独立国家のつくりかた 坂口恭平 <1>
「独立国家のつくりかた」 <1>
坂口恭平 2012/05 講談社 現代新書 221p
Vol.3 No.0731★☆☆☆☆
時間が空いたので、通りがかりの書店で立ち読み。いずれゆっくり読んでやろうと思っていたのだが、新書だったので、すぐ読めた。ふむふむ、こういう内容だったのか。
第一印象。まず、これは羊頭狗肉だろう。ツリーハウスや家賃三万円の家を「独立国」とすることが、坂口恭平という34歳にして妻と三歳の子供ありの、大の大人の所業であるならば、あまりに幼稚な行いといわざるを得ない。
これをアートや芸術活動の一環である、というのは、それは作者の勝手なことだが、それに付き合っている周囲もいったいどうしたことであろうか。
彼が私淑しているという中沢新一も、カメラ目線たっぷりのパフォーマーだが、その「弟子」たる坂口恭平とやらの、受けを狙っての連続パフォーマンスに、まあ、勝手にどうぞ、と、こちらはどんどん白けていく。
なんとかもオダてりゃ木に登るともいうけれど、ツリーハウスに登って撮影した写真など、まさにそのことを見事に表現しているかのようだ。
独立国の自らを総理大臣(大統領だっけかな)とみなして、電話をして中沢新一に「文部科学大臣」(だっけかな)の就任を要請したというが、頼むほうも頼むほうだが、受けるほうも受けるほうだ。ふざけ過ぎると、また痛い目にあいますよ。
1978年生まれということだから、麻原彰晃のことなどリアルタイムでは知らないのだろうが、彼らだって、最初のノリは「遊び」だったと思う。なんとか大臣とか、いろいろやっているうちに、ミイラ取りがミイラになってしまった。
中沢新一もいまいち切れが悪い。坂口独立国の教育大臣など受ける余裕があるのなら、本当は、島田裕巳センセイの「中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて」(2007/4 亜紀書房)あたりに、キチンと答えておかないとまずいと思うよ。
中沢の、オウムに対する評価のノリも、今回のノリとさして変わっていなかった。覚めていないと大怪我をしますよ。3・11あたりで、自分への矛先がほかへ移ったなどとオダをあげている場合ではない、と私なら思う。
独立という言葉にウエイトをおくのなら、別にここに始まったことではない。沖縄独立なんてことは以前から言われているし、山田塊也あたりにも「奄美独立革命論」なんてものもあった。今回、朝日新聞の「プロメテウスの罠」を読んだときに書いた「足に土―原人・アキラ」のアキラが参加した合宿のネーミングも、実は「東北独立合宿」の後継だったのである。
あの獏原人たちも、土地なんか誰のものでもない、と勝手に開墾してしまったのだが(後に地主から購入)、彼らは決してカメラ目線のパフォーマンスなんかじゃなかった。その証拠に、彼らは積極的にはミニコミや会報をつくらなかったし、メディアに乗ることなど、ほとんどなかった。
「TOKYO一坪遺産」に続いて坂口恭平は二冊目だが、だいたいがこういう調子なのだな、と、なんとなく察しがついた。
| 固定リンク
「31)Meditation in the Marketplace1」カテゴリの記事
- ファインディング・ニモ ピクサー ウォルト・ディズニー(2012.07.15)
- ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力<1> 池田純一(2012.07.15)
- ウォーリー ピクサー DVD(2012.07.13)
- 図解スティーブ・ジョブズ全仕事 桑原晃弥(2012.07.12)
- アップルを創った怪物 もうひとりの創業者スティ-ブ・ウォズニアック自伝(2012.07.11)
コメント
さくらさん
確かに私もすらすらと面白く読んでしまったのでした。でも、そこんとこが、どうも私には引っ掛かってしまったのだ。
私がこの本を読んだのは、私の姉御すじの女史が、彼の本を見て、私がもうひとりいるようだ、と紹介してくれたからだった。
へぇ~、どんなところが似ているんだろう、私はどう見られているんだろう、という興味があって読んでみたのだが、そういう意味では、彼と私の違いを明確にするために、あえて、コントラストの強い読後観になってしまったようだ。
感じるところはいろいろある。それはすでに本文に書いてしまったことだし、今後もまた書くかも知れない。
この「独立国家のつくりかた」はかなりの人気本で、ゆっくり読んでやろうと思って図書館にリクエストしているのだが、あと数週間以上、私の順番は巡ってこないようだ。
再読したあとに、またコメントを加えてみます。
彼の本は、これまで6冊読んでみました。
http://terran108.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-b5c8.html
投稿: Bhavesh | 2012/09/11 19:53
う~ん、私は坂口恭平の本、面白く読んだけどなぁ。
「独立国家のつくりかた」というタイトルですが、
本の大半はそれ以外のことが書かれていますよね。
多分、坂口にとって独立国家なんてどうでもいいんですよ。
閉塞感の強い時代に、なにを言ったりやったりしても
叩かれる時代に、よくぞ書いてくれた。
投稿: さくら | 2012/09/11 18:43
中沢と内田、そしてもうひとりとの鼎談「大津波と原発」もなかなかの人気本なのだが、その「緑の党らしきもの」を立ち上げたいという試みは今どうなっているのやら。
内田も人気本らしいが、順番がこないので、待っている間に、もう読まなくてもいいや、と思う本ばかり。
投稿: Bhavesh | 2012/06/14 06:45
>彼が私淑しているという 中沢新一 も、カメラ目線たっぷりのパフォーマー だが
パチパチパチ、拍手!
内田樹とやらもお仲間に加えてやってください。
投稿: sopan | 2012/06/13 23:45