足に土―原人・アキラ 須貝 アキラ 追悼集 <7>
『足に土――原人・アキラ』 須貝 アキラ 追悼集<7>
やまびこ編集室 1998/9 共同編集・発行 人間家族編集室 A5判・284P
★★★★★
2012/02/07に朝日新聞「プロメテウスの罠」という記事の連載が始まったことに触発されるように、この本を思い出したのだが、記事本体のほうが、「獏原人」のほうに行かず、「二人の人物」のうちの一人・木村さんという原発で働いていた人を中心として継続しているので、なんだか、ひとり歩きしているような格好になってしまった。
まぁ、それはそれでいいだろう。
これで十分 須貝 あきらに
足に土
手に斧
目に花
耳に鳥
鼻に茸
口にほほえみ
胸に歌
肌に汗
心に汗
心に風
これで十分
1984・10 大鹿村 ナナオ サカキ 『地球B』より p1
この本のタイトルの「土に足」というのは、日本のビートニク詩人ナナオ・サカキが1984年アキラに送った詩から引用されている。
ナナオの生涯については、私が今まで読んだ限りでは、山里勝己「場所を生きる--ゲ-リ-・スナイダ-の世界」(2006/03 山と渓谷社)に活写されている部分が一番詳しい。
ナナオは、ゲーリー・スナイダーが1974年に発表し、ピューリッツアー賞を受賞した「亀の島」を邦訳している。
スナイダーはまた、1956年に来日し、京都などに滞在し、東洋文化や禅を学んだ。また、宮沢賢治の英訳を始め、「The Back Country 奥の国」(1971New Directions)などに所蔵されている。その意味では、「英語で読み解く賢治の世界」のロジャー・パルバースよりも先んじて賢治に共感を示している。
岩手県花巻市の「宮沢賢治記念館」では、賢治を世界に紹介した欧米人として、スナイダーが大きく写真つきで紹介されている。
思えば、2011年3月11日の午前中、私はビル・モリソンの「パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン」(1993/09 農山漁村文化協会)を読んでいた。昼に外出して、外で3.11東日本大震災に被災したわけだが、それから1カ月は、本など読める状況ではなかった。
そして、ようやく読書を始めたのは4月25日になってからだった。とにかく読み始めたのはスナイダーの「地球の家を保つには エコロジーと精神革命」(1975/12 社会思想社)だった。
2月にもこの本を開いていたとは言え、実にあの時期、私は地球の方へと磁力を感じていたらしい。実際に、あの時期には近くの山地にエコビレッジを作る構想に動かされていた。その構想もまた、今回の3.11で大きく変化せざるを得なかった。
私の中では、農業や共同体、コミューンなどの動きは、まだ果たせないでいる夢として浮遊している部分がある。あの時期にあの構想に対して動いていたのは、三省やスナイダーや獏原人などの、スペースの在り方に、ある種の理想を持っていたからだろうと思う。
今回の朝日新聞「プロメテウスの罠」という記事の中で、主人公の一人は、「10年前、そんな風見に触れて人生を変えた元原子力技術者がいる。」と紹介されている。
原子力発電を推進しようとする力に対して、獏原人が、いくばくかのカウンター・パンチになり得たとするならば、その蔭には、風見(マサイ)ばかりではなく、アキラや、ナナオや、スナイダーや、そして宮沢賢治がいる、と、私は思わざるを得ない。
さらに、もっと大きなうねりがあることを、今回あらためて感じようになった。
ナナオは、アキラが亡くなったあと、小さな詩を寄せている。
杖ひとつ 持ってけ 道は長いぞよ
ななお さかき 1997・9・30 p264
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