3・11被災地子ども白書 大橋雄介
「3・11被災地子ども白書」
大橋雄介 2011/12 明石書店 単行本 214p
Vol.3 No.0599★★★★☆
長すぎる地震が漸く収まり、建物の外に出ると、目の前に広がったのは戦争のような光景だった。同様した顔でぞろぞろ歩く人々の群れ、あちらこちらから聞こえる大音量のラジオ放送、白い煙をあげているビル群。空襲があったと言われても、何の違和感もなかったと思う。p3「はじめに」
被災時、著者がいた市内の「官設市民営の古い施設」と、私がいた築2年の高層ビルは背中合わせの隣のビルだったと思われる。。こちらもかなり揺れたが、「戦争」だとも「空襲」だともおもわなかった。単に「地震」だと思った。それだけ、私はラッキーだったのだと思う。
この本、同じ傾向の「ポスト3・11の子育てマニュアル」と並べて見た場合、こちらのほうが、一人で書かれている点、現場に行って一人一人の言葉を拾っている点において、優れていると思われる。
また自己宣伝に終始してしまった「3.11大震災大学には何ができるのか」に比較した場合でも、テーマを、子どもと地の巻(つまり津波被災)に絞り込んだがゆえに、一冊の本としてはまとまりがよく仕上がっている。
NPOや白書、というイメージからは程遠い、ほとんど一人での活動だけに、内容を限定せざるを得なかった、というのが本音だろうが、むしろ、この場合、一人の人間にできる範囲はどのくらいのことなのか、ということが分かるだけ、実に原寸大のレポートとなっているようだ。
市内の被災地にアンケート用紙を持って訪れる、という調査方向の限界性もあろうが、その限界性ゆえに、それぞれの結果に納得のいく結果が現われている。子ども達がどのような状況におかれているか、という、民間の、プライベートな「白書」ができあがったのではないだろうか。
しかし、それぞれの立場があり、私にはこの調査結果をうまく実際の生活に活用しきれない嫌いがあるので、★4つの評価とさせていただく。人によっては、この調査が実に役立つ人もいるに違いない。
2011年8月26日に、多くのものを残し、たくさんの人に惜しまれながらこの世を去った加藤(哲夫)さんのご遺志を少しでも受け継ぎ、市民が市民を支える社会に向けて、微力ながら尽力していきたいと意を新たにしています。p214「あとがきに代えて」
加藤氏のお別れ会には私も参加してきた。福島県出身だったので、自身も何事かやり残しての人生であっただろう。著者もまた1980年、福島市生まれ、ということだから、何事かの繋がりを感じたことだろう。
もちろんこの「白書」ができあがるまでには、多くの人々の協力を得てはいるのだが、視点がスッキリしているので、混沌とした状況にあった3.11天地人の森羅万象の中に、シンプルにボーリング調査をし得ているように思われる。
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