「災害ユートピア」―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか レベッカ・ソルニット <1>
「災害ユートピア」―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか <1>
レベッカ ソルニット (著), Rebecca Solnit (原著), 高月 園子 (翻訳) 2010/12亜紀書房 単行本: 440p
Vol.3 No.0513★★☆☆☆
1)原文タイトルには、「A Paradise Bult in Hell」だから、必ずしも「災害ユートピア」は最適の翻訳とは言い難い。パラダイスとユートピアでは、ちょっと違いがある。
2)パラダイスは天国・楽園であり、反対の語としては地獄(Hell)がある。ユートピアは、理想郷という意味だが、現実には決して存在しない、という意味がある。反対語を探すとすれば、現実、ということになろうか。
3)サブタイトルは、The Extraordinary Communities That Arise in Disaster. 災害の中で発生する特異なコミュニティー、という意味だから、日本語の副題はまずまずだろう。
4)しかし、災害パラダイスでは、どうも落ち着きが悪い。やっぱり災害ユートピアという言葉がよかったのであろう。もう、このタイトルだけで、大体のイメージができてしまう。
5)しかし、すごいと思ったのは、このタイトルだけで、他の内容は、あまり親近感をもつことができなかった。この100年位の間の地球各国における災害時のレポートが中心になっており、3.11直前に出版されたとは言え、日本についての記述がない。
6)同じテーマだとするならば、1995年の阪神淡路大震災とか、明治、昭和の両三陸津波との比較であるなら、もっと身近なものに感じたかもしれない。
7)しかしまた、ふと考えた。他の地域の災害は、離れていると、あまり自分のことと思わないまま忘れてしまうのである。日本でのことだって、いつの間にか忘れてしまう。今回の3.11こそは、自分の足元で起きたから、忘れることができなくなっているだけではないだろうか。
8)宮地尚子「震災トラウマと復興ストレス」における環状島モデルは、大変印象深かった。宮地自身もこの「災害ユートピア」に触れていた。「爆心地」における無声状態と、ユートピア。なにか連動するものがありそうだ。
9)しかし、今は、どうもこの本のレポートにはなかなか入っていけない。
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