ガイア 地球は生きている ジェームズ・ラブロック <2>
「ガイア」 地球は生きている<2>
ジェームズ・ラブロック (著) 竹田 悦子 (翻訳) 松井 孝典(日本語版監修) 2003/08 ガイアブックス 単行本 191p
Vol.3 No.0790★☆☆☆☆
1)この本、3・11で壊滅した図書館が、数カ月してようやく再開した時、震災コーナーに大きく表表紙を見せて飾られていた。図書館スタッフもかたずけが大変な中、無事だった在庫の図書で、なにはともあれ関係のありそうな本を並べてみたのだろう。
2)ところがこの本は、借り手がなく、いつまでもディスプレイのように飾られていた。たしかに地球の画像はきれいだし、タイトルだって、素敵でしょう・・・・「地球は生きている」・・・・・。そう思って、私が借りなきゃ誰も借りないのかなぁ、なんて勝手に思いながら、借り出し、他の震災関係の本と一緒に読みだした。
3)読みだしてから気がついたのだが、この本、面白くない。最初、きれいだなぁ、と思った表紙さえ、なんだか少し絵柄がずれていて、かなりピンボケだ。「病んでいる地球を科学的に診断したわかりやすい図鑑」というサブタイトルさえ、歯が浮いてくるようなちぐはぐさだ。
4)いいタイミングだなぁ、と思ってなにかメモしておこうと最初は思っていたのに、ちょっと開いただけで、ゲンナリして、自分のブログにメモすることすら面倒くさくなり、さっさと返却してしまった。
5)ガイアは、本書の著書ラブロックが、地球が何故生命の惑星か、という問いに関して、彼の主張に命名した言葉である。私はその問いに対し、別の考え方を主張しているので、彼のその主張に全面的に賛同するわけではない。p3松井孝典「日本語版監修にあたって」
6)最初の書き出しからしてこの調子だ。意見が違うなら監修なんて受けなければいいのに、なんだかみんなリキが入っていない一冊となっている。松井孝典氏は、1992年の「スピリット・オブ・プレイス」のポスターの地球図を提供してくれた人だし、パネラーの一人だった。その彼のノリがこの調子である。一体、ラブロックという人物の研究とやらは、どんなものだったのだろう。
7)なにはともあれ一年前は黙って返却しておいた一冊だが、今回は「ガイアの復讐」(2006/10 中央公論新社)をめくったついでに、ひととおりラブロックの著書をまたさわってみようと思った。
8)しかし、それにしてもひどい。少なくとも、3・11後の震災地において、敢えて開いて読んでみよう、という気分にはならない本である。沢山の図版があり、カラー写真がところ狭しと印刷されているが、ことごとく間が抜けている。それもこれも、今となっては、ラブロックが、「転向」ではなくて、「一貫して」原発推進派だったと発言していることに、あらためてウンザリしていることと関係があるかもしれない。
9)すくなくとも、このようなラブロックに師事しているスチュアート・ブランド というお人も、かなりトンチンカンだなぁ、と今の私なら思う。すくなくとも、こいつらに、カウンターカルチャーを標榜されては困る。
10)自分を病の地球を癒す地球医学者に見立てたり、「人類という疫病」(p153)なんてところを見ると、おいおい、いい加減にしなさいよ、と言いたくなる。
11)論争を好んだり、珍奇な学説を唱えたりすることによって注目を浴びたいという欲望があったのかもしれないが、少なくともラブロックにおいての科学は、あくまでも「仮説」なのであり、それが「ガイア仮説」から「ガイア理論」と、表現が変わったとしても、仮説は仮説である。
12)あるいは「仮説」というのも程遠く、フィクション、つまり「嘘」と決めつけてもいいような部分も実は多い。科学的フィクションだから、SFだと思えばいいのかも知れないが、SFにはSFなりの矜持というものがある。「地球は生きている」というコピー、少なくともこの本においては、インチキ、羊頭狗肉と言われても仕方ないのではないか。
13)いずれにしても、90才も過ぎて「原発推進」を、いかにも最後の解決策のように宣伝するようなデマゴーグは、当ブログとは極めて相性が悪い。いつまでも無視してばかりもいられないので、なにはともあれ、最大限の不快感をここで表明しておこう。
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