南三陸から 2011.3.11~2011.9.11 写真 佐藤信一
「南三陸から2011.3.11~2011.9.11」
写真・佐藤信一 ADK南三陸町復興支援プロジェクト 2011/09 日本文芸社 単行本 写真集
Vol.3 No.0548★★★★☆
1)著者は地元の町の写真屋の二代目。地元の人が、地元の眼で写真を残した。震災前の写真がまずトップにあり、その後の風景が続く。何枚の写真を載せたとて、あの美しかった以前の南三陸町の風景はもどらない。
2)何にも言えない。何も言えないからこそ、写真のもつ意義がある。
3)なにをどう表現する、という問題ではない。現存として目の前にこのような風景がある。日々これらの風景と対峙しながら、生きつづけている人たちがいる。そのことがすごい記録であると思う。
4)著者は、「2011.3.11~2011.9.11」というタイトルに、どんな意味を込めただろうか。3.11はともかくとして、9.11に、どんな意味があるだろう。そこには多分半年が経過した、という以上の意味はないだろう。半年が経過してこの状態なのである。これから何年かかれば、この写真集は「思い出」になるのだろう。今は思い出ではなく、眼の前の現実だ。
5)著者は表紙に、「頑張ろう 南三陸」と書いている。御本人たちが、そのようにおっしゃるなら、それを静かにうなづいて、受け止める以外にない。「頑張ろう 南三陸」、「頑張ろう 南三陸」、と、私もひとり、静かにつぶやいてみた。
6)5月11日、震災から二カ月後に、高台にある中学校の校庭から、整列した人々が、海に向かって祈っている写真がある。この中学校の校長は、10年来の知人。だいぶあとになってからだが、私もこの地に立ってみた。
7)写真なんか、一枚も取れなかったけれど、やっぱり、私にとっては、写真より、その地に立つことのほうが、何倍も必要なことのようだ。
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