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2012/07/28

荒野の月 第一詩歌集 あがさクリスマス


「荒野の月」 第一詩歌集
あがさクリスマス 本の泉社 2011/12 単行本 167p
Vol.3 No.0777★★★★★

 著者ご本人からのお勧めである。このペンネームはアガサ・クリスティにちなんでいるのだろうか。ご本名は増子勝とおっしゃる方で、1955年生まれの作家、詩人、歌人、とのこと。福島県郡山市生まれで、現在は福島県内の高校の先生だ。

こんな地震が こんな地震が 起きなければ
幸せの意味とは 何か
考えることもなかった

懐かしいあの人の面影 やさしい言葉
思い出すたびに こころにしみる
大切な 大切な わたしの記憶
この大地のどこに 消えたのだろう
この大地のどこに 行ったのだろう
でもそっと わたしのそばにいる
寄り添うように そっとそばにいる

そんな津波が そんな津波が 起きなければ
愛の意味とは 何か
考えることも なかった

ともに散歩したこと ともにケンカしたこと
思い出すたびに こころにしみる
大切な 大切な わたしの宝

その海のどこに 消えたのだろう
その海のどこに 行ったのだろう
でもきっと わたしのそばにいる
寄り添うように きっとそばにいる

あんな故障が あんな故障が 起きなければ
家族の意味とは 何か
考えることも なかった

ともに笑ったこと ともに泣いたこと
思い出すたびに こころにしみる
大切な 大切な わたしの絆

あの夜空の星のどこに 逃げよう
あの夜空の星のどこに 行こう
でも必ず わたしたちはそばにいる
寄り添うように 必ずそばにいる

p17「こころの星 (こんな地震が起きなければ)」

 いたって平素でシンプルな言葉でつづられた詩集。詩集というより歌集なのだろう。このまま曲をつけて歌いだしたくなる。いや、ひょっとするとすでに歌われているのかもしれない。そういった意味では歌詞でもある。

 地震、津波、故障、と綴られる。単に「故障」と言ってしまうには、あまりにも手のつけようのない大変な事態である。そういう意味では、「地震」だって、「津波」だって、もはやどうしようもない、とてつもないものであった。そして、それらは、進行中だ。いつ終わるともしれない果てのない旅の始まりだ。

 福島、そして郡山、とても他人事に思えない。自分の身内も、南相馬市の医療機関に勤務中に被災した。2歳の幼児と小学生を抱え、郡山へ転居することさえ大変なことだった。その郡山へ避難してからも、親族が河の氾濫で床上浸水で長期非難を余儀なくされた。

 幸せとか、愛とか、家族のことを、考えないわけにはいかない状況に追い込まれた。隣県地域とは言え、状況はそれほど違っているわけではない。なんとか自分の生活を立て直し、何事もなかったように気を取り直し、平静を装ってみる。

 そして、すこし余裕を見つけて周囲を見つめてみると、すぐすぐそこまで、地震、津波、事故の影響のひとつひとつが押し寄せている。はっきり言って目をそらしたい。もうあきらめたい。そのほうが楽だ。無理だろう、だめだ、そんな声が聞こえてくる。外からばかりではなく、自分の中からも。

かりそめに だいじょうぶと 言ふなかれ

      親あり子あり はらからあるを   p86

核にノー もっと早く カタルには

      ごてごてなりし 人間の性(さが) p96

被災地に 元気あげたい なでしこの

      世界でいちの メダル掲げて p113

 今、ロンドンオリンピックの開会式をテレビで見ながら書いている。あのなでしこジャパンのワールドカップの優勝は本当にうれしかったな。あれで、ようやく、現実を直視しようという元気をもらった。今回も、男女サッカーチームのスタートダッシュ。寝不足覚悟で深夜の応援観戦。

被災地の こころ伝えるは 作家なり

      生きるも死ぬも このふるさとか p75

 被災地の多くの人々のこころに寄り添うように代弁のような歌も多いが、この歌は著者ご本人の心境だろう。「作家」というときのプライド、そして「生きるも死ぬも」というときの覚悟が、いっそう深い。

 付録として漢文読解法がついている。この方、漢文の先生なのだろうか。教える高校生たちが、漢文に関心を持てるようにとの配慮かも知れない。

山荘に 豊かな自然 求め住む

      自給自足の 恵み楽しむ

全世界 響く詩歌集 届けたい

      被災伝える 使命感じて

古来より 人の思ひを伝えるは

      歌や詩なりと 思い続けて p116

 この本、当ブログVol.3における777冊目の一冊となった。、

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