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2011/11/20

ブータン仏教から見た日本仏教 今枝由郎 <2> 

<1>からつづく 


「ブータン仏教から見た日本仏教」 <2>
今枝由郎 2005/06 日本放送出版協会 全集・双書 230p
★★★★☆

1)ブータンの若きロイヤルカップルが福島の被災地を慰問したニュースが話題になり、にわかにブームが起きている。当ブログでもブータンについていくつか触れていたが、数は多くない。以下、過去の書き込みの抜き書き部分をアトランダムにまとめてみた。

2)「まぁお聞き。そば畑から切り株を抜いたら、トルコ石が出てきたのさ。それが馬になり、馬が牛になり、牛が羊になり、羊が雄鶏になったのさ。ところでお前さん、お前さんの歌をこの雄鶏と交換する気はないかい」

 歌好きの男はびっくり仰天、驚いて棒立ちになってしまいました。ヘレーじいさんは男の腕に雄鶏をあずけ、自分は嬉しい心のうちを歌に口ずさみながら遠ざかっていきました。ブータンでは、誰が見ても馬鹿げた取り引きをする者を、「ヘレーじいさんのようだ」と言います。
今枝由郎 「ブータンに魅せられて」 p97

3)20世紀初頭から、この広大な地域の諸地方はチベット本土も含めて政治的、経済的、社会的に非常な変革を余儀なくされた。その中で現時点ではブータンが、この千年以上続いた文明の唯一無傷の代表者といえるであろう。

 こうした状況の中で、チベット研究にとってのブータンの重要性は計り知れないものがある。しかし逆に、チベットの観点だけからブータンを見ることは、一面しか見ないことになる。

 実際数世紀にわたって、ことにドゥク派政権成立以後、ブータンは色々な分野で独自性を発達させ、これはチベット学にはまだ知られていないが、それ自身のものとして研究されるべきだし、研究されるに値する。あまりにもチベット中心的なアプローチはブータンの独自性を見えなくしてしまう。今枝由郎「ブータン中世史」p22

4)フランス流のチベット歴史文献学といった場合、私にとって一番重要なことは、証明である。”誰でもどんな命題でも提唱することができる。しかし重要なのは、それを如何に論証するかである”というのが、金貨玉条のように教えらえたことである。

 一見、当たり前で、なんら取り立てて言うべきことでもないように見えるが、けっしてそうではない。近くは日本の現状を見てみると、命題はりっぱでも、その論証となると、論理に飛躍があったり、自家撞着を含んだりといったことが往々にして見られる。

 これは論証よりも、命題を重んじるところから由来するのであろうが、論証できない命題は、いかに魅力的であっても何の価値もない。少なくとも歴史文献学の立場からはそうである。今枝由郎「ブータン中世史」p335 

5)ヒューマニズムとは、堂々たる体系をもった哲学理論でもなく、〇〇主義と称される思想でもなく、洋の東西も、時の古今も問わず、あたしたちがなにをする時でも、なにを考える時でも、かならずわたしたちに備わっていたほうが望ましい、ごく平凡な人間らしい心がまえである。今枝由郎 「ブータンに魅せられて」 p168

6)この一世紀余に及ぶ近代仏教研究の成果によって、南伝仏教に関する知識が飛躍的に増大したにもかかわらず、それに照して日本仏教の「奇形」を修正しようという動きはほとんど見られない。日本仏教界は、その「奇形」のうえに開き直っているとしか思えない。このままでは、奇形度は増し、氏(玄侑宗久)の言葉通り、遅かれ早かれ衰えるのは自然の流れであろう。

 次に、上田紀行氏に関して言えば、私が氏の立場であったら「がんばれ仏教!」ではなく「くたばれ仏教!」と題した本を書いたであろう。
今枝由郎 「ブータン仏教から見た日本仏教」p193

ブータン関連リスト(当ブログの記事)

「ブータンのツェチュ祭り---神々との交感---」写真・永橋和雄 /文・今枝由郎 1994/03  平河出版社
「サキャ格言集」サキャ・パンディタ /今枝由郎 2002/08 岩波書店 
「ブータン中世史」 今枝由郎 2003/02 大東出版社
「ブータン仏教から見た日本仏教」 今枝由郎  2005/06  NHKブックス 
「ブータン 地球の歩き方」 2005/2 ダイヤモンド・ビッグ社
「ブータンに魅せられて」 今枝由郎 2008/03 岩波書店
ブータン国王の「龍」とは何か? 「シャンバラ 勇者の道」 2001/6 チョギャム・トゥルンパ めるくまーる
「龍は心の中に 自分の龍を育てなさい」 ブータン国王 2011/11/19 福島 

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