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2011/11/30

失はれた地平線 DVD <2>

<1>よりつづく


「失はれた地平線」
◆監督・脚本:フランク・キャプラ 出演:ロナルド・コールマン、ジェーン・ワイアット、H.B.ワーナー、トーマス・ミッチェル、マーゴ、ジェーン・ワイアット、マーゴ◆1937年公開◆DVD◆132分
Vol.3 No.0556★★★★★

1)かの事件が一応の通過点に到達し「失われた秘境シャンバラ」なるリストをつくってみた。そのトップに位置していたのがこの映画。最近、図書館ネットワークが、視聴覚資料の敷居を低くしたので、他の図書館からもDVDなどが借りやすくなった。

2)前回はビデオだったが、今回はDVDだ。もともと132分だった映画は次第にオリジナルテープが破損し、25分ほどカットされていたらしいが、それを復元し、映像が復活しない部分はスチールカットで穴埋めしての、132分復刻版である。

3)実に、「失われた『失われた地平線』」とも言うべきメタロスト・ワールドである。

4)今、このタイミングで、この映画を見たくなって、あらためて見る、ということに、何かのサイクルを感じる。

5)ブータン国王が3.11被災地を慰問で訪れ、「自分の中の龍を育てなさい」というメッセージを遺した。まさに、シャングリラの一つともいうべきブータンも、次第次第にその神秘のベールがはがされつつある。

6)シャングリラもシャンバラも、あるいは賢治のユートピアとしてのイーハトーブも、ついには自らのうちに「実在」するものであってみれば、現在の実在にくつろぐ以外、どこにも理想郷など存在しないのだ、という結論に行き着く。

7)思えば、いまここが理想郷でないはずがない。大地が揺れ、海が逆巻き、命のゆくえさえ定かでない環境の中で、もし自らの理想郷の中に安住できるとすれば、それはそれで、人間として行き着いた姿なのであろう。

8)映画として古く、ストーリーとしてもなお現代性を失ってしまった物語りだが、1937年、今ら74年前に創られた映像だとすると、感迫るものがある。宮沢賢治が亡くなって4年目に公開された映画だ。

9)この映画には1973年制作の別の映画があり、二つの作品を見比べるのも面白い。二つの映画の高僧ラマとのダルシャン風景を見較べるのも興味深い。

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