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2012/09/05

重要なテーマではあるが、深化するには時間が必要 ポール・アダムス 「ウェブはグループで進化する」 ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」


「ウェブはグループで進化する」ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
ポール・アダムス  小林啓倫訳2012/07  日経BPマーケティング単行本 283p
Vol.3 No.0796★★★☆☆

1)面白そうなテーマだから、あとでゆっくり読んでやろうと思っていたら、あっという間に返却日になってしまった。次の人のために、急いで返却しよう。

2)ということは、面白そうなのだが、他の本を押しのけてまで、すぐに読みたい、という本ではなかったことになる。ひとつひとつの記事は面白い。もっともだと思うところもあれば、新事実がここに書かれていたりする。しかし、それは現在進行形のことでもあり、共通の理解となっているわけでもなく、またきちんと検証されていることでもない。

3)「6次の隔たり」には二つの落とし穴がある。ひとつめに、ある人物と別の人物とを結ぶ最短距離は、実際には非常に見つけづらいという点だ。私とあなたとの間には共通の知り合いがいるかもしれないが、それが誰かを見つけ出すのは難しい。 

 ふたつめに、私とあなたが6次の隔たりでつながっているかもしれないということは、私たちは他のあらゆる人々とも6次の隔たりでつながっている可能性があることを意味する。そのような状況の中で最短の経路を見つけ出すのは、気が遠くなるほど込み入った作業になるのである。p85「ソーシャルネットワークの構造が与える影響」

4)6次の隔たりは、当ブログでも盛んに登場する。多いに啓発される概念だが、当ブログとしては、特定の誰かと繋がるための手段として6次の隔たりを考えてはいない。6次の隔たりがあれば、いずれには、自分発の情報が「他のあらゆる人々」へも伝わる可能性があるのであるし、「他のあらゆる人々」からの情報も、自分の元へたどり着く可能性がある、というところに、その概念を評価するのである。

5)つまり、当ブログの主張は、せいぜい200名程度の「グループ」に属していれば、あるいは200名程度とネット上で繋がっていれば、世界中と、情報を発信し、受信することが可能である、と結論づけている。しかも、その200名のうちのコアな部分は、せいぜい3~40名程度。しかも、本当に必要な数名、7~8名の「親友」がいれば、事足りる、というものだ。

6)グーグルで彼(本書の著者)が担当していた領域のひとつが、ソーシャルメディアに関する研究である。グーグルがフェイスブック対抗サービスとして開発したSNS「グーグルプラス(Google+)」に、「サークル」という目玉機能があるが、その基礎をデザインしたのがほかならぬアダムス氏だ。

 サークルは他のユーザーをまとめてグループ化する機能で、コンテンツを投稿する際には、指定したサークルのみが閲覧できるように設定できる。まさに本書で繰り返される「グループ」の概念を具現化するものと言えるだろう。

 しかしそのアダムス氏はその後、競合であるフェイスブックへと移籍。さらにグーグルに対する不満をネット上で表明するなど、一躍有名人となった。p263小林啓倫「訳者あとがき」

7)ついつい先日、この「グーグルプラス」とやらへの紹介が、私の「親友」からあった。彼が始めたのであれば、ああ、それはそれなりに活用の価値があるのだろうと、渋々登録したが、本当の私は、あまりこの手のサービスには新規に登録したくない、というのが本音だ。

8)さらには、「LINE」という奴にも登録してしまったのだ。誰かの呟きに興味を持って、スマホでアプリをダウンロードして登録しただけで、どうやら、私のスマホの友人情報は吸い取られてしまったようだ。もっとも、2台持ちにしているし、私のスマホの情報はごくごく限られたものしか入っていないので、情報ダダ漏れはしていない。

9)ただし、LINEに登録しただけで、すでに、私の情報を持っている人がLINEに私の情報を吸い取られてしまっているみたいで、私の情報をダダ漏れさせたのが誰かが分かってしまった。つまり、この人たちとは、すぐに「友だち」になれるのである。

10)こういうシステムがいいのかどうかは、わからない。すぐに結果はでないとは思うが、実態を知ったうえで参加していかないと、どこまで情報がダダ漏れしてしまうのか、そら恐ろしい感じさえする。

11)それは、個人が自らの進化のために利用する分には価値があるかもしれないが、その膨大な情報を、マーケティングや管理のために利用しようとする「悪意」ある人々にとっても、重大な関心ごとになっていることも忘れてはならない。

12)ツイッターやフェイスブックとは言っても、所詮、2chとMixiの深化形じゃないか、と笑い飛ばすこともできるが、まぁ、そのプロセスは今後、よく見ていないと分からない。すくなくとも、200名の友だちのうちの情報をチェックし、コアな人たちが始めたら、そして、本当の「親友」たちが進めていたら、私もまた、重い腰をあげる時なのだろう。

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