方丈記 鴨長明/浅見和彦
「方丈記」
鴨長明/浅見和彦 2011/11 筑摩書房 文庫 253P
Vol.3 No.0730★★★★☆
簗瀬一雄の「現代語訳付き方丈記」(角川学芸出版2010/11)が面白かったので、同時期にでたこちらの文庫にも目を通しておこうと思った。内容的にはほぼ同等である。すでに1000年前の古典であるだけに、解釈も自由だし、それぞれの解説本も出そろっている。
あとは3.11後における鴨長明とのリンクを、解説者がどのように織り込んでくるかが関心ごとととは言えるが、本来の眼目ではない。
それにしても、もう一度、鴨長明の当時の被災表現を読ませられるのは、ちょっとつらいものがあった。もちろん、当時の悲惨さは目を伏せたくなるものの、この現代の、この地においても、似たようなことが起こっているのである。あるいは、当時を上回るスケールで起こったとさえいえる。
そそくさと、後半に移り、方丈庵のくだりを読んでみる。この本には図解が取り入れられているので、なおイメージしやすい。
デイビッド・ソローの森の生活や、ゲーリー・スナイダーのキッドキッドディジー、宮沢賢治の松の林の蔭の小さな家、あるいは、現代では坂口恭平のTOKYO 0円ハウスなどと見比べてみる。
鴨長明は、その名文でたたえられている。対比が素晴らしい。水と火とか、動と静、外と内、など、実にコントラストの強い、メリハリの利いた文章が多い。ただ、京都や西の風景だったり、仕事柄、なにやら都びととしての個性が強く、どこかで、読み手のこちらの志向性とずれていく。
あまり歴史的な事象や、瑣末な役職ごとにとらわれると、どうも読み進めなくなる。世の中のお困りごとは、すでに十分だ。自らの方丈庵にたどりつき、みごと図地反転して、宇宙のすべてを自らに取り入れることができるのかどうか。
そのあたりに思いを馳せることができれば、当ブログとしては、この文庫を手にした目的は果たせた、というべきである。
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