« 宮澤賢治イーハトヴ学事典 天沢退二郎・他(編集), | トップページ | 郡山遺跡 日本の遺跡35 飛鳥時代の陸奥国府跡 長島榮一<5> »

2011/11/28

石川裕人戯曲集「時の葦舟」三部作<2>

<1>よりつづく

Asi
「時の葦舟」三部作 石川裕人戯曲集<2>
石川裕人 2011/02 Newton100実行委員会 単行本 p262
★★★★★

1)さて、この本、作家の40年間の活動の代表作とすることに異存はないだろう。その40年間とは、1970~2010年の間、と規定することも可能だろう。前後に僅かのゆらぎがある可能性はあるが、この間、この三部作が上演されたのは、1991/08~1994/09ということになり、執筆され、準備された時間を考えると、まさにその40年間のちょうど真ん中の時期、ということになる。

2)ネットで検索すると、石川裕人と書いて、いしかわひろと、という1974/10生まれのアメリカン・コミックスにかかわる作家がいるようだが、まったく別人であることは確認しておこう。本人たちの間にも何のかかわりもないはずだ。

3)この戯曲集を理解するには、当ブログにとっては、いろいろ予備知識を付けなければならない。そもそも戯曲、戯曲集とは一体なんだろう。当ブログで読んだことのある戯曲とは、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」ぐらいだ。それもそそくさに通り過ぎ、冊数稼ぎの早めくりであった。

4)「時の葦舟」で検索すると、荒巻 義雄/著のSF連作集(1975)というものがでてくる。必ずしも広く知られた本でもないらしいが、かろうじて図書館ネットワークでも見ることが可能なようだ。そのうち見てみよう。

5)「時の葦舟」という言葉からのイメージだと、何やらUFO的雰囲気もあるし、「葦」というところからきわめてネイティブで、しかも古代をイメージすることもできる。

6)この戯曲は三部作となっており、第一巻「絆の都」、第二巻「無窮のアリア」、第三巻「さすらいの夏休み」となっている。第三部のタイトルならまぁまぁイメージできないこともないが、夏休みはともかくとして、「さすらい」とは一体どうしたというのか。夏休みにヒッチハイクにでも行ったのかな。「絆の都」、「無窮のアリア」から、言葉としてイメージできることは殆どない。

7)第一巻「絆の都」は「未来編」となっている。第二巻が「古代編」、第三巻が「現代編」。

8)第一巻の巻頭には「ノーバート・ウィーナー」という人の言葉が引用されている。誰なのだろう、と検索してみると、サイバネティックスの創設者として知られている。なるほどサイバネティックスね、それはすこしイメージできる。

9)マクルーハンとともにサイバネティクスも読もう読もうと思っているうちに、後回し後回しになって、結局パスしてしまっている。これはこの辺でまた、すこし逆戻りにはなるが、すこし補強しておかなければならないようだ。

10)この戯曲が書かれたのは1990年代のほんの初半だから、ウィンドウズ95で本格的なインターネット社会がくる前のことである。この時代におけるメディア論やロボット論もなかなか興味深いものがある。

11)巻末には「引用作品」としていくつか挙げられている。

作中、以下の書籍から引用している。
全巻    J・R・R・トールキン「指輪物語」
「絆の都」 宮澤賢治「無声慟哭」
       四方田犬彦「GS」vol.3 巻頭言
       デヴィッド・ビート「シンクロニシティ」
 p257

12)賢治の「無声慟哭」はともかくとして、他の作品はどうであろうか。トールキンは断片的には触れているが、当ブログとしては、緩やかに回避してきたエリアである。ここは視聴覚資料も借りやすくなったので、まずはビデオからチャレンジして行こうか。

13)「シンクロニシティ」なら、私はすぐにユングを連想するが、さて、デヴィッド・ビートとは一体何者?と検索してみると「超ひも理論入門」というブルーバックスがある。なるほどブーツストラップ理論ね。「超」とついているから、なにか、もっとすごいことが書いてあるのだろうか。

14)へぇ、一つの戯曲集をめくるにあたって、これだけの予備知識、あるいは支線が必要になる、ということは、これはなかなか大変な旅になるかもなぁ。それでも、40年書き続けてきた作家の代表作とされる一冊を読ませてもらうのだから、こちらもその程度の敬意を払うのは当然のことか。

15)まずは、そろりと、わが葦舟のもやいを緩めてみようか。

<3>につづく

|

« 宮澤賢治イーハトヴ学事典 天沢退二郎・他(編集), | トップページ | 郡山遺跡 日本の遺跡35 飛鳥時代の陸奥国府跡 長島榮一<5> »

35)センダード2011」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 石川裕人戯曲集「時の葦舟」三部作<2>:

« 宮澤賢治イーハトヴ学事典 天沢退二郎・他(編集), | トップページ | 郡山遺跡 日本の遺跡35 飛鳥時代の陸奥国府跡 長島榮一<5> »