脱原発。天然ガス発電へ 大転換する日本のエネルギー源 石井彰
「脱原発。天然ガス発電へ」 大転換する日本のエネルギー源
石井彰 2011/08 アスキー新書/角川書店 新書 191p
Vol.3 No.0451★★★★☆
1)3.11以降、原発に代わる代替エネルギー論議が盛んに行われているが、基本的には専門家たちが責任を持って実体ある変革を遂げていけばいいわけで、それが巨大なプロジェクトであればあるほど、一市民、ひとりの地球人として関われる範囲など、どんどん遠く離れていく。
2)それをいいことに、この期に及んでも原発推進派のゴリ押しはいまだに続いており、他の勢力にしても、結局はパワートリップの繰り返しとなっており、一市民としては、何が何やらわからん、というのが正直なところだ。
3)原発がこれまで担ってきたエネルギーの代わりになるのは何か? 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーばかり注目されているが、経済性を無視した空論が多すぎる。低コストで、しかもCO2排出量の少ないエネルギーは、天然ガスを使った火力発電しかない。表紙見返し
4)ああ、そうですか、それではお任せしますので、そのようにしてください。となってしまう。
5)太陽光発電システムを我が家に導入する場合、どれだけのコストがかかるか数社の見積りを、現場を見た上で作ってもらった。正直に言えば、どこも似たようなもので、はっきり大差はないと言える。
6)車で言えば、軽自動車なら、ダイハツにするのか鈴木にするのか、はたまた本田か三菱か、という悩みになるだけだ。軽がいやなら、リッターカーか3ナンバーか、と選択肢を広げてはいけるが、あとは予算枠をどれだけとれるかにかかってくる。
7)だが、探せば、一定程度のパワーを持っていながら、技術革新でより安価なシステムもないわけではなく、CISの通販扱いチャネルなどは、コストキラーでなかなか魅力的ではある。
8)しかし、それも、太陽光などほとんど効果ないよ、と言われれば、最初っから考えるだけムダなわけで、では、エネルギー問題はすべてあなた様にお任せします、と丸投げしておくことにこしたことはない。
9)日本は今後、エネルギーをどう利用していくべきか。私が考える最も有効な策は、実は「省エネルギー」である。皆さんは、省エネルギーと聞くと、「これ以上の節電を強いるのか」とお怒りになるかもしれないが、実は、日本にはまだ十分な省エネをする余地が残されている。
日本には、電気を発電している電力会社など、エネルギーの供給サイドに膨大なエネルギーの無駄遣いがあるのだ。p162「省エネは再生可能エネルギー以上にCO2削減に貢献する」
10)エネルギーの無駄遣いシステムは、高度成長期からバブル期への「使い捨ては美徳である」文化が抜け切れていないからで、日本のような無駄遣い国家は多いに反省しなければいけない。無駄遣いさせることによって「成長」する経済モデルなど、とにかく早く脱却しなければならない。
11)家庭用の燃料電池コージェネシステムは、エネファームの商品名ですでに販売されている。エネファームは、都市ガス・LPガス・灯油などから水素を取り出して発電する燃料電池(中略)。
ただ、エネファームの泣き所はやはり価格だ。エネファームで1台当たり300万円前後の初期投資がかかる。エネファームの場合、100万円程度とかなり高額な補助金はでるが、それでも約200万円程度の負担は必要。個人の家庭で導入するには、若干敷居が高い。広く導入されるためには、もう一段、二段の価格低下が必要だろう。p183「これからのエネルギー需給。世界、そして日本の進路は?」
12)阪神淡路大震災の翌年に我が家を改築した時に、導入を考えた太陽光発電システムは、今のエネファームのような状態にあった。300万に対して100万の補助がでた。ローンの支払いがさらに増えるわけだから、大変な重圧だが、あの時、導入していたら、初期投資は回収しただろうか、と考えてみる。
13)金利や使用状況、売電システムを総合したとしても、まずはトントン。自己満足はできるが、経済的には大きなメリットはなにもなかった、と言える。
14)当ブログは、もともとは「意識をめぐる読書ブログ」である。ひとりの人間として何ができるか。とくに精神性を高める上で、どのようなライフスタイルが求められるのか、というあたりを探っている。
15)本書のような天然ガスに対する期待感などは、その話を聞いてみれば分からないわけではないが、ああ、そういう立派な方法があるのなら、お任せします、と言いたくなる。
16)もっと言うなら、分かっているなら、さっさとやってくれ、とさえ言いたい。少なくとも、個人ではどうしようもない世界のことである。
17)広瀬隆は、原発問題と、電源問題は切り離して考えてくれ、と言う。原発はとにかく直ぐ停止。停止しても現在のままで電力は不足しない。とにかく原発は危険である。そして、将来に対する電源問題は、あとでゆっくり議論して、すこしづつ安全なシステムを作って行けばいい、ということになる。
18)そう言った意味では、天然ガス発電は確かに、大きな切り札である。
----------------------
19)9月14日夜、テレビのニュースで、東京都が東京湾に原発一基分の発電量を持つ天然ガスの発電所を設置する計画を立てたという。国に対するイニシアチブをとるためだとか、送電線の問題で電気量が30%上がるとか、東京の6%の電気量を賄えるだとか、断片的なニュースだったが、良いニュースだと思った。
| 固定リンク
「37)3.11天地人」カテゴリの記事
- 東日本大震災全記録 被災地からの報告 河北新報出版センター(2011.10.07)
- 反欲望の時代へ 大震災の惨禍を越えて 山折哲雄/赤坂憲雄(2011.10.07)
- 3・11その日を忘れない。―歴史上の大津波、未来への道しるべ<2> 飯沼勇義(2011.10.06)
- 方丈記 鴨長明 現代語訳付き <2>(2011.10.05)
- 「スマート日本」宣言 経済復興のためのエネルギー政策 村上憲郎/福井エドワード(2011.10.04)
コメント