« ゲイリー・スナイダー、仏教、宮沢賢治 アメリカ現代詩ノート 金関 寿夫 | トップページ | 神秘主義とアメリカ文学 志村正雄 神秘主義―ヨーロッパ精神の底流 »

2011/10/21

ゲーリー・スナイダーと宮沢賢治についての覚書 富山英俊 現代詩手帖 1996・3

Photo
「現代詩手帖」ゲーリー・スナイダーと宮沢賢治についての覚書 
富山英俊1996/03 思潮社 雑誌 
Vol.3 No.0500★★★★☆

1)ゲーリーは入谷(義高)から中国語の手ほどきを受けていたのだが、その進歩は著しかった。そしてもう一つは、1933年にこの世を去った日本の偉大な詩人、宮沢賢治の詩の英訳(抄訳)である。この英訳も優れたもので、ゲーリーが賢治と自分との類似性を直感し、その仕事をやったことにぼくは特に興味を抱いた。

 「スナイダーは賢治の生まれ変わりだ」と言う人もいて不思議ではないと思った。

 なるほどこの二人には共通するところがいくつかある。二人とも自然をこよなく愛するタイプの詩人だし、賢治はその言葉こそ知らなかったが、ともに真摯な「エコロジスト」だ。賢治の「昴」をみれば、そのものずばりの詩行がある。

 山へ行って木をきったものは
 どうしても帰るときは肩身がせまい

 そして賢治は法華経だったが、二人とも仏教徒だ。詩集「亀の島」に収められた「詩人といえば」という作品から、寒山と賢治の詩的精神が融合したゲーリーの詩学をみることができる。p13

2)1996年における「ゲーリー・スナイダー アンチ・ビートの詩人」特集号である。12人の人々が50ページに渡って思い々々にスナイダーを語っている。息子たちのカイ・スナイダー「詩人の父をもつのは・・・」、ゲン・スナイダー「ぼくが学んだこと」などが興味深い。ただ、全体的に短文が多く、ちょっと物足らない。特にスナイダーから宮沢賢治を見ようとしている現在の当ブログとしては、この富山英俊の文章以外に強いインパクトは感じなかった。

3)しかし、最後尾についている「ゲイリー・スナイダー年譜」(遠藤朋之・編)は興味深い。突然だが、当ブログの隠れ主人公として転生魂<多火手>が存在する。彼の時代性を考える時、スナイダー本人とは言わないが、その周辺の潮流の中で、あの時代を漂っていたということはできる。そのことを現象化するには、ケルアックの「路上」や「ザ・ダルマ・バムズ」と重なってくるから、不思議である。

|

« ゲイリー・スナイダー、仏教、宮沢賢治 アメリカ現代詩ノート 金関 寿夫 | トップページ | 神秘主義とアメリカ文学 志村正雄 神秘主義―ヨーロッパ精神の底流 »

36)3.11後を生きる」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゲーリー・スナイダーと宮沢賢治についての覚書 富山英俊 現代詩手帖 1996・3:

« ゲイリー・スナイダー、仏教、宮沢賢治 アメリカ現代詩ノート 金関 寿夫 | トップページ | 神秘主義とアメリカ文学 志村正雄 神秘主義―ヨーロッパ精神の底流 »