八ヶ岳の空から 本当のしあわせを求めて --宮沢賢治と共に-- 大村紘一郎
「八ヶ岳の空から 」本当のしあわせを求めて --宮沢賢治と共に--
大村紘一郎/著 2011/10 山梨ふるさと文庫 単行本・ムック p209
Vol.3 No.0595★★★★★
一つは、賢治の唯一の心友と言われる保阪嘉内の取り持つ縁である。嘉内は、山梨の出身だった。同じ稗貫農学校に入学し寮で語りあかした。著者は山梨出身で教育に携わる傍ら賢治ワールドに思いを馳せる。
生徒へ配布していた資料をまとめたものだから、どうしてもテーマは多義に渡ってしまうが、脱稿した直後に3.11が起こり、急きょ書き直したと思われる。出版社も山梨ふるさと文庫という地方のマイナーなところからでているので、地域が絞られがちだが、テーマそのものは3.11と賢治を繋いだものとなっている。
ダイレクトに3.11と賢治をつないだものとしては、石寒太「宮沢賢治祈りのことば」という本を見つけたが、そこから波及する広い世界観と言う意味では、この本も感動的である。出自が真面目で、誠実で、清廉潔白で、教育的である。
へそ曲がりな当ブログとしては、そこだがだんだんと窮屈になってはくるのだが、この本から波及する視線は数多い。
梨木香歩の小説「西の魔女が死んだ」には「うん、簡単だよ。みんなで、だれか一人を敵に決めればいいんだもの」というセリフがでてきます。
宮沢賢治が小学生の時にもいじめがったそうです。赤いシャツを着て来る同級生をみんんがからかってはやしたてたのです。その時賢治は「おれも、赤いのを着てくるからな」といって、その子をなぐさめたといいます。関登久也「宮沢賢治物語」よりp50「『西の魔女が死んだ』---自分で決める力」
小学生の頃は、どちらかと言えば、いじめっ子のほうで、他人の痛みが分かりにくい子どもだったと思われる私には、ちょっと耳が痛い話ではある。関登久也も読み直したいし、梨木香歩は奥さんのジャンルだが、次のカテゴリ当たりから読み進めたいリストの中にある。このタイトルは映画にもなっていて、図書館にもあるので、近日中に視聴したい。
ウロウロしていると、当ブログ本来の焦点がボケてしまいそうだ。次から次と、面白そうなテーマが湧いてくる。その前に、当ブログの現在のカテゴリである「地球人スピリット宣言」の意味するところを、早急にまとめてしまわないといけないのではないか、と思う。
<ある点>をとれないことが<悪>ですか。<ある高校>に学んでいることが<劣>ですか。<ある家>に生まれたことが<不幸>ですか。
どういいわけしたとしても、私たちの本音には、社会階層の上へ伸びよ、大多数の中の限られた上の方の小数になれ、という方向だけが突出していて、その方向には明るい日が照っていて希望が持てる気がしますが、逆の方向は真っ暗闇で希望など持ちようがない、という観念操作が働きませんか。
一握りのエリートを生むために、多くの人間が負い目を背負わされるという社会に、人間の尊厳というものがいったいあるのでしょうか。p194「教育と震災を考える」
賢治がなくたって、3.11がなくたって、あるいは、教育者という仕事に就かなかったとしても、この人はこの人の感性で人生を送ったであろう。そしてまた賢治と出会い、教育者となり、3.11と遭遇することによって、やはり、このような本を書くことになったのであろう。
実に必然性があり、説得力があり、具体的であり、今日的な一冊である。私は、この本から、10も20も、話題をつないで日記を書くことができると思う。
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