翁童論 子どもと老人の精神誌 鎌田東二
「翁童論」 子どもと老人の精神誌
鎌田 東二 1988/5 ノマド叢書 新曜社 和書 556p
Vol.3 No.0675★★★★★
玄侑宗久との対談集「原子力と宗教 日本人への問い」 (2012/03 角川学芸出版)がなかなか面白かったので、この二人をミニ追っかけしてみようかな、と思った。同時に鴨長明を書いたとする二人の、玄侑宗久の「無常という力 『方丈記』に学ぶ心の在り方」( 2011/11 新潮社)はすぐ読めたが、鎌田の「現代神道論」(2011/11春秋社)とやらはまだ読めていない。
いずれ読むことになるだろうが、あまり急いでいないのは、著者の本は、現代人としての問題意識は共有しながらも、その研究の対象が、国学的であり、ともすればコトダマ的世界に入り込んでいくので、そちらに深入りするのは、ちょっと気おくれするからである。
著書一覧をみながら、彼には「翁童論」があったなと思いだし、ちょっと古くはなっているが、ひとまず目を通すことにした。そもそも、当ブログにおける「プレムバヴェシュの孫たちとの対話」カテゴリは、この翁童論につらなってくるものである。いや、この翁童論があることをあらかじめ知っていて、そこにつなげたいと思ったのである。
2001年宇宙の旅、稲垣足穂、ニーチェ、宮沢賢治、ナルニア国物語、などなど、同時代人としては、ほとんど同じような感性と問題意識を抱えて生きている内容は、いま読んでも新鮮そのものである。
巻末に再録された「スサノオ論」などに見るように、著者の持ち味は、日本神話にもとづく神道コスモロジーの新解釈だが、この分野に興味をもつ読者には、たまらない魅力ある一冊であり、また稀有な書き手であるといえるだろう。
著者の翁童論は、どうやらシリーズ化されていて4まであるらしいが、さて、それらを、当ブログは追っかけるだろうか。
延々と神道の言霊的世界を長時間旅するには、こちらの体力と気力が足りない。日本神話的にも、このような象徴や解釈があるよ、という紹介程度ならうれしいのだが、深入りはしたくない。当ブログは、もっと広く、もっと軽やかな、地球人スピリットを目ざしたい。
科学、芸術、意識、の三つの分野にわけるとするなら、著者の世界は、芸術の世界であり、文学の世界である。そこから、意識へのベクトルは十分以上にあるのだが、持ち前の教養が邪魔する。
翁が、童子に、還って、円環するのなら、あるいは、童子に、翁が、共存しているとするなら、もっと、無や空に近くてもよいはずである。あるいは、翁と童子、童子と翁、と二分化してしまうことで、どこかに行きつかないもどかしさを内在することとなる。
著者のネーミングではあるだろうが、結局は、翁童、あるいは童翁、は、もっとさらなる真なる単語におきかえられるべきではないのか。当ブログでは、そこを、単純に、人間、と呼び、あるいは、新しい人間、と呼ぶ。あるいは地球人。
翁は男性で、童子は男子、というイメージが強い。婆さんや、女子のイメージが薄い。そこが著者の論旨が、いまいちわかりにくいところである。これでも十分柔らかいとは思うが、もっともっと柔らかくていいのではないか。
もっとわかりやすくて、もっと実践的な、コスモロジーがあっていいのではないだろうか。
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