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2011/08/17

帰宅難民なう。 難民A

【送料無料】帰宅難民なう。
「帰宅難民なう。」 
難民A 2011/05 北辰堂出版  単行本  126p
No.0403★★★★☆ 

1)今回の3.11大震災では、首都圏も大混乱した。大きく被災した東北にエネルギーを取られたためではなく、単独で起こったとしても、首都圏での震度も大変なもので、大混乱が起きていたのだ。

2)私の身内も、首都圏で帰宅難民になった。それでも自分の足で帰ったということなので、女性ながら、よく道順がわかったね、と訊いたら、やはりケータイのナビ機能が大いに役立ったらしい。

3)著者、難民Aもまた、首都圏で帰宅難民となった。その時の体験を匿名で4月にまとめ、5月に出版。具体的な、分かりやすいレポートである。

4)今回は私が歩いた江戸川橋~大森間の18キロメートル強ほどのルートを軸にしているが、これをあなたが歩く道・距離と照らし合わせて考えてみて欲しい。p5「はじめに」

5)私が歩いたのも、おおよそ著者と同じ距離である。普段からウォーキングする時は、大体のんびり歩くので、1キロ10分として、10キロを1時間40分ほどで歩く。当日は、10数キロのところを二時間半強で歩いた。

6)私は、被災した直後、直ぐビルの外に出てみると、地下鉄が止まってしまっており、地下道から乗客たちがどんどん上に上がってきていた。地下鉄は諦めた。近くにいた警官に聞いたら、電車も止まっているという。もちろんバスも駄目だろう。なんせ信号機が消灯している。

7)タクシーという手もあったが、タクシーには乗らなかった。道のり約18キロ程度と自分でもすぐ値踏みしたが、すぐ、歩いて帰ろうと決意した。その理由はいくつかあった。

8)タクシーはなかなかつかまりそうになかったし、途中で渋滞に巻き込まれてしまう可能性があった。途中の被災状況を順番にこまかく見ていきたいと思った。そして、一番の理由は、すでにこのコースは自分の足で歩いた経験があったので、今回も、歩いて帰れるだろう、というすぐ判断がついたからだ。

9)私よりもペースが落ちた同僚はスニーカーではなく底が薄い革靴を履いていた。見た目からもあまり運動に適した靴ではないことが分かる。足にかかる負担は私よりも大きいはずだ。p87「地元で気が緩む」

10)私も当日は革靴だった。以前に同じコースを歩いた時は、スニーカーだったので、確かに革靴は快適とは言い難かったが、何年も使い慣れた靴だったので、歩くことは問題なかった。

11)携帯電話のワンセグ機能を使ってテレビを見れば情報は手に入れられたが、この状況下で歩きながら視聴できる状態ではなかったため、また、電池を消耗するのを避けるため、報道を一切見ていなかったというのも、リアルタイムの情報が手に入らなかった理由の一つでもある。p27「毎日新聞社前」

12)私も同じような体験をした。ワンセグを見れば、ニュースを知ることはできただろう。私も、歩きながら、電池の消耗を心配してワンセグは見なかった。

13)ただし、自分では忘れていたのだが、地震の最中、私はすぐに自分のワンセグで、広域におよぶ地震であることは認識していたようだ。これは、ビルの中で、一緒に会議に出席していて一緒に被災した同僚があとから教えてくれた。

14)巨大地震である。そのあと確認すべきは、全体像ではない。ピンポイントで、自宅はどうなっている、家族はどうなっている、である。それはワンセグではわからない。

15)歩きながら、多少の情報は口頭で仕入れたが、ほとんどの人が何が起きているか把握できないでいた。

16)途中で、道端に停車していた職人さんのトラックのカーラジオが大音量で流れていた。それをすこし立ち聞きした。地震後の数十分後のこと。沿岸部に大津波が押し寄せているらしい。それは確認した。しかし、私には津波より、我が家のほうが大事だった。

17)火事になっているかもしれないし、倒壊しているかもしれない。

18)歩きながらも、断片的に入ってくるケータイメールで、私より1時間も前に帰宅していた奥さんから、家は大丈夫だが、家の中はめちゃくちゃだ、ということを知らされた。

19)どのようにめちゃくちゃなのか。

20)何の準備もしていない人がいきなり歩くと決めたとき、疲れが一気に襲いかかってくるのは20キロメートル地点ではなく、15キロメートル地点なのではないだろうか。p80「歩きづらい道」

21)たしかに言えると思う。とくに私の場合は、10キロを超えたあたりから、雪が降り出した。幸い手袋は持っていたし、コートも着て、帽子もハンチィングをかぶっていた。マスクもしていた。だが、雪で真っ白になりながら、歩くのは結構つらかった。

22)走ってみると自転車がいかに便利なものなのかを思い知らされる。p91「自転車で帰る」

23)私は当日は徒歩オンリーだったが、後日、被災地を訪問する時は、自転車を使った。スピードといい、周囲を確認しながら走行する場合には、車より自転車のほうが便利だ。途中まで車で行って、近くになってから折りたたみ自転車を使った時もある。

24)本書における私「難民A」とはあなたのことでもある、とはじめに書かせていただいた。p125「あとがき」

25)まったくその通りだと思う。あの日、私は「難民B」だった。著者に共感する部分が相当ある。ほとんど同じような体験をした、と言えるだろう。

26)ただ、いつもこの通りにいくとは限らない。今回はこうなったけれど、災害はいつどこでどう発生するか分からない。

27)この本を読んで、すくなくとも個人的な体験としての「帰宅難民」だと思っていたが、結構みんな似たような体験をしたのだな、と改めて確認した。

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