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2012/05/20

「『禅』の世界へ」 日経おとなのoff 2012年6月号<1> スティーブ・ジョブズと『禅』 ~伝説のスピーチに見る禅の思想~


「『禅』の世界へ」 日経おとなのoff 2012年6月号
日経おとなのOFF編集部 2012/05 雑誌
Vol.3 No.0683

 電車の時間待ちで飛び込んだ書店で、パラパラめくった。これがなんともカッコイイ。「スティーブ・ジョブズと『禅』 ~伝説のスピーチに見る禅の思想~」なんてところが、なんとも心魅かれる。ゆっくり読みたかったが、時間が迫ってきて、あとで見ようと思った。

 後日、次に入った書店では残念ながら、売り切れなのか在庫がなかった。さらに次に図書館に行ったら、ちゃんと存在したが、なにせ新刊号なので、来月にならないと借りだせない。ここでもまた立ち読みとなったが、やっぱり面白い。

 さぁ、別な書店に走るか、来月まで待つか。来月まで待って図書館から借りて読んだとしても、結局は、自分の蔵書にしたいから、きっと買うだろうなぁ。

 そんな、自分の心の動きを見ながら、なんで、「あんなのを」欲しがるんだろうと、ちょっといぶかりつつある自分。数百円と極めて安い。さっさと買って、飽きたら、廃棄物で出せばいいじゃないか。でも、なぜか踏み切らない自分がいる。

 禅だけなら、買わないだろう。スティーブ・ジョブズ、だけでも買わないだろう。禅とスティーブ・ジョブズを繋げているところが、この雑誌の今月号の売りだ。

 タイトルも「日経おとなのoff」。offなのかよ、と思う。offだから禅なのですか。禅は、onであるべきではないのか。「日経大人のon」の禅の特集なら、もっと価値があるのではないか。

 この雑誌、ちょっとカタログ誌みたいで、ちょっとカッコよすぎている。巻頭の「松岡正剛さん特別講義 『禅』とは常ならぬ世を生き抜くメソッド」などというところも、ちょっと気にくわない。

 最近(でもないか)では、バーチャルゲーム・セカンドライフやたらと持ち上げて、あっというまにポシャると、あとは知らんぷり。この人物、悪人だとは思わないが、多少の距離をおいて見ているに越したことはない。

 ジョブスが、鈴木俊隆の「Zen Mind, Beginner's Mind」を愛読熟読していたという話は聞いた。あらためて、へぇーと思う。思えば、実に同時代を生きてきた、友人たち世代のひとりであった。

 彼がいま亡くなったことと、スマホが新しい潮流になっていることと、タイミングを合わせて、いまやジョブスはブームになっている。その彼が参禅していたとなれば、これは、日本人にとっては、なかなか興味があり、誇らしい部分でもある。

 だが、はたと考える。この「『禅』の世界へ」 日経おとなのoff 2012年6月号は、ちょっとエンターテイメントすぎるのではないか。そんなに、キラキラ光らなくてもいいんじゃないか。もっと、スの、地光りでいいのではないか。

 この雑誌の禅は、ちょっと造られ過ぎている。そして、もとの伝統としての禅の世界へと退却していこうとしている。ちょっと悪質だな、とさえ思う。ジョブスは、日本の石庭とか、四文字熟語など、関係ないだろう。もっと、現代的にZENをとらえきれなければ、日本の禅は、世界のZENにはなれない。あるいは、この号は、その断末魔とさえいえるのではないか、と思う。

 ああ、それにしても、私のこころも、ああ言えば、こう、こう言えば、ああ、と、あちこち、ころろ動くもんだ。

 なんであれ、この号は、かっこいい。一冊手元において、なんでカッコイイと思ったのか、あとでゆっくり考えよう。そして、何故に、これではやはりダメなのだ、と感じたのかは、ゆっくりと瞑想するしかないのかな。

 でも、やっぱり、買うか買わないかは、まだ決めかねている(笑)。

<2>につづく  

  

 

 

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