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2011/11/21

カリール・ジブラン「預言者」統合版 プロフェット(予言者)<6>

<5>よりつづく 

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「プロフェット(予言者)」<6>
ジブラーン (著)小林薫(翻訳) 1972/06 ごま書房 単行本 228p 
★★★★★

1)カリール・ジブラン「預言者」は当ブログが確認しただけでも、11冊のの邦訳がある。それぞれ抜き書きした部分があるので、一つに統合しておく。

2)悩めるアメリカの若者に半世紀にわたって もっとも広く もっとも深く読まれた”現代の聖書” 「プロフェット(予言者)」小林薫訳表紙コピー

3)アル=ムスタファー---この選ばれ、愛られる者---自らの時代への曙光---は、オルファリースの町で、12年ものあいだ、おのれが生れた島に連れ戻してくれる船を待っていた。そして、その12年目の刈り入れの月、9月の7日に、町の城壁の背後にある丘に登り、はるか海の彼方を眺めやった。と、霧に包まれて、近づいてくる船が見えた。

 そのとき、彼の心の奥のもろもろの扉は、さわやかに開け放たれ、彼の喜びは、海上はるかに飛び上がり始めた。彼は、目を閉じ、魂の静寂の中に祈った。
しかし、丘を下りていくや、忽然として、悲しみが訪れてきた。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p14「序章 船来る」

4)アルムスタファ、選ばれ、愛され、時代の曙であったアルムスタファ。かれは迎えの船を、12年の間オルファレーズの町で待ち続けていた。かれを故郷の島へ連れ帰るはずの船を。

 その12年目、アイルールの月、すなわち刈り入れの月の七日、かれは町の城壁のかなたの丘にのぼり、遥かに海を眺め渡した。すると、おお、薄靄(うすもや)のなかに、迎えの船が現れたではないか。

 かれの心の扉は弾(はじ)けとび、そこから、嬉しさが溢れ溢れて海のかなたに流れて行った。かれは、目を閉じて、魂の静まりのなかで祈った。しかし丘を降(くだ)ったそのときには、悲しみが迫り、思いに沈んで言った。

 迎えが来たというのに、私の心は安らかでない。かえって、悲しさがおそってくる。この町から、傷跡を胸に残さずに出ては行けない。この城壁の内側に過ごした苦しみの日々は長く、孤独の夜々もまた長かった。この苦しみ、この孤独から逃れ去ったとき、果たして悔いが残らないだろうか。「預言者」佐久間彪訳ポケット版 p9

5)しかし、丘を下りて行くと、悲しみが湧き、アルムスタファは、心密かに思った--- 私は、悲しむことなく、穏やかに、この町を去れるだろうか。いや、心を傷めずに、この町を去ることは、できないだろう。

 私が、城壁の中で過ごした辛い日々は、長かった。孤独の夜も、長かった。私は、名残りを惜しまずに、自分の苦しみと、孤独から、訣別することはできないだろう。
「預言者アルムスタファは語る」堀内利美訳p12「別れの日」

6)愛があなたを招くときは、愛に従いなさい。たとえその道が、苦しく、険しくとも。愛の翼があなたを包むときは、愛に身をまかせなさい。たとえ羽交いに隠された愛の剣が、あなたを傷つけるようになろうとも。

 愛があなたに語りかけるときは、愛にを信じなさい。たとえ北風が花園を荒らすように、その声があなたの夢を砕くようになろうとも。愛は、あなたに王冠をいただかせるとともに、あなたを十字に架りつけるもの。愛とは、あなたをは育むとともに、刈り込むもの。
「プロフェット(予言者)」小林薫訳p30「愛について」

7)お互いの心を与えあいなさい。しかし、お互いが心を抑えあってはいけない。大いなる生命の手だけが、あなたがたの心をくるむことができるのだから。いっしょに立っていよ。しかし、近よりすぎてはいけない。寺の柱も離れて立ち、樫の木も、絲杉の木も、互いの陰の中では育たないのだから。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p40「結婚について」

8)あなた方はいっしょに生まれ、これからも永久にいっしょに過ごすのだ。死の白い翼があなた方の人生を破壊するときも、あなた方はいっしょにいるのだ。ああ、あなた方は主の沈黙の記憶のなかでさえもいっしょなのだ。

 しかし、あなた方は二人のあいだに透き間を作っておきなさい。そして天の風があなた方のあいだを縫って踊れるようにしておきなさい。
おたがいに愛し合いなさい。けれども愛で動きが取れないようになってはいけない。むしろ愛を海にしておいて、その潮があなた方の岸辺のあいだを流れるようにしておきなさい。おたがいのコップを満たしなさい。 「よく生きる智慧」柳澤桂子訳p50「結婚について」

9)あなたの愛を与えることはできても、あなたの考えを与えることはできない。子どもは自らの考えを持つのだから。その身体を住まわすことはあっても、その魂までも住まわすことはできない。子どもの魂は、あなたが夢にも訪れることのできない、明日の館に住んでいるのだから。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p42「子について」

