時代と社会とそして何? 石川裕人作・演出 『1997年のマルタ』 現代浮世草紙集第五話
「1997年のマルタ」現代浮世草紙集 第五話
石川裕人作・演出 1997/03~05 駒場アゴラ劇場他で公演 上演台本 p86 石川裕人年表
Vol.3 No.0861★★★☆☆
1)もうこの辺になると、なにをどう捉えたらよいかということが実に曖昧になってくる。現代浮世草紙集シリーズの第五話ではありながら、他の作品とどのような共通項があるのか、何を目指しているのかは、台本や断片的な記録を見ただけでは、わからない。
2)このポスターはなんとも素晴らしいなぁ、と思いつつ、前後のシリーズに関連性があるのだろうか、と疑問に思う。会場も、仙台、東京、横浜、大阪、盛岡などで公演されており、場所や観客、会場の設定、役者などの構成で、ひとつひとつこの公演が、全部違った作品になっていたと推測することも可能だ。
3)テーマはどうやら細菌兵器。病原微生物や七三一部隊のことなどが、背景として混然となって登場する。「ミドリ十字と七三一部隊」(1996)などが参考文献(p86)として挙げられているから、薬害エイズが社会問題化していたのかもしれない。
4)1997年といえば、私なぞは、どんな年だったのかさえ、よく覚えていない。1995年のあの惨劇をなんとかやり過ごし、パソコンやインターネットの時代を迎え、マイホームを建ててローンをやりくりし、小中学生になった子どもたちに手を焼いていたころだ。仕事だって、決してうまくいっていなかった。
5)そういえば、彼がここで細菌問題を取り上げたのは、あの麻原集団事件のサリンや細菌兵器開発の情報の延長線上にあったのかもしれない。舞台設定は「ベルリン」だが、はてさて、このような演目が、観客たちにどのように見られていたのかは、いまのところ当ブログには判断つかない。
6)ルイズ いいかい!? 全住民に伝えるんだ。「マルタになってたまるか!!」
おっさん あいよ!! 「マルタになってたまるか!!」
サイレンが響き始める。 上演台本 p84
7)明らかに何かを働きかけている演劇だ。何かを叫んでいる。でも、それは何?
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