震災トラウマと復興ストレス<3> 宮地尚子
「震災トラウマと復興ストレス」 Vol.3 岩波ブックレット <3>
宮地尚子 2011/08 岩波書店 全集・双書 63p
★★★★★
1)この本に添付されている図式が極めて興味深い。
2)当然この図式は、震災地におけるトラウマやストレスについての実際的な体験から生まれてきたものだが、この図式を例えば、歴史津波と重ねてみたらどうだろう。
3)「仙台津波の歴史的津波」(1995 宝文社)の飯沼勇義は、地元の郷土史家として、勤務校の地域を手初めに、沢山の史跡を調査し続けてきた。その断片的な資料が、点から線、線から面、そして、面からついに立体的な形で、400年前の慶長津波(1611年)、1000年以上前の貞観津波(869年)の実体をあぶり出したのである。
4)史料上にける尾根の部分から外斜面の傾斜角度を推測し、内斜面からさらに内海化してしまった、本当の被害地を幻視した。そして、そこから消えてしまって、歴史に一切残っていない「円錐島」をあぶり出したのだ。
5)3・11の16年前からいわゆる「赤本」を出して警告していたのだが、飯沼の警告をマトモに受ける人は少なかった。が、彼が見た「環状島」→まぼろしの「円錐島」は、まさに存在していたのである。
6)そのことは、今回のこの3.11で実証されてしまった。「3・11その日を忘れない。―歴史上の大津波、未来への道しるべ」にその執念の人生がにじみでている。
7)今後、被災地の中から、どのような文学、詩やアートが生まれてくるのか楽しみです。宗教やスピリチュアルな領域においては、東北は豊かな民俗文化ををもっていました。口承伝承の再評価、祭りや儀礼の復活再生、新たなタイプの祭りや儀礼の創造は、<内海>に沈んだ犠牲者たちの声をよみがえらせ、後世にまで伝えることでしょう。p61宮地尚子「復興とストレス」
8)今、当ブログは、「3.11後を生きる」というカテゴリのもと、宮沢賢治の世界にアプローチし始めている。そして、この宮地の「環状島」モデルから、「円錐島」の幻視へ突出していけるように、意識をクリア化し始めている。
| 固定リンク
「36)3.11後を生きる」カテゴリの記事
- 学者アラムハラドの見た着物 インドラの網 宮沢 賢治 <2>(2011.11.08)
- 再読したいこのカテゴリこの3冊「3.11後を生きる」編(2011.11.08)
- 宮沢賢治への旅 イーハトーブの光と風(2011.11.07)
- ポエム/宮澤賢治 シグナルとシグナレス 春と修羅(2011.11.06)
- 氷河ねずみの毛皮(2011.11.06)
コメント