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2012/02/04

東北 ブルーガイドてくてく歩き 31


「東北」 第5版 / ブルーガイドてくてく歩き 31 
実業之日本社 2012/01  単行本・ムック p191
Vol.3 No.0607★★★★☆

 有名なガイドブックシリーズ。今時の「東北」は、観光的にはどうなのだろう。新刊本コーナーにこのような本があると、やはり気になる。

 手にとって驚くのは、ケレン味もなく、いっさい3.11にふれていないこと。太平洋側沿岸部についての案内も松島を除いて殆どない。2012年の1月発行だから、もうすこし、アップツウデイトな記事が載っているかと期待したが、一切ない。

 しかしまぁ、こんなガイドもいいのかな、とあらためて手にとってみると、なるほど知っていると思っている地元のことでも知らないことでいっぱいだ。ましてや、行きたいと思っていたのに、まだまだ行けてないところがこんなにある。

 それしても変だなぁ、と思って、よくよく見ると、このガイドブックは「2012年1月5日 第5版第一刷」となっている。なるほど、これは「新刊」ではなくて、「増刷」だったのだ。みれば、第4版は、2010年03月となっているから、二年前の情報と殆ど同じものが掲載されている、と判断すべきなのかもしれない。

 と、理解をしめしつつも、複雑な気分。今回の3.11を挟んで、「東北」の意味は違っている。岩手県平泉の頁を見ると、「祝・世界文化遺産登録」となっている。あれれ、平泉の世界文化遺産登録は、3.11後の2011年6月のことであった。

 ということはやはり、この5版は、5版なりに改訂されていると考えて間違いない。青森県の紹介では、新幹線の「はやぶさ」が紹介されている。はやぶさは2011年の3月5日開通だったから、3.11以前に編集されていたと仮定しても、すくなくとも4版には載っていなかったはず。

 考えてみれば、はやぶさも御難でしたな。開通してすぐに被災してしまったのだった。先日、青森まで乗ってきたが、爽快であった。揺れもすくなく、スピードも速い。でも早すぎるかもなぁ。「てくてく歩き」には、もっと、ガタガタで、のんびりも悪くないのだが。

 そういえば、福島はどんな紹介のされかたをしているのだろう。会津若松、磐梯高原、猪苗代、喜多方、という具合に、内陸部や山ばっかりで、海岸線の紹介は無いようだ。実際、これらの観光地においても、放射線の線量は低くはない。ホットスポットも散在する。

 秋田は、玉川温泉や田沢湖、角館などが紹介されている。玉川温泉は、この度の雪なだれの災害で、大変なことになっている。山形は、蔵王や庄内、酒田や鶴岡など、またいつか訪れてみたいところが一杯だ。

 と、パラパラめくっていて、ふと手が止まった。「再生への歩み、一歩ずつ・・・空から見つめた石巻のいま」(p134)という頁が、たった一頁だけ挟まっていたのだ。書いたのは「空撮写真家 山本直洋」となっている。

 なるほど、やっぱりこの本は、5版なりに改訂されてだされているのだ。だとするならば、例えば岩手県の浄土ヶ浜の紹介など、現在の状況とキチンと反映されたものとなっているのだろうか。

 あるいは、他の地域だって、どんなことになっているかわかりゃあしないぞ。「てくてく歩き」もよいけれど、それらのことをひとつひとつ追っかけていたら、だんだんと意味ある一冊となってきた。

 被災地における観光地は、それこそ悲惨な思いをしている。地震、津波、放射線の直接被害と、風評被害で大変なことになっている。できるだけ被害に触れずに、できるだけ多くの観光客に来てもらいたいと願っているのが、本音なのだ。

 なにも、ボランティアや救援物資の供給ばかりが支援ではない。多少は物見遊山でもいいから、とにかく現地に「行ッテ」みることが大切なのだ。観光だって、立派な支援なのである。正直言って、私のような年配者なら、多少の線量の地域に突入してしまったとしても、一晩や二晩では、大きな影響はないだろうとされている。

 ましてや、地震の余震が多少は続いてはいるが、あのような大きな津波はそうそう来るものではない。避難対策は、現在、全員熟知している段階だ。あえてこの時期、東北に足を向けてみるのも悪くないだろう(って、私は、すっかり3.11後、東北を歩き回っているのだが)。

 と、ここまで来たので、この本は、★ひとつプラスして、★4つ、の評価をしておく。 

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