プロメテウスの罠 原始村に住む 福島川内村 漠原人 朝日新聞<3>
「プロメテウスの罠」 原始村に住む <3>
福島川内村 漠原人 朝日新聞 2012/02
★★★★☆
数日前から、ストーリーが急展開し、主なる登場人物としてマサイが中心になってきた。実際には、彼のことはよくわからない。この時代においては、顔や「方向性」は知っているが、ニックネームしかしらない、という友人たちが沢山いる。それがまたカッコよかったのだろうし、他の肩書は、むしろ邪魔になったのだろう。
まぁ、そういいつつ、この新聞記事で初めて、その生い立ちや生き様がみえてくる部分もある。書かれるほうは、すこし被虐的な気分になるかもしれないが、個人情報が見えてくるのは、読者としてはたのしい。
ということで普段は新聞を読まない自分ではあるが、コンビニで新聞を買ってみた。なるほどな、とは思ったけれど、自分が読みたいな、と思った記事の何倍もの紙の媒体が、ちょっとうっとうしかった。
実際に新聞を買ってみた、自分の反応に驚いたのだが、原人の記事を読んだあとは、他の記事をいっさい読まずにかたづけてしまった。翌日の大工仕事に使ってしまって、結局は何一つ読まなかった。
これはまずいと思い、それからは、スーパーの新聞スタンドでサッと立ち読みしたり、図書館で覗き見をしたりした。図書館も最近はかなり混んでいて、お目当ての新聞をなかなか読むことができない。私と同じく、宅配新聞を取らない人が図書館に来て読む確率が高くなっているのではないだろうか。
さて、マサイが獏原人にやってきたのは、70年代の中ごろ、他のグループが抜けたあとだった、ということだから、1975年頃のもぐらのあと、と考えて、まずはよいのであろう。須貝 アキラ 追悼集「足に土―原人・アキラ」を引っ張り出してきて、時代公証(笑)してみる。すこしづつ立体的になってきたぞ。
それにしても、例えば、ヘンリー・ソローやビル・マッキベンのように、文明批判をしながら、都会を離れ、山地に自給自足の場につくろう、とする試みは結構あるのだが、最後まで、その地で暮らしを立てるという人物たちはそうザラにはいない。結局は、よくもわるくもその地を離れることが多いのだが、このマサイに関しては、あれからよくもまあ、40年近くも福島の山中で暮らしたものだと思う。
鶏卵で現金収入10万円、ということだが、これはこれなりに相当にすごいことだ。単純に計算してみると、一個10円の卵を、月に1万個商品化する、ということだから、一日に300個以上の卵を、1年365日ずっと扱っていることになる。
これもまた、買い手を確保しての上のことだから、配達などしているのでは、そうとうな労働である。もちろんエサ代もかかるだろうし、順次ヒナも育てていかなかればならない。だが、それで得られる収入は月10万円。
山地でとれる自然の恵みは大きいとは言え、日本国民として暮らすなら、国民年金も収めなければならないだろうし、健康保険料も納めなくてはならないだろう。夫婦二人分と、子どもがいれば、子どもの教育費もバカにならないはずだ。
私の人生は、けっして誇れるものではなかったけれど、町に住んでいる限り、10万円では暮らせなかった。本当に若い時に、子どももまだ就学前だったら、何とか暮らせたが、それでも、家賃ただ、井戸水無料、野菜やコメは、しょっちゅう貰える、という環境にいた時だけだった。
森に住む、山で暮らす、農業をやる、田舎に住む、というのは、ひとつの「理想」としてはあるが、若い時分から一生そのスタイルをやりとおす、ということは並大抵なことではない。土地を先祖から受け継いだプロの農業従事者でさえ、自立した農業を、21世紀のこの現代日本で経営するのはただ事ではないのだ。
いずれにせよ、多分であるが、そのように想像するようなスタイルの中で、獏原人のマサイは(あるいはその周辺の人々)は生きてきたのだろうし、今回の、この未曾有の3.11災害に遭遇したわけだった。
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