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2012/08/22

Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学 ケン・シーガル


「Think Simple」アップルを生みだす熱狂的哲学
ケン・シーガル/林信行 2012/05 NHK出版 単行本 317p
Vol.3 No.0783 ★★★☆☆

1)目次には、Think ~~と、10の項目がならぶ。しかしその中に「Think Simple」はない。邦訳のタイトルは「Think Simple」となっているが、これは原題ではない。原題は「Insanely Simple」。saneの意味は健全で、その前に in がついていて、後ろにlyがつく。突飛なシンプルさ、というのが原題の意味だ。だから、実はこの邦訳タイトルはすこしチグハグということになる。

2)著者はアップルの宣伝に携わったクリエイティブ・ディレクターとのこと。私の日本人の友人にこの肩書を有難く掲げ、ややもすると、その立場に固執しているかに見えて滑稽なのだが、両者が同じ様な仕事をしているのかどうかは知らない。

3)アップルを生み出す熱狂的哲学。このサブタイトルもコピーにすぎるのではないか、と私なら感じる。熱狂とシンプル派、相反するように感じるのである。

4)巻頭に「シンプルに、シンプルに ----ヘンリー・デイヴィッド・ソロー----」とある。これは著者のケン・シーガルの引用だろうが、この辺あたりも、別にアップルとソローが直接に結びついているわけではないのだが、アイコンとしてソローを使っているだけで、まぁ、いわゆるところのイメージ戦略である。

5)アップル製品に直接過大な恩恵を受けたことのない身としては、このようなあちこちで見られる行きすぎた「アップル的」振る舞いには、しばしば目を覆いたくなる。だから、またまたアップル製品から遠ざかる、というサイクルに陥る。

6)ピクサー内部では彼は、クリエイティブな会議には出席しないように求められていた。さもなければ、ライターやアーティストが大量に造反する恐れがあったからだ。彼はリーダーシップとビジョンを高く評価されたが、映画作りの才能についてはそうではなかった。

 これは私たちを勇気づけるニュースだ。創造的な思考によって世界を変えるためには、リーダーにすばらしい創造的才能がなくてもいいことを、スティーブが証明してくれたのだ。リーダーは、創造性が必要だとわかっている組織を作ればいいのだ。創造的思考の世話役になり、最大の擁護者になればいい。リーダーは、プロセスがいいアイディアを促進するのではなく殺そうとしているときに、それに気づく能力を持てばいいのだ。p67「Think Small」

7)ここまでくれば、もうなんでもありだ。「側近」としては、とにかく「大将」を最大限に称賛すればそれでいい。北朝鮮のテレビ「ニュース」を見ているかのようだ。ジョブズは、政治に世界に入らなくてよかった(その可能性はゼロではなかった)。彼は、「芸術」とか、「カウンターカルチャー」とか、「シンプル」とか、そういうアイコンで、自らの「野望」をうまく隠しとおすことができた。

8)スティーブがシンプルさの力を深く信じていて、シンプルであることが人間らしさにそれほど重要であるなら、どうして彼は狂気の暴君だったのだろうか。

 狂気の暴君かどうかは、見る人によって決まる。たしかにスティーブは非常に要求がきびしく、無慈悲までに頑固で、そして、かっととしたときは恐ろしくてたまらなかった。彼の基本線は、船は毎日、前に進まなければならないといことだった。その役に立たない者は困った事態に追い込まれた。p207「Think Human」

9)当ブログのジョブズ追っかけの37冊目の本である。短期的にジョブズ本を読み進めてきたので、かなり食傷ぎみだ。本当はこの本を読むことは気がすすまなかった。でも、長いウエイティング・リストの果てにようやく私のところに辿り着いた本である。目を通さないのは申し訳ない、という気分もあった。

10)しかし2週間も手元にありながら、読めなかった。今日が返却期限日である。私の後ろにはすでに数十人の列ができている。早めに返却できなくて申し訳なかった。今後、私が心を入れ替えて、やっぱりこの本を読みたいな、と思っても、随分と後回しになることだろう。

11)時価総額世界一の企業を遺して、56歳と7ヵ月の人生を閉じたスティーブ・ジョブズには、すでに沢山の評価がなされており、称賛も、そうでない評論も数々出そろっている。あえてそこに当ブログが付け足すことはない。ただ、この人物を、同時代的であるとか、カウンターカルチャー的であるとか、あるいはパソコンの生みの親であるとか、と言った「過大」な「評価」からは、静かに遠ざかっていたいと思う。

12)この人物は、まれにみる「強欲な男だった」と見ることもできる。それをあらゆる方法で粉飾した。そのからくりを支え続けたのは、その周囲にいた、いわゆる「クリエイティブ・ディレクター」たちでもあった筈である。

13)ジョブズは若くして大きな金を握った。そして、その金を守るのではなくて、投資に回し続けた。だから、周囲の実験的な冒険野郎たちは、多少の「異常性格」なり―ダ―であっても、サポートしつづけた。これが実体であろう。

14)そこには情報の波という時代性があり、シリコンバレーとなるべきエリアの位置的要素が加速させた。そこにその人物がおり、それを支えるエネルギーがあった、ということなのだろう。

15)ジョブズがいなくても、情報時代はきただろうし、パソコンは生まれただろう。好みはさまざまあれど、タブレットやスマホなども、特段に個人の力で生まれたのではない。そのような波の中で、ジョブズは自分の好きなように56歳と7ヵ月の人生を送ることになった、ということなのだろう。

16)カウンターカルチャーやパソコンと、直接的に、排他的に、ジョブズを結びつけるのは、当ブログの趣向ではない。むしろ、ごくごく並列的に、時には排除して、それらの背景を考えてみたくなる。

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