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2012/02/21

ななおさかきの地球B 現代詩手帖2010年10月号

Nanao
「ななおさかきの地球B」 
「現代詩手帖」2010年10月号 思潮社 雑誌 特集100P~122P
Vol.3 No.0620★★★★★

 ナナオという名前を一番最初に誰から、何処で、聞いたのかはすっかり忘れている。いくたびごとに、何処から聞こえてくる名前だった。それは「部族」という、どこか古代の洞窟のような響きのなかから、輝くアマテラスのような不思議な光を放っているかのような雰囲気をもった名前だった。

 何度か聞いているうちに、やがて記憶に残ったのが、パンタ笛吹(そのころは単に笛吹だった)が、「旅でいろんな人にであったけど、一番すごいのはナナオだ」と言った時のことだった。それは練馬の都市コミューン「蘇生」に泊っていた時のこと。

 笛吹自身、そうとう面白そうな人物だった。やたらと長身で、やたらと笑顔だった。縁側に座って、雀と話をしていた。たぶん1973年頃のことだろう。

 その後、すぐにナナオのポエトリーディングと出会った。東京のどこぞのロックハウスだった。私は東京の人間じゃないので、よく覚えていないが、結構有名なところで、仲間内なら、すぐ思いだしてくれそうなところだった。

 ナナオは長靴をはいていた。ネクタイやスーツでは、もちろんなかった。長靴や土方ジャンパーなら、こちらもアルバイトで土いじりをしていたので、別に驚かないし、対抗して地下足袋に軍手だってしていっただろうが、いや、そういう話ではなかった。

 彼は、ピアノをひいた。なんの曲か、という問題ではない。それはジャズとか、もったいぶったものでさえなかった。楽器にさわり、うつくしい音をだした。そういうことをする人だった。

 なんの詩を聞いたか、なんてこともすっかり忘れた。というか、多分、聞いていなかった。彼の存在そのものが、詩だった。かなり衝撃だった。10代の私にしてみれば、あまりに唐突に目の前に現れた、異世界への入り口だった。

 あるいは、ハーメルンの笛吹きのようですらあった。彼の回りには、若い連中が集まっていた。取り巻いていたのか、徒党組んでいたのか、それすらもよくわからなかった。結局、それは、どっちでもなかったし、どっちでもよかったのだ。

 それから、かるく40年の時間が経過したわけだが、う~ん、いろいろあったな、と思う。いや、彼ばかりではなく、彼をとりまく、あるいは、私を含む、この地球上には、いろいろなことがあった。

 この「現代詩手帖」の特集は20数ページと短いが、ナナオの詩と、死、そして、新しくできた詩集「ココペリの足あと」の出版と期を一にして編集されている。 

 この特集の中には、スナイダーとナナオの対話。6畳二間のナナオの居住スペースに積まれていた蔵書の数々。それを引き取りにいった古書店主の話。白石かずこオバチャマのナナオを弟分として見ているような、お茶目なお話。などなど、散発的だが、刺激的な原石が、ゴロゴロ積まれている。

 ナナオは、老子よりも孔子を高くイメージしているようなところも、興味深かった。一茶もすきだったようだ。

ブライダイ いつから歩きはじめたんだ?

ななお ああ、いつも同じ質問されるよ。おれの答えは、----生まれる前から、だ(全員、大笑)。

 一茶を読んだから歩きはじめたってわけじゃないってこと?(笑)

 ちがうよ。「いつ詩を書きはじめたんだ?」っていう質問と同じだ。そう思うよ。オッケー、おれは生まれる前から詩を書きはじめていたんだ。そうだろ! ほんとに。何世紀も前から。当時おれは、芭蕉とか一茶、蕪村、シェイクスピアなんて呼ばれていた。

 そうやって受け継がれていく精神って、なにかな?

 そんなこと、考えたこともないぞ。おれはここにいて、なにか書いているだけだ。そしてそれは古代からの言霊(エコー)だ。p120インタビュー「一杯のお茶と焼き魚(抄)」

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