竜と詩人 インドラの網 宮沢 賢治 <3>
「インドラの網」 <3>「竜と詩人」
宮沢 賢治 (著) 1996/04 角川書店 文庫 281p
★★★★★
1)「センダード2012」と、空間と時間を確定した。しかもそれは、東北=丑寅=艮の「鬼門」にあたっている、ということまでは確定した。しかし、どうも「龍」の居場所がなかった。
2)今日、ウォーキングしながら書店に入って、ひとつ気付いた。もう年賀状の話題がでるシーズンになったが、来年、2012年は、辰年だったのだ。つまり、辰=竜=龍に通じる年回りだったのだ。
3)ここで2012→龍、という図式が成り立つことになるが、さて、センダードに、龍の居場所があるのだろうか。
4)バイオリージョンの一つとして、主なる地域のエリアをあすとナガナガタンと仮に名付けておいたのだが、ここはむしろ、Ecoタウンあすとナーガ、とすべきなのではないだろうか。例えばナーガルジュナは龍樹と翻訳されるように、ナーガには龍の意味がある。この言霊が、さらに龍を呼び寄せることになるのではないだろうか。
5)つまり、「センダード2012」の中には、空間的、時間的に、まずは「龍」を含ませることができたのだ。
6)(おれはその幾千由旬の海を自由に潜ぎ、その清いそらを絶え絶え息して黒雲を巻きながら翔けれるのだ。それだのにおれはここを出て行けない。この洞の外の海に通ずる隙間は辛く外をのぞくことができるにすぎぬ。)p92
7)この時、賢治は、スールダッタであり、アルタであり、また、チャーナタでもあっただろう。
8)(尊敬すべき詩人アルタに幸あれ。
スールダッタよ、あのうたこそはわたしのうたでひとしくおまえのうたである。いったいわたしはこの洞に居てうたったのであるか考えたのであるか。おまえはこの洞の上にいてそれを聞いたのであるか考えたのであるか。
おおスールダッタ。
そのときわたしは雲であり風であった。そしておまえも雲であり風であった。詩人アルタがもしそのときに瞑想すれば恐らく同じいうたをうたったであろう。けれどもスールダッタよ。アルタの語とおまえの語はひとしくなくおまえの語とわたしの語はひとしくない韻も恐らくそうである。この故にこそあの歌こそはおまえのうたでまたわれわれの雲と風とを御する分のその精神のうたである。) p95
9)偉い詩人のアルタではなく、もちろん青年スールダッタでもない。ましてや竜のチャーナタですらない我が身とて、洞のうえにて瞑想すれば、雲や風の歌が訪れることもあるだろうか。
10)(スールダッタよ。わたしは千年の昔はじめて風と雲を得たとき己の力を試みるために人々の不幸を来したために竜王の から十万年この窟に封ぜられて陸と水の境を見張らせられたのだ。わたしは日々ここに居て罪を悔い王に謝する。)
(おお竜よ。わたしはわたしの母に待し、母が首尾よく天に生まれたらばすぐに海に入って大経を探ろうと思う。お前はその日までこの窟に待つであろうか。)
(おお、人の千年は竜にはわずかに十日に過ぎぬ。)
(さらばその日まで珠を蔵せ。わたしは来れる日ごとにここに来て空を見水を見雲をながめ新しい世界の造営の方針をおまえと語り会おうと思う。)
(おお、老いたる竜の何たる悦びであろう。)p96
11)風雲、急を告げるか。
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