10)人はみな、大地の芳香を吸って生き、草木のように光によって命を保つことが望ましい。しかし、食べるためには、他の生命を奪い、渇きを癒すためには、生まれたばかりの仔から、その母の乳を盗りさらざるをえない。

 だから、それを敬虔の念をもって行わなければならない。そして、食卓を祭壇となし、森と野にある清らかなもの、無垢なるものにて飾り、人間の内なる、より清き、より汚れなきものの犠牲としなければならない。

 野獣を殺すときは、心のなかでこう説えよ。<おまえを殺めた同じ力におって、私もまた殺され、捧げられる。おまえを私の手に渡した同じ法が、私をより力強きものの手に渡すだろう。おまえの血も、天の木を養う樹液にほかならない。>と。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p56「飲み食いについて」

11)いま、私が語っているのは、あなたのなかの人間についてである。なぜなら、罪と罰とを知っているのは、あなたの神なる身でも、霧のなかの小人でもなく、人間なのだから。あなたがたが、悪行を犯した者について語るとき、あたかも彼があなたがたの一人ではなく、見知らぬ人として、あなたがたの世界への侵入者であるかのように語るのを、私はよく耳にしてきた。

 しかし、聖なる者や正しき者でさえ、あなたがたひとりひとりのうちにあるもっとも高いところを超えることはできない。また、邪悪な者や弱い者でさえ、あなたのうちにあるもっとも低いところより下へ落ち込むことはありえない。

 木全体が黙ってはいるものの、その目をかすめて、ただ一枚の葉といえど黄ばむことはないように、悪行をする者は、あなたがた、すべての中に隠されている意思の働きがなくては、かかる行いをすることはできない。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p96「罪と罰について」

12)オルファリーズのみなさん、人は太鼓を布で覆ったり、リラの竪琴の弦を緩めたりすることならできます。しかし、ヒバリに歌うなと命じることは、できはしないのです。「預言者のことば」有枝春訳p89「法律について」

13)あなたは、法律をつくることが大好きだが、それ以上に、法律を破ることに喜びを感じる。それはちょうど、海辺で遊ぶ子どもたちが、砂の塔を一心不乱に立てながら、笑ってそれを破壊するのに似ている。

 しかし、砂の塔を建てるあいだに、海はさらに砂を運んでくる。そして、塔をこわせば、海は、あなたといっしょに、声をたてて笑う。ほんとうに、海はつねに、無邪気なものたちに唱和して笑うのだ。
「プロフェット(予言者)」小林薫訳p98「法(おきて)について」

14)オルファリースの人びとよ、太鼓を黙(もだ)させることも、竪琴の糸を緩めることもできるが、空を舞うひばりに、歌うのをやめろとは、だれも命じられないのだ。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p100「法(おきて)について」

15)そこでひとりの男が言った。お話しください。「自らを知る」ことについて。アルムスタファは答えて言った。

 あなたの心はひそかに知っているのです。日々夜々の秘密を。しかしあなたの耳は聞きたがっています。あなたの心の「知」の声を。自分の魂がすでに知っているものを、あなたは言葉で知りたいと思う。自分の夢の裸の体に、指で触れたいと思う。
それはそれでよいのです。

 魂の隠れた泉は溢れ出るもの。そしてささやきながら海に流れ入るもの。あなたの無限の深みにある宝は、あなたの眼に触れたがっているのです。しかし、その知られざる宝を、秤で量ってはなりません。そして、あなたの「知」の深みを、測り竿や測り綱で探ってはなりません。なぜなら、「自ら」は極みなく果てしない海だからです。

 言ってはなりません。「私は真理を見つけた」と。言うならば、「私は真理のひとつを見つけたと」。言ってはなりません。「私は魂の道をみつけた」と。言うならば、「私の道を歩む魂に出遭った」と。
なぜなら魂は、およそ道という道を歩む。魂は一本の線の上は歩まず、葦のように育つものでもない。魂は広がって行くのです。無数の花弁を持つ蓮の花のように。  「預言者」 佐久間彪・訳p53「「自らを知ることについて。

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16)つぎに、ひとりの学者が、話すことについてお話しくださいと言った。アル=ムスタファーは、こう答えた。

 あなたが話すのは、あなたが、あなたの考えと、和し安んじていられなくなったとき。心の孤独の中に、もはや住みえないとき、あなたは唇の中に住み、その発する音で、気慰みや気晴らしをする。そして、あなたが話すとき、ほとんどいつも思索は半ば殺される。なぜなら、思考は空を飛ぶ鳥であり、言葉の檻の中では、その翼をひろげることはあっても、舞い立つことはできないのだから。

 あなたがたの中には、孤りいることを怖れて、おしゃべりを求める人もいる。孤りいる沈黙の中では、自分のありのままの姿が、自分の目に明らかになり、また裸の姿が捕えにくくなる。また、話す者の中には、知識も深い慮んばかりがなくとも、自らは理解できない真理を、話の中で現す者もいる。

