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2011/10/29

人や銀河や修羅や海胆は TheaterGroup“OCT/PASS” 石川裕人・作・構成・演出<1>

Oct
「人や銀河や修羅や海胆は」<1>
石川裕人・作・構成・演出 2011/10/29  TheaterGroup“OCT/PASS”  宮城県亘理郡山元町中央公民館大ホール
Vol.3 No.0510

1)山元町中央公民館は、3.11後、長いこと、避難所として使われてきた。数百人の人たちが身を寄せており、私たちの親戚も寓居していた。残念ながら一人の老人が亡くなったが、他の親族はかろうじて災害を逃れた。家も流され、田畑も流され、寺も流され、お墓も流された。遺影の写真も、仏壇の位牌も、お墓の遺骨も、全部持って行かれた、と老婆は嘆息をついた。

2)数カ月して、仮設住宅ができ、そちらに移ったが、生活の苦しさは以前と変わるものではない。今回、中央公民館を尋ねたら、まだまだ当時の面影は残っているのだが、自衛隊や救援隊がひっきりなしに出入りしていた被災直後の雰囲気は少なくなっていた。

3)ちょっと早目に会場に着いたので、車を置いて、山並みに沿って出来た仮設住宅の方に歩いて行ってみた。坂道があり、森があり、小道があった。小川があり、リンゴ園があり、そして大きな空があった。

4)ふと思った。先日、宮沢賢治記念館を尋ねたが、あの時、強く感じた賢治ワールドの雰囲気が、この地でも感じられるのではないか。まさに地続きである。地続きでないはずがないのだ。この地は東北、イーハトーブとセンダードの地は、繋がっているのだ。

5)会場に行くと、昔からの友人Sさんに会う。久しぶり。彼女は、昔いっしょにつくっていた雑誌に「春の修羅として」という文章を書いた人だ。賢治についてはかなり詳しい。彼女に誘われて、客席の一番前のかぶりつきに座る。

6)いざ始まってみると、役者たちはみんな若くて新鮮な人たち。身のこなしも軽やかだ。先日の黒テント公演と雰囲気も似ていないわけではない。しかし、こちらは、照明も舞台装置もない。ただただ椅子を並べただけのステージだ。

7)だが、小道具や所せましと動く身のこなしで、むしろスケールがでかい。

8)芝居が始まると、やっぱり、賢治にまつわる津波の話から始まった。やっぱりな。3.11後の今、ここに賢治が生きていたら、彼はどんなメッセージをくれるだろう。それこそがこの芝居のテーマであり、観客として観に来た私の眼目である。

9)隣で観劇しているSさんのようには賢治にくわしくない私だが、あちこちにいくつも賢治の小説や詩がちりばめれているのがわかる。あっちのストーリーがこっちにつながり、あのセリフをこちらの場面で語る。渾然となった賢治ワールドである。

10)それを大きな目で見ている子供たち、3歳や4歳くらいの子供たちも、圧倒されて笑ったり唖然としたりして見ている。面白いもんな。この子供たち、ストーリーそのものは分からくても、その圧倒的な迫力は、きっと一生記憶に残るだろう。大きなインパクトだ。

11)昔の子供たちも、笑ったり泣いたりして観ている。私も泣いた。なんだか泣けた。笑ったところも多かった。そうだ、ここでこそこのセリフ、というところもあった。ここで、この動きか、と意表を突かれたりもした。

12)役者たちも、この芝居を被災地で演じてきて、もう何回にもなるので、すっかり自分たちのモノにしている。説得力があり、まとまりもある。アドリブもまずまず、客席との掛け合いもグッドタイミング。

13)最後に、賢治役の小川描雀が、締めにかかり、ひとりセリフを語り始めた時、中央公民館の天井がグラグラ揺れた。すでに天井板も落ちて、むき出しになっていた大ホールだったが、明らかに大きく揺れた。

14)余震だ。だが、皆んなで逃げだす程のことではなかった。グッドタイミングと言えば、本当にグッドタイミング。賢治が宇宙から舞い降りてきたのだ。

15)私は、ずっと昔に別の友人の芝居団のステージに立ったことがある。練習している時、雷が鳴って、中断しなくてはならなくなった。その時、作者に言った。あの雷を、あなたのステージに乗せることができるなら、私は一生あなたの芝居に付き合ってもいいよ。

16)そんなことはなかなかできるものではない。

17)でも、今日のお芝居、あの地震をステージに乗せることができたんではないかな。天地が共鳴した。賢治が一緒にいた。空から舞い降りてきていたな。素晴らしい芝居だった。

18)芝居が終わったあと、そのまま、海岸線に車を走らせた。

19)被災地は、被災地だった。当日のあのままになっている住宅家屋も多い。海はあくまでジェントルだが、海岸線は、もう見る影もない。どこから手を付ける、というお話ではない。もう、私や、私たちが生きている間は、この風景は変わらないのだろう、とさえ思う。

20)だが、この大地で私たちは生きていくのだ。この地球で生きていくのだ。この地で、この人たちと生きていくのだ。

21)今日の芝居、賢治ワールド一辺倒だった。それはそれでいい。だが、当ブログとしては、山尾三省ゲーリー・スナイダー繋がりで宮沢賢治までたどりついた経緯の故、さらに、ウィルダネスやバイオリージョナルな視点が加わるともっといいなぁ、と思った。また、それは、当ブログのこれからの大きなテーマではある。

<2>へつづく

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