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2012/09/05

3・11「以前」ならこの構想力は面白かったかも 池田純一「ウェブ×ソーシャル×アメリカ」 <全球時代>の構想力<3> 

<2>よりつづく


「ウェブ×ソーシャル×アメリカ」 <全球時代>の構想力<3>
池田純一(著) 2011/03 講談社 317P

1)一時は、当ブログの当面の回転軸にしようとさえ思った、重要な一冊であった。だが、この本の重要な登場人物である「ホールアース・カタログ」のスチュアート・ブランドを追いかけているうちに、なんだかボロボロとその基盤が崩れてきた。ブランドが師と仰ぐ「ガイア理論」のジェームズ・ラブロックなどに至っては、当ブログとしては噴飯ものという結論づけさえしているのである。

2)しかしながら、池田純一の手になるこの本は、なかなか捨てがたい魅力がある。このような論点でまとめてある本は、寡聞にして他に知らない。ゆっくりじっくり読んでみたい一冊でもあり、当ブログとしては珍しく、アフェリエイトのポイントを使って、自分用に一冊購入もしている(尤も、市内の図書館に一冊も入っていないからなのでもあるが)。

3)スチュアート・ブランドが崩れてしまえば、この本のテーマであるウェブもアメリカも崩れてしまい、その<全球>構想も、なんとも<半球>的でしかなかったのではないか、と疑念が湧いてくる。そして、ソーシャルに至っては、現在進行形ながら、特段にこの本でしか語り得ないというものではない、ということになる。

4)ここでこの本を上げたり下げたりするのは、この本が3・11直前に書かれた本であったからであり、また、3.11を経過して、その<全球>的構想は、大きく変貌を遂げざるをえなくなったからである。

5)今、あえて松岡正剛「3・11を読む」千夜千冊番外録(2012/07 平凡社)をぶつけてみると、いかに3・11以前の<全球>のイメージが脆弱なものであったかが分かる。もちろん、松岡「3・11を読む」にしても、決して網羅的ではなく、少なくともその「ウェブ」について言及している部分が少ないので、こちらも<半球>的と言わざるを得ない部分が多い。

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6)「ウェブ×ソーシャル×アメリカ」が3・11直前までを読んだものであり、「3・11を読むが」が文字通り3・11を読んだものであったとしたら、次なる一冊はその意味において3・11「以後」を読んだものでなければならない。少なくも、大きなビジョンや「構想力」において、3・11「以後」を盛り込んだものは、まだ出そろっていない。あるいはない。そして、ないものねだりをしているばかりではなく、当ブログは、そこのところにこそ力を注いでいく必要がある。

7)少なくとも、読書ブログを標榜する限り、3・11以前から3・11を予見し、3・11以後へのビジョンを語っていた本はあったことを忘れてはいけない。

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8)これらの本にもっと大きな信頼をおき、真剣にその可能性について考察を深めていたら、私の3・11はもっと違った意味あいになっていただろう。松岡正剛も「3・11を読む」p223において「広瀬隆が鳴らす警鐘を聞くべきだった」と述べている。これらの本は3・11以前に3・11を予見し、3・11以降までのビジョンを語っている。

9)広瀬の本は激越である。
 振り上げた青龍刀を上段から真っ向に斬り落とし、そのまま止めるのではなく、最後まで振り切る。相手は悲鳴をあげる。
 いや、下から斬り上げて、そのまま天空に向かうこともある。適当なナジリや揶揄など、がまんがならないのだ。たとえば多くの知識人や評論家やマスコミが「原子ムラ」とか「御用学者」などと言っているのが気にいらない。かれらは「原子力マフィア」であって「原子力シンジケート」だというべきだというのだ。
松岡正剛「3・11を読む」p225「広瀬隆が鳴らす警鐘を聞くべきだった」

10)松岡にして、広瀬隆はそのような存在であったか。

11)ぼくが最も納得したのは「原子炉時限爆弾」の一冊だった。もっと解説したいとは思うものの、広瀬の本にかぎっては、その鋭利な毒舌とともに読者も返り血を浴びたほうがいいだろうから、直截に手にとって読まれることを勧める。松岡正剛「3・11を読む」p225「広瀬隆が鳴らす警鐘を聞くべきだった」

12)漫然と本を見開き文字面を追っているだけでは、本当に満足のいく読書にはならない。未来を予見し、構想力を身につけるには、返り血を浴びるだけの勇気と余力がほしい。例えば、ジェームズ・ラブロックやスチュアート・ブランド軍団の「原発推進」もまた、たしかに注目すべき「警鐘」ではあった。しかしながら、「3・11」を経験した今、その方向性はかなり現実的なものとなり、一歩前に進まなくてはならなくなったのだ。

13)「ウェブ×ソーシャル×アメリカ」はなかなか支線に富んでいて面白い。突っ込みネタ満載である。今後、いずれまた俎上に上がるとしても、なにはともあれ、この辺で、中締めとしておく。

<4>につづく

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