地域発・防災ラジオドラマづくり 知恵と絆で高める防災力 長坂俊成他
「地域発・防災ラジオドラマづくり」 知恵と絆で高める防災力
長坂俊成/坪川博彰 2011/03 日本放送出版協会 単行本 204p
Vol.3 No.0456★★★★☆
1)発行年月日はまさに2011年3月になっているが、巻末の「おわりに」が書かれているのは2月28日。まさか、その直後に、3.11大震災が起ころうとは、本の制作に関わった人たちにとっても、思いもよらなかっただろう。
2)震災直後に避難所に行くと、数少ない情報の中で、被災者たちは、自分たちの地域のニュースが少ないことに憮然としていた。外から見ていると必ずしもそうではないのだが、当事者たちにとってみれば、もっと密度の濃い情報が必要だったのだ。
3)他の地域などどうでもいい、とまでは言わないが、今、眼の前の問題について知りたいという要望を、マスメディアは叶えてくれなかった。
4)数週間すると災害地域FMが各地で立ち上がり始めた。被災地においては乾電池携帯ラジオは必需品だ。ケータイやスマホのワンセグはすぐに乾電池がなくなりやすい。ラジオは片手間に長時間聞いていることができるし、情報が細かい。
5)さて、この本は、防災FM局のたち上げ本ではない。平常時に防災意識をたかめるためのシュミレーションを、ラジオドラマ作りの中でやろうということである。
6)山下 私が避難所施設の山下です。避難施設の安全は確認いたしました。中につめて入ってください。
小野 まず上の倉庫からゴザを出して場所を決めますので、手伝ってください。
森川 俺たちは家が壊れている訳ではないし、余震が恐く、電気、水道も食糧も準備してないので、ここに来ただけで寝泊まりする訳でもない。大東町内会はまず鵠中に行けと言っている。もらいにきただけだ。上から重い物を持って来るのはやりたくない。
小野 非常時なので、あなたのような若い力が必要なんです。お願いします。
・・・・・・・・ p92「防災ラジオドラマの事例紹介」
7)私たちも3.11の夜一晩だけ避難所の小学校の体育館にお世話になったが、実は私たちの地区でも似たようなトラブルがあったようなのだ。あとから回覧板がまわって来て分かったのだが、実は、私たちの地区は、小学校の体育館に避難する前に、いちど地区の児童公園にあつまり、町内会の役員の先導で団体で小学校にいくことになっていたのだ。
8)かたや、小学校の方では、どんどん校庭に車で避難する人たちがやってきて、それを見かねた小学校の校長先生が、体育館を開けてしまったという。実際は、防災担当者の要望で小学校の先生が体育館を開けるという順番になっていたのだ。
9)今となっては、どちらが正しいかはわからない。私は児童公園にいくことなど考えていなかったし、実際、児童公園で集まっている人たちなどいなかった。なにはともあれ命が助かればいいのだが、しかし、これはもっと事前から話し合っておくべきだったことなのだろう。
10)私たちの地区では、非常時の炊き出しのシュミレーションを兼ねて、毎年、芋煮会を公園でやっていて、それは大いに役立った。避難所の開設などについては、この本に書いてあるような防災ラジオドラマの脚本づくりなどをやっていれば、もっともっと非常時の手続き順番をみんなで確認できていたかもしれない。
11)なるほど、こういう防災力もあるんだな。
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