松岡正剛 監修情報の歴史 象形文字から人工知能まで
「情報の歴史」 象形文字から人工知能まで
松岡正剛/監修
編集工学研究所/構成 1990/04 NTT出版 全書/双書 p433
Vol.3 No.0798★★★★☆
1)スタンフォード大学で生物学を専攻して、進化論をポール・エリックから叩きこまれ、陸軍に入隊し、除隊し、それからは数々のグリーン運動にかかわってきた。そうして「ホールアース・カタログ」を立ち上げたのが忘れもしない1968年である。
それがいかに重大な出版であったかは、ぼくの「情報の歴史」(NTT出版)の当該ページを見てもらえばわかる。松岡正剛「3・11を読む」p271「スチュアートブランド・地球の論点」のページより
2)と、そう書いてある限りは、探し出して読んでみなければならない。この本はさらに1996年に「増補版」がでて、翌97年にはダイジェストとして「情報の歴史を読む」がでているようだ。
3)「ぼくの」と書いてあるけれど、松岡は監修とあり、構成は編集工学研究所となっている。要は同じことではあろうが、少なくとも松岡一人の手によって出来た本ではない。分野協力者だけでも30名。その他、関わった人々の名前だけでもゆうに100名を越そうというリストが巻末に掲載されている。
4)なにか、こう、多くの人々の手を煩わせて、しかも若い人を安く使って(笑)、というイメージがあるので、どうしても、この人をオヤブンと揶揄したくなるのである。オヤブンと呼んだからと言って、私が彼のコブンのつもりはさらさらない。ただ、コブンに成りたがっている人は多くいるのかもしれない。
5)「当該ページ」を見てみたのだが、「わから」なかった。この本、これだけ分厚くて、数限りない「情報」で埋め尽くされているのに、一部の整理の図版以外、イラストも写真もない。凝った装飾も一切ない。ひたすら、文字、文字、文字・・・の大冊である。しかも全てカラーページ、というところも相当に稀有なマニアックさだ。
6)このような「奇をてらった」造本はオヤブン門下のお手の物だが、それにしても、まぁ、ごくろうさまというしかない。「象形文字から人工知能まで」の人類史を一気に「横断」的に「縦断」しよう、という、途方もない企てだけに、正直なにがなにやらごちゃごちゃになっているだけである。もちろん、使い方を考えれば、利用価値もあるだろうが、まぁ、こういう力もありますよ、という腕試し的一冊と言えるのではないだろうか。
7)ある意味、これはスチュアート・ブランドの、それこそ「ホールアース・カタログ」に触発された企てだったに違いない。とにかく、「当該ページ」には、大きく(と言っても、他にも大きく書いてあるものはたくさんある)タイトルと著者の名前が書いてあるだけであった。
8)出版されたのが1990年だが、1995年にブレークアウトするインターネットの予兆を十分に感じさせる編集で、96年の増補版や「「読む」では、さらに加筆・加速されていることだろう。ここでは、全体の流れの中にスチュアート・ブランドを入れ込んである、ことを確認しておけば、それで足りるだろう。
9)せっかくだから、この辺でオヤブン関連のリストをつくっておく。(もともとあまり読んでないし、今後もおっかけの機会は来ないのではないだろうか)
松岡正剛関連リスト(工事中)
「松岡正剛 千夜千冊」2006/10 求龍堂
「ちょっと本気な千夜千冊虎の巻」2007/06 求龍堂
「セカンドライフマガジン(vol.1)」 2007/12 インプレスR&D
「脳と日本人」茂木健一郎との対談 2007/12 文藝春秋
「多読術」2009/04 筑摩書房
「松岡正剛の書棚」 松丸本舗の挑戦 2010/07 中央公論新社
「3・11を読む」 千夜千冊番外録 2012/07 平凡社
「謎床: 思考が発酵する編集術」 ドミニク・チェンと共著 2017/07 晶文社
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