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2012/08/23

日本のエネルギー、これからどうすればいいの? 中学生の質問箱 小出裕章


「日本のエネルギー、これからどうすればいいの?」 中学生の質問箱
小出裕章 2012/05 平凡社  単行本 207p
Vol.3 No.0784 ★★★★★

1)この本は氏の前著「原発ゼロ世界へ ぜんぶなく」(2012/01 エイシア出版)につづき、ビッグレッド評価としておきたい。当ブログとしてはわずか2冊目である。

2)公立図書館利用の読書ブログとして、自らの乱読の結果を忘れないために、暫定的に始めた☆マーク評価だが、平均値★3に対して、5つはかなり感動した本となる。それでもさらに突き抜けた本に対しては、レインボー評価をつけてきた。

3)だが、氏の前著「原発ゼロ世界へ」を読んだとき、その読後感はさらに上に突き抜けて、暫定的にそれを上回るビッグレッド評価★★★★★というものをつけることになった。

4)最近まで、国や電力会社は「原子力は二酸化炭素を放出しない。だから二酸化炭素削減が必要な、いまの時代に適したエネルギーだ」と宣伝してきましたが、実際はウランの採掘から運搬、書こう、使用済み燃料の処分まで、各段階で二酸化炭素を排出していて、いまでは「発電時に二酸化炭素を排出しない」と表現が変わっています。が、いずれにしても、宣伝をうのみにしないで、事実にもとづいた評価、行動が必要です。p140「これからは自然エネルギーにシフトしていくべきですよね?」

5)この本はこの出版社のシリーズ「中学生の質問箱」の一冊に加えられている。図書館の分類ではYA(ヤングアダルト)コーナーに配置されている。氏の本の多くは、ですます調で書かれており、もともと読みやすい本が多いが、その中でも、とくにこの本は平素な言葉づかいで説得力をもって話しかけてくる。

6)だが、内容的には、他の本よりも、さらに一歩前に踏みこんでいるのではないだろうか。原発そのものについては、当然ともいうべき氏のこれまでの40年に渡る研究の成果が語られる。しかし、この本では、視点が原発以上のレベルに引き上げられている。

7)問われているのは、私たちのエネルギーの使い方、エネルギーを大量につくって大量に消費するという社会のあり方そのものです。私たちはエネルギー消費に対する考え方を変える瀬戸際にいます。いままでのようにエネルギーを消費して日本を滅ぼす覚悟をするのか、エネルギー消費を抑えた生活をする覚悟をするのか、どちらかをえらばなくてはならいのです。p157「経済に元気がないと困るのではないですか?」

8)ことは核廃絶・脱原発を達成すればそれでいい、ということにはとどまらない。もちろんそこまで到達するには壮絶なる距離感が残っている。しかし、それを可能にする人間の存在の在り方がいま問われているのだ。

9)エネルギーを浪費しない社会への変革は、おそらく、エネルギー消費の構造的な問題、世界のあり方の不公平を認識した人たちが、それぞれの自分のライフスタイルを劇的にではなくても変えていく、ということがあちこちで起こっていった末に少し可能性が見えてくるのだろうと思います。

 「これをしよう」とか「これは反対!」というような、運動としてもりあがるようなものではないだろうと思います。p192「どうすれば社会構造や世界のあり方を変えられるのですか?」

10)この本を読んでいて、私は「当ブログ認定・地球人スピリット」という評価枠を新設しようかな、とさえ考えた。その第一号はまずこの方だろう。氏は個人として発言されている。科学的である。そして表現力ゆたかで、スピリチュアリティに富んでいる。

11)この方のほかに誰がいるだろう、と考えた。いま生存している人物では、ゲーリー・スナイダーなどが適格なのではないか、と思いついた。でも、スナイダー自身は、この3・11後において、本当にその影響力を発揮しているだろうか。

12)シュプレヒコールってわかりますか? デモなどでマイクを持った人が標語を叫んで、ほかの人が声を合わせる、あれです。私はシュプレヒコールが嫌いです。みんな違う人間なのに、ひとつの標語をみんなが唱和しなければならないからです。

 これからの可能性は、みんなが一緒になにかをすることにはないと思います。それぞれの人がそれぞれに大切なことをしながら、お互いにつながっている、というそういう形がいいと思います。

 福島第一原発事故のあと、原発をやめようという運動がたくさん起こってきて、ありがたいとは思いますが、みんなが一色に染まってしまったら気持ち悪いと思います。p193同上

13)エアコンを使わないとか、車を持たないとか、そういう氏のライフスタイルを、私は真似ることはできない。あるいは(北)朝鮮の動きに対する表現などについても、個人的には違和感を持つところもないわけではない。しかし、それぞれの差異をたもちつつ、氏の存在は、身近で、信頼できる、尊敬できる生き方として、多いに感化されるところがある。

14)ひとりひとりが自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分の生き方を選べるような世界をつくることが、エネルギーをたくさん使えば幸せだと思っていた世界とは違う世界をつくることになるだろうと確信します。p194同上

15)「おわりに」(p196)で、氏はながく子供を持たなかったが、後年になって生まれた三人のお子さんがあることを知った。その中のお一人はどうやら亡くなられたようだ。氏は私より5歳上だが、子どもたちの年齢は我が家よりやや数年遅れる。だから、類推するしかないのだが、そろそろお孫さんたちも生まれる年齢になっているのではないだろうか。

16)3・11後に当ブログはプロジェクト567という名称で7つキーワードを追っかけてみた。そしてその中心においたのは、3・11を挟んで生まれた二人の孫たちである。もちろん、じいさんとしては我が孫はかわいい。そもそも子供好きの私には当然のことだ。だが、それはある意味象徴でしかない。人間とは命のバトンタッチだ。未来があるとすれば、これから生まれる子どもたちがそれを担う。

17)私は、未来の子供たちから、「お前はどうやって生きてきたのか」と問われるでしょう。私だけではなく、きっとみんな問われます。 

 「お前はどうやって生きてきたのか?」 

 そのときに、自分は負けたかもしれないけれど、こうやって生きたと言えるように、私は生きていたいと思うのです。p205「おわりに」

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