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2012/09/14

坂口恭平 『独立国家のつくりかた』 <4>

<3>からつづく 


「独立国家のつくりかた」 <4>
坂口恭平 2012/05 講談社 現代新書 221p
★☆☆☆☆

1)他のSNSのほうにV氏からコメントがあったので、転写する。

2)何かこの人を持ち上げるような風評があり、あまり読んでみたくなかったのですが、バヴェッシュの感想を読んで、僕のカンが当たってたのかと思いました。ますます読む気がなくなった。2012年9月13日 22:59

3)この本のカバーには、金色(に似せた茶色)に白ヌキで、「各メディアで話題沸騰 絶賛の嵐!」とある。まさか本人が書いたコピーではないだろうが(いやいや、その可能性もないではない)、天下の講談社の一冊としては、いささか度を踏み外した表現ではないだろうか。

4)各メディア、とは何を意味している知らないが、「話題沸騰」なら、賛否両論ということもあろうが、「絶賛の嵐!」とくれば、ひたすら賛成派のほうが圧倒的に多いようなイメージがある。本当にそうなのだろうか。この本の、何に賛成なのだろうか。ただ単に、オチャラケが、笑いを誘っている、というだけなのではないだろうか。

5)ここでV氏は、「この人を持ち上げるような風評」があるとしている。私は、Youtubeあたりで、彼の講演風景を見て、ありゃ、これはダメだ、と思ったくらいだが、寡聞にして、この人を紹介したようなマスメディアには接していない。

6)ただ私は、とりあえず、目につくものはまずは手に取ってみるので、私が彼のことを「徹底批判」(笑)しているとしても、彼の営業活動を妨害している、訳ではない。私もまた最初のは書店で立ち読みし、後でアフェリエイト活用で0円読書、とはいうものの、一冊入手し、手元に保存しており、きっちり彼には印税が行くように配慮はしている。

7)はじめまして。坂口恭平です。職業はいまだによくわかっていません。なので、僕はいつも「あなたは僕が何者だと思いますか。それが僕の職業です」と言うことにしています。坂口p3「まえがき」

8)私なら、この人はペテン師だと思う。だから、この人の職業はペテン師なのだろう。表紙見返しには、「建築家」とある。だが、これは誤解を招く表現だ。少なくとも、職業的建築家は、強い職業倫理が求められる職種である。各種の法的縛りの上で、なおコンプライアンスを徹底しながら遂行しなければならない職業だ。

9)何年か前に、「高橋弘二税理士事務所」を名乗っていた男が、いつのまにかライフスペースとかの代表かなにかになり、ミイラ事件やらを起したことがある。ペテン活動を推進するのに、「税理士」という肩書が大いに役立ったことは、察するにあまりある。

10)少なくとも、この人は、誤解を招くので、「建築家」は外したほうがいい。建築家としての「国家」資格も持っていないし、家を建てたという「実績」もないのだから。一緒に併記してある「作家・絵描き・踊り手・歌い手」はいいだろう。絵は何枚か売れたようではあるが、歌や踊りで有名になったわけではないのだから、やはり「作家」がいいのではないか。「作家」ならなんでもありで、自由勝手に、好きなことを言っていればいいんだから。少なくとも、本は6冊以上出しているし。

11)「新政府を樹立し、初代内閣総理大臣に就任」。この言葉も著者紹介で追記されているが、これは止めた方がいいだろうな。誤解を招くし、「作家」先生ご自身の想いが十分表現されているとは、とても思えない。自分は自由奔放にやりたいが、周囲からは、順法精神に富んだ「普通」の人間に見られたい。それがこの人の本心だ。

12)いまや、絵描きや歌い手だって、法律にがんじがらめにされており、純粋に芸術にいそしむなんてことは出来にくい世の中ではあるが、それでもやはり、アーティストには、飽くなき探求を続けてほしいものだと思う。

13)2011年の年収は約1000万円。貯金は300万円、とある。周囲から見ればうらやましいような数字を「まえがき」の第1ページに掲げているが、これもまた、私に言わせれば眉唾ものである。あるなしは関係ないとしても、なにをもって「年収」としているだろうか。売上なのか、税金を控除した上での申告の数字なのか。その辺がアバウトに露出してある。

14)あるいは、どうやらこの人「パトロン」をお持ちなようだが、たまたま2011年度はそうであったにすぎず、安定した「年収」と言えるほどの数字ではないのではないか。

15)貯金とはいうものの、例えば1年間に1000万円の入りがあれば、妻と三歳の子供との三人のくらしであれば、不動産などを購入したり、無節操に散財しなければ、300万円程はあまるだろう。ただ、実際には、それが余剰資金といえるのかどうかは、わからない。

16)車輪が付いた「モバイルハウス」という家も建ててもいる。これは車輪が付いているから法律上は家ではない。坂口p5「まえがき」

17)モバイルハウスとはいうものの、電子機器のような「モバイル」を連想してはいけない。この人の作品は、単にリヤカーにホロが付いたようなものだ。ここにも羊頭狗肉の手口が見え隠れする。「法律上は家ではない」といいつつ、「ハウス」と名付けるあたり、なかなか手口は巧妙だ。

