別冊宝島(1) 全都市カタログ〜都市生活者のフォークロア
「別冊宝島(1) 全都市カタログ」〜都市生活者のフォークロア
JICC出版局 1976/04 雑誌・ムック p306
Vol.3 No.0788★★★★★
1)スチュアート・ブランドの「ホール・アース・カタログ」ときたら、その影響をもっとも強く受けた雑誌「別冊宝島(1)全都市カタログ」を思い出さないわけにはいかないだろう。
2)発行されたのは「星の遊行群 ミルキーウェイ・キャラバン」があった1975年の次の年。遅いといえば遅いが、なにはともあれ、こういう形で痕跡が残ったということは良かった。
3)はて、こんな雑誌を覚えている人はいるだろうか、と思って検索してみると、実に多くの情報がヒットする。なるほどね。やはり、この雑誌は素晴らしかったのだ。古本屋のページを見ると、1981年版で第8刷となっているので、随分と長く版を重ねたロングベストセラーになったようだ。
4)当ブログがこの本にそれなりに思い入れがあるとすれば、それは自分が当時編集していたミニコミ誌が紹介されているからでもある。
5)
新しい生活を始めるためには、やはり新しい生活の知恵がどうしても必要だ。食事、セックス、着るもの、道具、すべてにわたる”新しい生活”のための知恵がここにある。
旅をしよう、人生という巨大な旅を! あたえられるものではなく、自分のために自分ででつくり出したものを持って。
いまあなたが行っている日常生活は、テレビを見ている時分を見ている自分みたいなもので、テレビのなかに入り込みそれに熱中している楽しさとくらべたら、実につまらないものだろう。
旅は人生をテレビのブラウン管にしてくれる。主人公は、もちろん、あなただ。つまりこの雑誌は、人生を旅にする目的を持っている。
「時空間」 127頁 1975 200円 発行 雀の森工房 p112
6)なんともはや、面映ゆい紹介記事である。この本が出版された当時は、この紹介記事にとても反発した。なんの問い合わせもないまま記事として取り上げられて、人に教えられるまで記事になっていることさえ知らなかった。
7)しかしまぁ、あれから36年が経過して見れば、これはこれで大変ありがたい紹介記事だったということになる。そして、誰が書いたか知らない紹介文ではあるが、結句の「つまりこの雑誌は、人生を旅にする目的を持っている」とのメッセージは、言い得て妙というべきだろう。当時の私たち(私は当時21歳、表紙は私のデザインだ)は、自らの雑誌にサブタイトルやキャッチフレーズを持つ力さえなかった。
8)この雑誌「別冊宝島」の編集にかかわっていた一人が北山耕平だ。彼のブログを見ると、「同志たちよ、あの偉大なるカタログがウェブサイトですべて公開されましたよ」(Monday, January 12, 2009)の文字が躍っている。
9)北山耕平を「同志」と呼ぶにはちょっと距離感があるが、ただあの時代の雰囲気を思い出そう、という気にはなる。当のスチュアート・ブランド自身が最近刊の「地球の論点」(2011/06 英治出版)で原発推進を過大に評価しているので、彼を「同志」とは呼べない。ましてや「導師」などとも考えることさえはばかれる。
10)なにはともあれ、ここに、いわゆる日本のカウンターカルチャーの片鱗をメモしておくことにする。
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