南方熊楠と龍 十二支考 1
「十二支考 1」 (東洋文庫 215)
南方 熊楠 (著), 飯倉 照平 1972/08 平凡社 新書: 342p
Vol.3 No.0546★★★★★
1)中沢新一が「緑の党みたいなもの」の旗頭として選んだのは、宮澤賢治と宮本常一、そしてこの南方熊楠。
2)そう言えば、先日見たTheaterGroup“OCT/PASS”公演「人や銀河や修羅や海胆は」の石川裕人、その戯曲集「時の葦舟三部作」にも南方熊楠(桜)が、重要なキーパーソンとして登場してくる。
3)さて、重要だとは思いつつも、当ブログにおいて熊楠はまだ登場したことがない。どうもいまいちタイミングがなかった。そろそろこの辺で、メモだけでも残しておきたい。
4)そこで引っ張りだしてきたのがこの本。「十二支考」三部作は熊楠の主著と言われているが、私がこの本を購入したのは今から20数年前。その頃、なぜか「龍」の夢を見て、すっかり龍に執り着かれて、なんでもかんでも「龍」と繋げて物事が見えていた頃のこと。
5)「十二支考」とは言うものの、「子」、「丑」については書かれておらず、「寅」、「卯」、「辰」、「巳」についての熊楠の論述がまとめられているのがこの第一巻。
6)つまり、「虎」、「兎」、「龍」、「蛇」にまつわる民話や伝説をまとめ、それについてコメントがつけられている。
7)承平のころ俵藤太秀郷(たわらとうたひでさと)という者ありけり。ある時この秀郷ただ一人勢多の橋を渡りけるに、長(たけ)二十丈ばかりなる大蛇、橋の上に横たわって伏したり。両の眼は耀(かがや)いて、天に二つの日をかけたるがごとし。
双(なら)べる角(つの)尖(するど)にして、冬枯の森の梢に異ならず鉄(くろがね)の牙上下に生いちごうて、紅の舌炎を吐くかと怪しまる。もし尋常(よのつね)の人これを見ば、目もくれ魂消えて、すなわち地にも倒れつべし。
されども秀郷、天下第一の大剛の者なりければ、さらに一念も動ぜずして、かの大蛇の背の上を荒らかに踏んで閑(しず)かに上をぞ越えたりける。しかれども大蛇もあえて驚かず。
秀郷もうしろを顧みずしてはるかに行き隔たりける処に、怪しげなる小男一人、忽然とし秀郷が前に来てい言いけるには、われこの橋の下に住むことすでに二千年なり、貴賎往来の人を量り見るに、今御辺(ごへん)ほどに剛なる人をいまだ見ず、われ年来地を争う敵あって、ややもすれば彼がために悩まさる、しかるべくは御辺、わが敵を討ってたび候え、とねんごろにこそ語らいけれ。
秀郷一義も謂わず、子細あるまじと領状して、すなわちこの男を前に立てて、また勢多の方へぞ還りける。二人共に湖水の波を分けて、水中に入ること五十余町あって一つの楼門あり。p119「田原藤太竜宮入りの譚」
8)承平年間とは西暦923~935年だから、今から1000年ちょっと前の話。二十丈とは、一丈が十尺だから、60メートルくらいの大蛇(龍)が橋の上の寝そべっていた、ということになる。一町とは、およそ100メーターだから、五十余町とは、5~6キロメートル、水中に入っていった、ということになる。
9)大正年間に書かれた熊楠の文章はこのまま、す~と読み進めることができない。いちいちひっかかってしまう。しかし、それでもやっぱり、この話は面白そうだぞ。この田原藤太の竜宮城行きの話を読んでいて、一つのことを思い出した。
10)いつも図書館までウォーキングする。大きな河があり、はば数百メートルの大きな橋を渡るのだが、行きに、その土手の下に小さな社があって、最近、思いついて参拝してみると、なんとそこは「寶龍社」というお名前であった。おお、ここにもドラゴンか、とびっくりしていた。
11)帰り道にも、またこの橋を渡るのだが、ある時、ふと、気がつく、橋の上の歩道に何かが落ちている。すでに秋の夕暮れでよく見えなかったが、足元に来た時にみると、それは、妙に長いネギが一本おちているようでもあった。でも、何日か歩いて橋を渡ると、その歩道においていたのは、実はそれは、長ネギなんかじゃなくて、蛇の抜け殻であった。
12)ありゃぁ、なんだろうな、なんて思っていたところだったので、田原藤太の橋の上の大蛇の話を読んで、ギョ、としてしまった。
13)宮沢賢治にも「竜と詩人」という童話があった。ブータン国王の龍の話も話題になっている。なんだか、またまた、ドラゴントリップになりそうな、という予感がしてきた。
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コメント
南方熊楠は興味あるけど、おそらく追っかけは無理だな。深すぎるし、全体が膨大過ぎる。それに、当ブログと、どこでどうクロスするかが、ちょっと不明。
投稿: Bhavesh | 2018/09/18 18:45