12)そこで法律を読んでみる。「生きていけないのか?」だから生存権である。どうなっているか。

憲法25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

やっぱりお金がなくても生きていく権利はあるらしい。 坂口p37「法律が多層なレイヤーをすり合わせる」

13)この人、コンプライアンス精神にのっとった生活をしているのかどうか疑問だが、よそを責める時には、法的根拠を持ちだす。そう言えば、どこぞの団体も、やらたらと弁護士を盾にして殺人事件まで突入してしまったことがあったなぁ。

14)法律なのだか、憲法なのだか、分からなくなっている。権利と義務はワンセットになっているものだが、私は小学校の時代に、日本国憲法には、国民の義務として、就学(させる)義務、労働の義務、納税の義務、がある、と学習したような気がする。

15)すくなくとも、私のみるところ、坂口いうところの「0円ハウス」群の人々は、労働の義務と、納税の義務、にやや疎いのではないか、と察する。義務を果たそうとせずに、権利だけ主張するならば、国家に限らず、どんな共同性からも排除されてしまうのは、しかたのないことであろう。

16)僕が初めてつくったモバイルハウスは正確に言えば2万6000円でできた。デザインは自分で好きにやればいい。車輪を付けさえすればいいのだ。小さい建築なので、素人でも誰でも設計できる。坂口p52「安い、簡単、建て直せる」

17)例によって、この人は、イメージ先行で、「口先」達者に物事を進めてしまう。はっきりいうなら、2万6000円もあれば、DIY感覚で結構なものは沢山作れる。廃材利用なら、これほどの資金はいらない。O円ハウスを標榜するリーダーなら、徹底して0円に挑戦すべきだろう。

18)山尾三省に次のような詩がある。

19)太郎 中学三年生
後輩にあとをゆずって野球部を引退したお前に
この夏休みの宿題を与える
大きくなったお前と やがて大きくなる次郎
二人の部屋を自分たちの手で建て増しをすること

父が棟梁 図面を引き 根太のほぞを切る
お前は手元 柱にほぞ穴を掘る
次郎はやがて12歳 川で鰻の仕掛に熱中している

何をすることが
本当の楽しみなのか
何をしている時に
胸に希望があり 静かな力が湧いてくるのか
父は子に教えようとし
父はまた 子から学ぼうとしている

大工
おおいなる たくみ 
    山尾三省「聖老人 百姓・詩人・信仰者として」p100 「大工」

20)私にも似たような経験がある。中学生になって、自分のスペースが欲しくなり、まずは大部屋をつい立てで区切り、やがて高校生になってからは、空いていた裏部屋を、床、壁、天井、窓、すべてを作りなおして、自分の部屋としたのである。

21)もちろん、高校生に潤沢な資金などあるわけがない。余っていた資材、拾ってきた家具、もらってきたポスター、そして小遣いと、アルバイトでためた僅かな手持ち資金で、金具や工具を買った。DIYと言えば言え。何流であろうと、人は必要であれば、どんなものでも作ってしまうのだし、そのことが自らを豊かにする。

22)まず僕たちはもともと狂っているのだ。そこから始めたい。
 狂っている僕は、狂っている世界から離れた路上生活者たちの所有をしない世界を見て、自分が狂っていたことを認識した。でも彼らはこの世から見たら無法者であるらしい。そうやって見ると、いろいろと発見があった。違法って何なのだろうと思った。
坂口p62「普通に考えたらおかしい」

23)この人、「僕」と「僕たち」が入り乱れる。私としては、すくなくとも一読者として、この人の「僕たち」のカテゴリには参加しない。この人の文脈における「狂っている」人たちのグループに入ることは拒否する。「踊る阿呆に見る阿呆、おなじ阿呆なら、踊らなソンソン」というレベルの踊りレベルの狂気なら参加もできるが、自らのコンプライアンスも顧みず、二言目には、法律だ、憲法だ、と引用してくるような御仁の「狂っている」発言には、赤の傍線を引いて、危険ゾーンとする以外にない。

24)普通に考えよう。常識というものは、文句を言わないようにというおまじないである。まずは、そのおまじないから解放される必要がある。おまじないからの解放は、「考える」という抑制によって実現する。坂口 p63同上

25)この人、若いから(と言ってももう34才か)多少は甘く見られているが、もうすこし時間が経過すれば、立派な「居直り強盗」になるな。俺がこうして強盗に入ったのは、お前がドアに鍵をかけていなかったのが悪いのだ。これからはキチンと鍵をかけることだな。コンコンと説諭して、立ち去る姿は、まさにこの人の前生さえ連想させる。

26)こういう読書は、健康ではないが、乗りかかった船だけに、もうすこし続けてみよう。

<5>につづく

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