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2011/08/18

福島第一原発事故を検証する 人災はどのようにしておきたか 桜井淳

【送料無料】福島第一原発事故を検証する
「福島第一原発事故を検証する」 人災はどのようにしておきたか
桜井淳 2011/07 日本評論社 単行本 167p
No.0407★★★★★

1)3.11もすでに発生以来5カ月が経過し、震災直後の混乱期を通り過ぎ、全体像がみえてきつつある。図書館などで手にする本も、かなりしっかりしたデータを基に検証した本が増えつつある。

2)この本もまた、3ヵ月を経過した段階で、以前より原発の危険性を指摘してきた研究者であり、かつての自らの指摘を確認するかのように、今回の原発事故の経緯と原因を検証している。

3)未曾有の大災害と言われた東日本大震災だが、個人的には、北は八戸から、宮古、釜石、気仙沼、南三陸町、石巻、塩釜、仙台荒浜、閑上、岩沼、亘理、山下と、海岸線を下ってきた。、最近は、福島の南相馬市の原発から20キロ圏内の立入禁止区域まで南下し、さらに、海岸線を走ってきてみた。

4)福島から南、茨城や千葉の海岸線を見る機会はまだないが、そう遠くないうちに訪れる機会があるだろう。青森、岩手、宮城、山形、福島などの内陸部を見たりしながら、未曾有の大災害ではあったが、全体像は次第に見えつつあり、復興という長い道のりには、大変な苦悩がともなうだろうが、復興できないものではない、という実感を持つに至った。

5)それに引き換え、原発事故に関しては、いまだ全体像が見えず、もとより非力ではあるが、では、なにをどうすればいいのか、というところが、どうもいまいち見えていない。

6)・原発本を読んでみる→面倒くさそうではあるが、まず手にとってみる

・原発を遠く眺めてみる→なにはともあれ、原発に近づいてみる

・実際の被害を数値的に把握する→ガイガーカウンターの購入の検討する

・電気を考える→太陽光パネルの設置を検討する

・さらなる被害に備える→防災グッツの再点検

・子々孫々へ何をつたえるか→まずは子どもたちの健康を守らなければ

7)・・・などなど、せいぜい、その程度しか想いがうかばない。

8)著者は、誠実に検証しているが、脱原発などの明確な解決策をだしておらず、今後の中長期的な展望は、今後の著書に期待しよう。

9)当ブログは基本的に、もともとが脱原発であり、今後も脱原発に希望をつなぐ方法しかしらない。

10)内陸部の地震被害は甚大ではあるが、修復不可能とは言えない。沿岸部の津波被害は、あまりにも巨大すぎて、絶句するだけだが、永遠に復興できないものでもないだろう。それに比すると、原発問題は、実に複雑で、どのように対応してよいかわからない。

11)・汚染地域に親戚縁者友人が多数いる。今後、彼らの住まいを気軽に訪れることはできなくなるのか。

・農家も多く、その農産物を多数いただいてきた。今後も気軽にもらってきて食べることができるのか。

・老後になったら、田舎暮らしをしたいと準備していた家がある。ガイガーカウンターで調べてみると、かなり高い数値を示している。これは永遠に、住めないよ、という意味にとるしかないのだろうか。それとも、将来的には、なんの問題もなく住むことができるようになるのだろうか。

・少なくとも原発の中心地域は人間の住めない地域になるだろう。それはどこまでの地域なのか。線引きが必要だ。

・周囲には、子どもたちがたくさんいる。これからも生まれてくるだろう。私は子どもたちとともに生きる社会の中にいたい。

・脱原発の方向性は間違いないのだが、いずれにせよ、その放射線の存在やら、廃炉に時間がかかるやらで、私の人生の残りは、原発と原発被害、原発の汚染と、共存していかなければならなくなったのだ。そのつきあい方を、早期にキチンと見極めていく必要がある。

12)原発事故の直接の原因を、地震とする意見と、津波とする意見がある。老朽化していた一号炉で言えば、どうも最初の最初から地震で原子炉の下部が破壊されてしまった可能性がある。

13)一般的に考えて、津波より地震のほうが遭遇する回数は多い。

14)地震であれ、津波であれ、実は、歴史を紐解いてみれば、なんどもなんどもこの日本列島を襲ってきていたのだ。今後もくるだろう。そして、なんどもなんども、人間は立ちあがってきた。

15)しかしながら、原発事故は、人類が始めて遭遇する異常事態である。地球そのものは復興するだろうが、その時に、人類が生存していない可能性は、かなりの確率で大きくなってきてしまった。

16)本書は全体的でかつ具体的で信頼のおける一冊である。ただ、まだ時間が足りない。十分な検証が完了していない。そして、中長期的な対策が練り上げられていない。何もかも、専門家ばかりにお願いしていてはいけないのだろうが、そうせざるを得ない現状である。

17)今後も、キチンとした検証を、ひとりの原発地域の隣人として追っかけていく必要を感じる。ほんとに、もう他人事ではないのだなぁ。

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