 さらに、自らの中に真理を抱いていながら、それを言葉では語らない人もいる。このような人の胸の底で、精神は、沈黙の中で律動しながら存在しているのである。道や市場で友と会ったとき、あなたは内なる精神によって、あなたの唇を動かし、舌を動かすがよい。

 声の中のまことの声によって、友の耳のまことの耳に語りかけるようにせよ。なぜなら、葡萄酒の色は移り、樽はなくなっても、その味は忘れられないように、友の魂は、あなたの心情の真実を忘れないものなのだから。
「プロフェット(予言者)」小林薫訳p135 「話すことについて」

17)快楽を追うには、すでに春を過ぎ、しかし、ふり返るに秋にはまだ間がある人々がいる。求めること、思い出すことを恐れて、快楽をすべて遠ざける人たちだ。心をなおざりにし、あるいは、心にそむくことは避けたいからである。だが、そのようにふるまう中にも快楽はある。ふるえる手で根を掘って、思いがけなく財宝に巡りあったりもする。だいたい、心にそむくなというのが無理ではないか。 「ザ・プロフェット」池央耿訳p115 「快楽」

18)あなたがたが、本当に死の精神を見ようとするなら、生の肉体にまで心を広げよ。なぜなら、川と海が一つのように、生と死も一つなのだから。あなたがたの希望と絶望の深奥には、彼岸について、黙せる知識が横たわっている。雪の下で夢みる種子のように、あなたがたの胸は春を夢みている。その夢を信じなさい。なぜなら、その夢の中にこそ、久遠への門が隠されているのだから。「プロフェット(予言者)」小林薫訳p178「死について」

19)今や日は暮れた。巫女のアルミトラは言った。今日という日、ここの場所、そして話して下さったあなたの心、これらすべてに祝福あれ、と。彼は答えた。話したのは私だったろうか。私もまた聞き手ではなかったろうか。「ハリール・ジブラーンの詩」
p93「預言者」より一部抜粋

20)すでに夕方になっていた。女占い師のアルミトラは言った。この日の、この場所、思いでを語ったあなたの精神(こころ)に祝福のあらんことを。アルムスタファは答えて言った。語ったのは果たして私だったのか。私も聞き手ではなかったのか。新しい一日は、前の日と違ったところから始まる

 それから彼は神殿の石段を下りた。ひとびとはみなその後に従った。彼は迎えの船に乗り込み、甲板に立った。それからひとびとの方を向き、声高く言った。

 オルファリースのひとびとよ。風が私に船出を命じている。私は風ほど急いではいないけれども、私は行かねばならない。私たちさすらい人は、いつも孤独な道を探し求め、新しい一日は、前の日とは違ったところで始まる。日の出を前の日と同じところでみることはない。大地が眠っている間も、私たちは旅を続ける。私たちは強い植物の種子(たね)、心が熟し満ち足りた時、風にのり、まき散らされる。 

 あなたがたと共に過ごした日々は短く、あなたがたに語った言葉はさらに短い。私の声があなたがたの耳のなかで消え、私の愛があなたがたの記憶のなかでうすれたら、私は再びおとずれよう。そして、いっそう神の教えにかなった、豊かな心と言葉で、語りかけよう。

 そうだ。私は潮に乗って戻ってこよう。死が私を隠し、もっと大きな静けさが私を包んでも、私は、再びあなたがたの理解を求めよう。私の望みは、必ず報われよう。もし私の語ったことに真理があるなら、もっとはっきりした声と、あなたの考えにさらに近い言葉で、それを明らかにしよう。

 オルファリーズのひとびとよ。私は風と共に去っていく、だが、なすところなく行ってしまうのではない。今日の日が、あなたの求めを満たさず、私の愛をかなえないなら、別の日を約束しよう。

 ひとの求めは変化するが、愛と、愛で求めを満たそうとするねがいは変わらない。それだからこそ知りなさい。私が、もっと大きな沈黙の世界から戻ってくることを。野に露を残し、明け方消える霧は、立ち昇って雲となり、やがて雨となって降り注ぐ。私は、その霧のよう。

 夜の静寂(しじま)に、私はあなたがたの町を歩み、私の精神(こころ)はあなたがたの家に入った。あなたがたの胸の鼓動は私の胸に伝わり、あなたがたの吐く息は私の顔にかかり、私はあなたがたすべてを知っていた。ああ、私はあなたがたの喜びも、苦しみも、知っていた。あなたがたが眠っている時、その夢は私の夢だった。湖が山の中にあるように、ときには、私はあながたのなかにいた。

 私は、あなたがたの頂(いただき)と曲がりくねった斜面ををの水面に映し、あなたがたの考えと望みがうかんでは消えるのも映し出した。子どもたちの笑い声はせせらぎとなり、若者たちの憧れのは川となって、物言わぬ私のもとへ流れこんだ。せせらぎや川は、私の心の深みにとどいても、歌うのをやめなかった。「生きる糧の言葉 ジブラーン」岩男 寿美子訳p146

21)以上、統合感を出すために、当ブログなりの表記法に統一した。配列は、関連している原文の順に沿っている。

<7>につづく

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