リアルタイムメディアが動かす社会 市民運動・世論形成・ジャーナリズムの新たな地平 八木啓代他
「リアルタイムメディアが動かす社会」 市民運動・世論形成・ジャーナリズムの新たな地平
八木啓代/常岡浩介/上杉隆/岩上安身/すがやみつる/浅井哲也/郷原信郎/津田大介 2011年09月 / 東京書籍 単行本 399p
Vol.3 No.0469★★★★☆
1)3.11以降半年を経て出た本ではあるが、3.11とは直接には関係ない。ただし、リアルタイムメディアが主テーマなので、当然、3.11と、3.11以後の、社会、国際情勢に対峙する日本国内の事情が多く語られている。
2)もとの講義は明治大学の学部間の共通科目として2011年度前期に開講されたもの。このようなオムニバス形式の本は、主旨がバラバラで両論併記になっていることがよくあるが、この本は、企画が一つの講義であるということと、ネットを含めて、その聴衆が学生である、という前提であるため、割と主旨は一貫している。
3)以下、アトランダムに読み進めたが、順不同でその印象をメモしておく。
4)一番面白かったし、最初に読んだのは、漫画家すがやみつるの「メディアとしてのネットワーク」(p221)。ネットにくわしいとは聞いていたが、まとめて彼の文章を読んだのは初めてだったので、新鮮な印象。電気や通信の歴史から語り始め、ツイッターやフェイスブックまでの時系列を、自らの実体験として語る力量はすばらしい。
5)そして05年、54歳の時にインターネットを使った早稲田大学の通信過程に入学しました。09年からはそのまま大学院の修士課程に入り、11年に終了して、今は早稲田大学で後輩の学部生の卒業指導の手伝いをしています。p224「漫画家からインターネットへ」
6)すごいな。あこがれる。
7)次に読んだのは岩上安身の「リアルタイムメディアが拓くジャーナリズムの新たな可能性」p185。この本におけるもっとも中核の部分となるか。岩上は、前福島県知事の佐藤栄佐久のインタビューなどをものにし、秀抜な動画情報をネットで配信している。
8)p151の上杉隆「原発事故報道と『記者クラブ』問題」は、内容的には「報道災害〈原発編〉 事実を伝えないメディアの大罪」と、かぶる。3.11においては、私個人は原発・放射能問題よりも、地震・津波問題の方が、先決優先課題だったので、あまりに原発に偏ったジャーナリズムは、タイミングよく読み込むことができなかった。
9)ただ、上杉は、かなり注目すべきポジションをキープしているので、当ブログとしては、いずれ日をあらためて、彼の全作品を再読する必要があるのではないか、と思っている。
10)津田大介「リアルタイム報道とメディア」p359は、すでに彼の「Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流」(2009/11)や「未来型サバイバル音楽論」(2010/11)、あるいは解説を書いているタラ・ハント「ツイッターノミクス」(2010/03)などを、当ブログとしてすでに読み込み済みであり、まぁ、予想できるような内容であった。
11)友人のミュージッシャンが、福島でライブをやりたい、実際に瓦礫をみてやりたいんだけど、独りよがりな、現地の人に望まれていないのに行くのは嫌だと言う。p395
12)「その必然性を作ってくれと言われ、すごく無理難題だなと思いながら」(p395)そのセッティングに協力した津田は、6月11日、いわき市のコンビニでそのライブを実現させた。その前日、彼はメールで私を招待してくれた。以前、講演会で名刺を渡しておいたからだが、残念ながら、当日は東京で知人の結婚式があり、ライブに参加はできなかった。
13)いずれにせよ、その実行力はすごい。
14)その他、いずれの方もパワーのある講義録であった。
15)当ブログにおける新しい地球人の3要素として、システムエンジニア(IT技術者)、ジャーナリスト(表現者)、セラピスト(瞑想者)を上げ、その融合を目指しているが、ここに来て、前者二つの要素の融合がリアルメディアによって、徐々に実現しているかに見える。
16)三つめの要素についてはまだまだだが、3.11という新しくもヘビーなテーマを与えられた今、リアルタイムメディアを通して、さらなる融合に進む可能性があるのではないか、と期待し始めている。さて、リアルメディアが「瞑想」を始める日は来るだろうか。
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