エマソン魂の探求 自然に学び神を感じる思想 リチャ-ド・ジェルダ-ド<2>
「エマソン魂の探求」 自然に学び神を感じる思想<2>
リチャ-ド・ジェルダ-ド/沢西康史 1996/12 日本教文社 単行本 280p
★★★★☆
1)スナイダーへの系譜としてソローが上げられ、その師匠としてエマソンが上げられるのは、まずは常套の流れとしても、宮沢賢治までエマソンを読んで影響を受けたとなると、ここは一つ、この本にまずは目を通しておく必要があるな、と思った次第。
2)同じ著者、同じ訳者による「エマソン入門――自然と一つになる哲学」(1999/01)もある。
3)エマソンはすでに古典であろう。宮沢賢治も定番本ではあるが、やはり古典の領域に入っているはず。だから賢治が読んだとされるエマソンは、立派な古典であるはずである。3.11後に賢治を読むということは、そこに「東北」というキーワードが挟まっているだけに、確かに今日的に読むことも可能であろうと思われる。
4)エマソンは、ヨーロッパの呪縛を解いて、アメリカ独自の思想哲学を最初に打ち立てたとされるが、ダイレクトに3.11後に読むというのは、多少無理がある(私の場合)。スナイダーやソロー、三省や賢治を通してエマソンを仰ぐということは可能なようだ。
5)そもそも、3.11とは一体なんであろうか。地震は、あり得るものである。風や嵐のように、自然界の現象として、あり続けてきた。津波もまた、その定期性は多くの方面で指摘されている。自然と人間、という対置なら、そのままエマソンを読むことも可能なようだ。
6)ここに、3.11には新しい要素が含まれている。原発と放射能である。これは、自然界にはない、人間の生み出した業である。地震なら耐震性を高め、津波なら、高台移転と、職住分離という対策もとれそうだ。しかし、原発はなぁ・・・
7)エマソンに原発を乗り越えていく力を求めようとするのはちょっと難しい。もっとも原発を乗り越える思想は、そう簡単に転がってはいないが。
8)エマソンが私たちの時代に持つ意味を理解するのは難しいが、ソーローの場合にもそうであったように、彼がアメリカの各時代の文化的なムーブメントを育む豊かな地下水脈になってきたことは確かだ。
ホイットマンがエマソンからの影響を否定したというエピソードが残っているけれども、それを否定しようとしまいと、またエマソンは哲学者ではなく二流の詩人にすぎないと言おうと、、エマソンとその著作は人びとに対して不思議な感化力を持っているように思われる。
20世紀はアメリカの世紀だと言われるが、その「アメリカ」というシンボルの根底にあるものを見抜くのにエマソンは格好の手がかりになってくれるかもしれない。いや、アメリカにどどまらず、エマソンはその「自然論」をもって、環境の時代を生きる私たちにかけがえのない視点を提供してくれている。p279「訳者あとがき」
9)ゆとりを持って、エマソンとつきあっていこう。
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