」で起してしまった事故の後始末も満足にしないで、未来の「皆さん」に期待されてもこまる。もっともっと徹底的な「猛省」が望まれる。すくなくとも、この本では「猛省」の姿勢が見えない。きれいごとを言いつつ、後始末は、未来人への「丸投げ」ですか。
11)他人に正しい理解を強要する前に、まずは自分の「理解」を総点検する必要があるのではないだろうか。
| 固定リンク
「37)3.11天地人」カテゴリの記事
- 東日本大震災全記録 被災地からの報告 河北新報出版センター(2011.10.07)
- 反欲望の時代へ 大震災の惨禍を越えて 山折哲雄/赤坂憲雄(2011.10.07)
- 3・11その日を忘れない。―歴史上の大津波、未来への道しるべ<2> 飯沼勇義(2011.10.06)
- 方丈記 鴨長明 現代語訳付き <2>(2011.10.05)
- 「スマート日本」宣言 経済復興のためのエネルギー政策 村上憲郎/福井エドワード(2011.10.04)
コメント