東日本大震災 あの時、岩沼では…。 宮城県岩沼市国井印刷
「東日本大震災 あの時、岩沼では…。」 -50人の証言-
「東日本大震災 あの時、岩沼では…。」編集委員会 2012/3 国井印刷(宮城県岩沼市) 単行本 p259
Vol.3 No.0696★★★★★
小齋誠進写真集「その時、閖上は」(2011/08 有限会社印刷センター)を連想するようなタイトル。閖上と岩沼は、一連なりの地域であり、殆ど同じ被災状況にあった。前書は、個人の、しかも写真集なので、自費出版に近い形とは言え、比較的に早期に発行された。
こちらは、同じ地元の印刷会社の殆ど自費出版という形であるが、文集であり、また多くの人々の文章をまとめた、ということで、約1年弱の準備期間を必要とした。アトランダムに、子どもから老人まで、行政から学校、施設関係者、地元企業など、さまざまな形で地域にかかわる人びとの体験記録が収録されている。
「あの時」、「その時」と来ると、思い出すのは、飯沼勇義「3・11その日を忘れない。―歴史上の大津波、未来への道しるべ」(2011/6鳥影社)である。あの時、その時、その日、この連鎖は、いかに、3・11という大災害が、多くの人々の人生上にふりかかったかを物語っている。この三冊とも、同じ地域のことを語っている。
飯沼勇義には、「仙台平野の歴史津波~巨大津波が仙台平野を襲う!」(1995/09 宝文堂)がある。誰も予想しなかった津波とは言うけれど、ひとり警鐘を鳴らし続けた男がここにいる。出版当時、当時の藤井黎・仙台市長、浅野史郎・宮城県知事への陳情書として出された、この在野の研究書を、まともに気にとめる人はいなかった。
初版も地元の出版社が発行したが、3・11後、にわかにこの書が話題になり、みごと、地元の印刷会社が復刻(2011/09 本田印刷出版部)にこぎつけた。
被災地の写真集に目を通すにも心痛めるが、文集となると、なお、気が重くなることも多い。ましてや、宮地尚子「震災トラウマと復興ストレス」(2011/08 岩波書店)が言うように、本当の被災者、もっとも言葉を失った人々は、写真も文集も残すことができない。そのことを思い起こすと、一冊二冊の記録など、なんの役に立つのか、という疑念さえ浮かぶ。
しかしながら、やはり、後世のためにも、あの日、あの時、あのことを忘れてはならないのだ。なんらかの形で記録し、伝えていかなければならない。そのような背景の中で、この本は、地元の有志による意識の高まりによってできた一冊と言える。
個人的には、岩沼は極めて近い地元である。親戚もあり友人もある。子ども時代から遊んだ海岸線、仙台空港、田園風景。あるいは、Osho大使のシャルノの生家のある地域でもある。その寺島地区の人々の文章も多く収められていることからも、この本を、とても他人ごととしては読めなかった。
地域の一日も早い復興を願いながら、命を落とされた人々の冥福をお祈りいたします。合掌
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