原発・放射能図解データ 野口邦和他
「原発・放射能図解データ」
野口邦和・監修 プロジェクトF・文 2011/08 大月書店 単行本 157p
Vol.3 No.0446★★★★☆
1)よくまとまった本である。今の段階では、この本を一冊頭の中にいれておけば、まずは3.11のアウトラインは把握している、ということになる。きれいな図解、イラスト、簡潔な記事が理解を速める。
2)・・・しかし、と思う。この本、本書のために結成された環境問題ライター女性4人からなる集団でつくられている。その後、専門家に監修してもらっている。
3)他の技術書ならともかくとして、こと原発においては、知識や事実の理解が問われるのではなく、自らがどう行動するのか、どう行動してきたのか、が問われる場面が多い。
4)後だしジャンケンで、事故後に私は脱原発派だ、みたいなポーズをとる人は少なくない。このような人々は何の力にならないことが多い。
5)そもそも、自分がどう理解し、どういう意見を持っていようと、日本の電力事情の場合、とにかく原発で作った電力を買わなくてはならないシステムができあがっている。ケータイ電話のように契約会社を選ぶことはできない。
6)100%、地域の電力会社から買電するしか方法はないのである。そのために0:100で、ひとりひとりの意見が圧殺されてきた。脱原発をいくら唱えたところで、原発を減らすことができないファシズムが横行してきたのである。
7)それをいいことに、原発問題に対しては無関心を装ってきた人も多い。そしてまた、事故が起きてから、いかにも良識的な顔をして、原発に対するマトモそうな意見を出してくる人もいる。
8)この本は、よくできた本だと思う。そしてまた、この本の関係者たちも、きっと良識的に行動してきた人たちなのだろうと、推測はする。しかしながら、ものごとは、一冊の本だけが立派でもどうしようもない。
9)今、ここに来て、人間としてのひとりひとりの生き方が問われている。それは、当然、私自身も問われていることになる。
10)わかった風な顔をして、このような本を何冊も読み連ねてても、結局は、原発にお世話になるしか道が残されていないのでは、最初からこんな本を読んでいても切りがない、ということになりかねない。
11)このような本がでてくることは良いことだ。このような本を読めるのは幸せだ。しかし、本当に問われるのはその後のことである。このような状況をどう変えていけるのか、どうすれば解決できるのか。そこへの道筋をつけるのは、ひとりひとりの実存であるし、具体的な行動である。
12)でなければ、結局は無い物ねだりのクレーマーに成り下がってしまう可能性がある。
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