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2012/02/04

原発ゼロ世界へ ぜんぶなくす 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章<1>


「原発ゼロ世界へ」 ぜんぶなくす<1>
小出裕章 2012/01 エイシア出版/出版共同販売 単行本 309p 京都大学原子炉実験所助教
Vol.3 No.0605★★★★★

 この方の本は何冊かめくってきた。講演会も、一番前の席で聞いてきた。どの本、どの話を聞いても、おっしゃっていることは同じことである。「原発ゼロ世界へ ぜんぶなくす」。 これしかないのである。

 世界ぜんたい

 幸福にならないうちは

 個人の幸福は

 あり得ない   宮沢賢治

 表紙をあけると、まずこの葉が書いてある。最後の「結び」もこの言葉で締めてある。賢治の「農民芸術概論綱要」の中にあるこの言葉は、当ブログにおける希望の祈りでもある。

 この本は、レインボー評価とするよりも、むしろ真っかっ赤評価としておきたい。氏の本はどの本を読んでも内容は同じである。編集の角度や、出版された時期、読者層の想定など、多少の造本の違いはあれ、この40年間、まったくブレていない。ブレようがないのだ。

 3.11後に、宗旨替えをして、「脱原発」を唱える「専門家」や「評論家」が多くいるなか、氏は一貫している。もし原発本を読むのなら、氏の本を外してはならない。あるいは、氏の本を一冊でも読めば十分である。勿論、熟読する必要があるが。

 ビル・ゲイツは、最近ダボス会議で「高性能の次世代型の原発」に投資すると発言したという。実際にNHKのニュースでインタビュー風景が映っていたから、そうなのであろう。

 専門家たち、世のリーダー的な人たちの意見はまちまちである。ひょっとすると、世界の大勢は、むしろビル・ゲイツの側にあるのである。小さな実験所の助教の言葉など、なんの実行力がないように見える。あまりにも非力に思える。

 しかし、真実は小出裕章氏のほうにあるだろう。氏は、仙台でその研究生活を始め、女川原発建設時のエピソードから、一貫して原発をつくらせまい、とする側にまわった。いいかげん原発建設に携わったあとに、私は間違ってました、という人ではない。

 3.11後に連絡不能になった以前の友人を訪ねて石巻に行った。幸い彼は無事だったが、現在は原発の中に仕事を得ていることが分かった。彼がどのような経緯でその仕事を得たのかは聞かなかったが、地方において仕事を得て家族を養っていくことのむずかしさを、他人のことながら、私も痛感した。

 そのあと、私はあまり原発を直接的に言えない時期もあった。働いている人たちのことを考えると、ぐっと口数が減ってしまう。だが、しかし、彼ひとり、彼の家族ひとつの問題ではなかろう。

 世界ぜんたい

 幸福にならないうちは

 個人の幸福は

 あり得ない   宮沢賢治

 お題目のように「原発ゼロ世界へ ぜんぶなくす」、と、思っていただけでは、どうもならないのだろう。どうしたらいいのだろう。専門家ならず、意思のそれほど堅固でもない私などは、様々な意見の中で右往左往してしまうことになる。どうしたらいいのか、なんて分からない。

 ただ言えることは、この本に書かれているのは本当だ、ということ。この本が、当ブログの祈りにならなくてはならない。

<2>につづく

 

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