TheatreGroup”OCT/PASS”は十月劇場を超えたのか 石川裕人『素晴らしい日曜日』現代浮世草紙集Vol.1
「素晴らしい日曜日」現代浮世草紙集Vol.1
石川裕人作・演出 1995/03 TheatreGroup”OCT/PASS”スタジオ スタジオ 上演台本 p71 石川裕人年表
Vol.3 No.0860★★★☆☆
1)1971年からの「劇団座敷童子」、1976年からの「劇団洪洋社」、そして1981年に立ち上げた「十月劇場」を通り過ぎ、TheatreGroup”OCT/PASS”を立ち上げたのは1995年になってからだった。十月劇場を超えるという意味で付けられた、ある意味ナンセンスなネーミングだが、さて、石川裕人にとって、”OCT/PASS”は十月劇場を超えることができたのだろうか。
2)脚本100本目に「ノーチラス」 を上梓した上で、あえて一冊目の脚本集と出すとき、彼が選んだのは、とうの昔に「パス」したはずの、十月劇場での最後の作品となった「時の葦舟」三部作だった。
3)彼は十月劇場をどのように総括し、どこにその瑕疵を認め、どのように克服しようとしたのだろうか。そして、その結果はどうであったのだろうか。
4)当ブログとしては、いままでの追っかけの経緯から、80年代の石川裕人を唐十郎「特権的肉体論」の強い影響下にあった作風であったと見、時には、80年代的「唐十郎エピゴーネン」とさえ揶揄される範囲をさまよっていた、という可能性を完全否定するところまでは行っていない。
5)特権的肉体論によって起立する役者たちとともにつくった「アングラ・サーカス」に一応のピリオドをうって、彼が向かったのは、まずは「社会派演劇」だった(と仮定してみる)。
6)女3 レンタル家族っていうものなんですよ。
男3 なんだいそりゃ、
女3 家族を貸してくれるですよ。
男3 え?家族を貸す? 上演台本p3
7)”OCT/PASS”の第一作にして、現代浮世草紙集シリーズのVol.1は、「素晴らしい日曜日」。現代の家族のありようを鋭くえぐる、というテーマであったと推測される。ときあたかも、1975年の3月、オウム真理教事件の情報が溢れかえる中での一ヶ月のロングランとなった。
8)このシリーズの第3作が、1995年の12月の、オウム真理教事件を「皮肉った」作品、「教祖の鸚鵡 金糸雀のマスク」だったことを考える時、「現代浮世」をスキャンすることの難しさに、もんどり返ったのではないか、と私は思う。
9)女2 (スッt笑いやみ)「ある朝、グレーゴール・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中で、一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」
男1 (・・・な、なんだ・・・?) 上演台本p58
10)時代は、カフカの「変身」をはるかに凌駕するほどの、とてつもない異境へと移っていた。しかし、それでも、石川裕人は十月劇場を超えるべく「現代浮世草紙集」シリーズで、異形の遊行劇団というあり方から、定住の市民派劇団に「変身」しようとしていた。
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