知っておきたい放射能の基礎知識 原子炉の種類や構造、α・β・γ線の違い、ヨウ素・セ・セシウム・ストロンチウムまで 斎藤勝裕
「知っておきたい放射能の基礎知識」 原子炉の種類や構造、α・β・γ線の違い、ヨウ素・セシウム・ストロンチウムまで
斎藤勝裕 2011/06 ソフトバンク・クリエイティブ 新書 221p
Vol.3 No.0433★★★★★
1)所用があって石巻に行ってきた。仙台東部道路や三陸自動車道は、渋滞の表示がでているものの、気になるほど混んでいるわけではなかった。ウィークディだったからかもしれない。
2)率直に言って、4月初旬に見た石巻と、すでに半年が経過しようとしている現在では、だいぶ違っていた。大通りはかなり片付いたイメージ、ちょっと目には震災があったことさえ気がつかない。
3)しかし、ゆっくり見れば、やはり被災地石巻だ。ちょっと裏道にはいり、海岸線に入り、川口に近付けば、瓦礫はかなり片付いたものの、その爪跡の生々しさは、今でもまざまざと残っている。
4)前々から気になっていたのだが、牡鹿半島沖の霊島・金華山の情報がほとんどない。ここまできたのだから、女川原発と鮎川港まで行ってみよう、ということになった。
5)石巻を超えて、牡鹿半島を走り出すと、やはりまだまだ生々しい。人口密度が低くなるので、山並みや木々に隠れてしまうが、ひとつひとつの小さな漁村の被害が一目でわかる。
6)女川原発の門前まで行ってみた。普段からそうなのだろうが、ものものしい警備だ。これは普段からこうなのだろう。門を突破などできないどころか、中も全然見えない。
7)ちょっと離れたところにある原子力PRセンターに行ってみた。定休日は月曜日ということだが、門は閉まって閑散としている。どうやら、震災後締めたままのようだ。
8)金華山への連絡船がでていた鮎川港の被害は目に余るものだった。大潮ということもあったが、地盤沈下した船着き場はすでに波の下。捕鯨博物館であるホエールランドも大被害。片づけの人以外見かけられず、ここから生活の痕跡は消えてしまっている。
9)この港では、震災後、他の海岸線から漂着したご遺体が1000体を超えたという。
10)船着き場にある4階建てのビルは、まだ片づけが済んでおらず、すこしづつ片づけていく間に、あらたなるご遺体が出て来る可能性もあるという。
11)金華山そのものの津波被害は少なかったようだが、地震による神社の被害はまだまだ片付いていないようだ。連絡船は就航しておらず、チャーター船になる。船着き場が復興するまでは、20年かかるのではないか、と地元の方は言っていた。
12)復興はまだまだだ。しかし、しっかりと動き始めている。ありがとうございます。
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13)知人から「みんなの放射線測定室」を作ろうという呼び掛け。一台300万円もする放射線測定器を自前で購入しようという。(ドイツ製ベルトールド社 LB2045) ああ、こういう時代になったんだなぁ。「放射能から命を守る宮城県南部の会」
14)「宮城県南部は福島県北部です。放射能汚染に県境はありません。」のコピーが生きている。
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15)さて、この本、これまで当ブログが読んできた「放射線関連リスト」の中ではベスト。★5どころかレインボウ評価としたいところなのだが、出版されたのが6月8日と、現在となっては、若干、福島原発に関する情報が古い。
16)原子力の基礎知識とか、原発の仕組みなどは、正直言ってどうでもいい。何回説明されても頭に入らない。だが、この本の特徴は、「第8章 放射線汚染事故」に50ページも割き、ひとつひとつの原発事故をキチンと簡潔に、「隠さず」書いてあること。
17)「キュリー夫妻の被ばく」、「エンリコ・フェルミ原子炉事件」、「第五福竜丸事件」、「スリーマイル島原発事故」、「チェルノブイリ原発事故」、「東海村臨界事故」、「高速増殖原型炉『もんじゅ』の事故」、「原子力『むつ』の事故」、「東日本大震災と原子力発電所」、「福島第一原子力発電所の被災」、「福島第一原発の今後」、「原子力発電の今後」、などなどが、実に簡潔に、「公平」に、当ブログのようなパラパラ読者にも、実にわかりやすく、なるほど、と思わせるように、的確に書いてある。
18)「第9章 もしも放射能に汚染されたら」は、まぁおざなりな内容だが、一冊の本としては、「放射能の基礎知識」としては、身につけておかなければならない、今や「常識」の部分ではある。
19)福島第一原発は、ジシン、ツナミと同じように世界に通用する言葉になるのかもしれません。いまこそ日本の復興の底力を世界に示すべきといえるでしょう。p197「原子力発電の今後」
20)当ブログでは今回の事故を、出来る限り東電原発事故、と言い慣わしてきた。だが、それは、物事を直視しない悪い癖かもしれない。ここでしっかりと、福島第一原発、フクシマ、Fukusima、と表記すべき時期が来るのかもしれない。こんなことで、この地域が世界に通用するようになるなんて、ほんとに悲しい。だけど、これもまた現実である。
21)汚染されているかどうかは、一般には公的機関が発表する数値に頼るしかありません。しかし、この数値はかならずしも私たちが口にする状態の食物の数値ではありません。洗い方や調理方法などでかわります。
発表された数値に一喜一憂するのではなく、数値の根拠を理解して冷静に対処することが、なにより望まれることです。p214「もしも放射能に汚染されたら」
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22)やっぱり自前の「みんなの放射線測定室」は必要だなぁ。
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