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2012/01/16

娘と話す 原発ってなに? 池内了


「娘と話す 原発ってなに?」 
池内了2011/10 現代企画室 単行本 192p
Vol.3 No.0588

 「娘と話す」シリーズは、見るとはなしに新刊コーナーにあるので、今まで何冊か目を通してきた。まるで「ソフィーの世界」を連想するようなシチュエーションだが、その他のテーマなどに対する取り組みを見ると、出版側としては、なかなかうまいフォーマットを考えたなぁ、と納得する。

 今回は原発がテーマだ。3.11直後の出版本にはかなりの数の「原発本」が含まれているが、2011年の10月という段階で、とりあえず簡単に原発問題を振り返っておくには、かなりなベスト本といえるのではないだろうか。ちょっと甘めのレインボー評価としておく。

 シリーズとしても馴染み易いし、書き手の池内了も、「科学ってなに?」(2005/04)、「地球環境問題ってなに?」(2006/02)、「宇宙ってなに?」(2009/09)でもお父さん役を務めていた。3.11後に転向派の「反原発・脱原発」派の多い中、筋金入りの脱原発派だ。

 ---でも、原発の事故ではまだだれも死者は出ていない。交通事故では毎日100人以上の死者がでている。それと比べたら大したことがないって言っている人もいるよ。
 「なんでも交通事故が引き合いに出される」。そこには大きな盲点があるんだ」
p104「今回の事故の影響は?」

 ここは訂正が必要だろう。。交通事故で、国内では毎日100人以上は死んでいない。これだと計算上は3万6500人以上の交通事故死が毎年でていることになってしまう。現在では、交通事故死は年間4000人代まで減っている。「毎日10人以上」などとする方が正しいだろう。

 それと、今回の3.11原発に関連して「死者」はでていないと断定してしまうことは無理があるだろう。作業中の病死とか、避難中の生活で亡くなっていった人々に対しても思いを馳せる必要がある。今後の長期にわたる放射線の影響などを考えると、後段の説明のとおり、トンデモない影響がでてくることになる。

 ---用心しなくっちゃならないの?
 「用心するにこしたことはない。けれど神経質になることもない。実態を正しく見て、過度にこわがらないことだ。化学毒ではないのだから、今すぐに命に関わることはない。」
p109同上

 そもそも原発問題は分かりにくい。その分かりにくいという盲点をついて「専門家」が暗躍してきたわけだが、彼ら以上に知識を高めることなんかできない。この本においても、基礎的な知識をおさらいすることになるのだが、ある程度以上は理解したくな~い、という拒絶反応がでてしまう。

 ともすると、いい加減忘れてしまいたい問題ではあるが、折に触れて、何度も何度もおさらいしていく必要を感じる。それに、つぎつぎと新しい原発の悪影響の情報が発表されつづけている。この問題は、今後、私等の50代の人間は、生きているかぎりは、ずっとつきあい続けていかなければならない問題なのだろう。

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