松岡正剛「3・11を読む」 千夜千冊番外録<1>
「3・11を読む」 千夜千冊番外録<1>
松岡正剛 2012/07 平凡社 単行本 430p
Vol.3 No.0794★★★★★
1)3・11後に、あわてて、とりあえず何人かの短文をまとめて、何か出そう、という魂胆丸見えの、いわゆる3・11オムニバス本は、ほとんど面白くない。ひとつひとつが断片的で、深まりがないばかりか、一冊の本としてのまとまりも悪い。
2)そもそも天地をひっくり返したような3・11を、まともに全体的に把握できている、ということ自体おかしいのであるが、被災地にいるひとりの人間として、そのおかしさに、なお輪をかけたような、心の沈殿物をかき回されたような、不快感が残ってしまうような本がほとんどなのである。
3)それでも、「いまだから読みたい本ー3.11後の日本」 (坂本龍一・他 2011/08 小学館) や「 世界が日本のことを考えている 3.11後の文明を問うー17賢人のメッセージ」(アントニオ・ネグリ他 2012/03 太郎次郎社)など、いつかおちついたら、精読してもいいかな、と思える本もないでもない。
4)その中にあって、こちらの松岡正剛オヤブンの「3・11を読む」を店頭で見つけたものの、はて、どの程度のなのかな、と乗り気のないまま手を伸ばしてみることになった。そもそもがネット上の「千夜千冊」を一冊にしたものだから、大体の雰囲気はネットを読めばわかるのだろうが、本は本として、やはり出版される前に加筆訂正はされているだろう。
5)ぼくは原発関係の本を3・11以来のこの9カ月で、おそらく300冊以上に目を通してきた・・・p230
6)私は3・11の午前中、ビル・モリソン「パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン」(1993/09 農山漁村文化協会)を読んでいた。だけど、その後、ライフラインの寸断のもとでの読書は不可能だった。書店は壊滅し、図書館も閉鎖された。次から次と事態が変転し、やっと読書らしきものを再開しようかな、と思ったのは、3ヵ月ほど経過してからだった。
7)その後、当ブログが約1年数カ月の間に読んだ本はほぼ500冊。一日一冊のペースである。しかし、原発関連の本は、その5分の一か10分の一くらいだろう。まだリストが工事中なので明確ではないが、地震関連や津波関連のほうがまずは目についた。あるいは、原発関連は直視できなかった、というべきだろうか。
8)この本の目次を見てみると、なんとかなく傾向が似ているのは3・11を読んでいるのだから当たり前なのだが、ずばり同じ本のタイトル、というのは少ない。この本に取り上げられている本は約60冊だが、その1割程度しか重なっていない。
9)その中にあっても、最初に目がついたのは、たくきよしみつ「裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす」(2011/10 講談社)、そして、目下、当ブログが格闘しているスチュアート・ブランド「地球の論点 現実的な環境主義者のマニフェスト」(2011/06 英治出版)だった。
10)それぞれについて、当ブログなりにコメントをつけておいた。誰かに読んでもらおうと外向けに書いているわけではないので、個人的な備忘録的なメモになりやすいが、それでも率直な意見をそれなりに、その時々に記してきたつもりだ。
11)それにしても、同じ「環境保護派」でパソコンやインターネットに強い二人ながら、かたや、フクシマのその放射線汚染地域にすみつつ情報を発信するたくきよしみつと、カウンターカルチャーに多大な足跡を残しながら、21世紀になって、「親」原発派に「転向」したスチュアート・ブランドの対比は、なかなか気になるところである。
12)「津波てんでんこ」や「思想としての3・11」、内田樹/中沢新一 /平川克美 「大津波と原発」、広瀬隆「FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン」 、などなどを松岡オヤブンはどう読んだだろう。
13)いつも私は、松岡正剛を、オヤブンと、やや揶揄して呼んでいる。なんでそうなのだろうか、と何回か考えたのだが、よくわからない。なんだか工作舎という出版チームを引っ張っているカリスマにも見えるからかも知れないし、セイゴウ、という名前が、私のセイコウと似ているので、理由のない親近感を感じているからかもしれない。いつもその背中をおっかけているような気分になる。
14)当ブログが今おっかけている、プラブッダが訳したラブロックの二冊の本も、工作舎からでている。
15)すこしペースダウンして、この本をゆっくり読みこんでみよう。この本から、まず学んだことは、それぞれに本の印象をコンパクトにタイトル化していることである。当ブログはいままで、タイトルしか書いてこなかったが、今回から、当ブログもそれぞれの印象をコンパクトにサブタイトル化してメモしていくことにする。
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