スピリットとアニミズム おおえまさのり『未来への舟』
「未来への舟」 --草木虫魚の祈り--
おおえまさのり 2012/09 いちえんそう 単行本 188p
Vol.3 No.0893★★★★★
1)個人的には石川裕人が残した戯曲集「時の葦舟」を連想するタイトルの本である。1942年生まれの著者は、私たちの世代からすればちょうど一回り上の世代であり、山尾三省や横尾忠則、末永蒼生たちの世代である。兄貴とも、叔父貴とも言える存在である。
2)私たちでさえすでに還暦を迎えようという時期である。著者はすでに古希を迎えられているのだから、もうこれからの一冊一冊は、著者の遺言ともいえるべき存在となっていくだろう。
3)--草木虫魚の祈り--というサブタイトルが示すように、ポスト3・11を受けて、さらにアニミズムへの傾斜が強まった。三省のアニミズム三部作を思い出すが、著者は著者なりの、個性、独自性を静かにゆったりと携えている。
4)あちこちに「まちがい探し」を始めたらキリはない。こまかい「差異」はいくつもある。しかし、それは埋められなければならない差異ではなく、むしろ、なんとここまで近似しているのか、と思わせるほどの、小さな、それぞれの個性である。
5)著者は「スピリット」を多用する。魂、いのり、精神、カミ、神秘、聖性、実体のないもの、自然、大いなる神秘、などなどの意味として、万能なキーワードとして使っている。かならずしも合理的ではないが、当ブログ・地球人スピリット・ジャーナルとしては、このようなスピリットという指標の使われ方は好ましいと思える。
6)著者は、当然1991年の「スピリット・オブ・プレイス」にもパネラーとして参加しており、著者にそのレポートも書いている。おおえまさのり、という名前は、私たちの世代には、なくてはならないビッグネームだった。この人のおかげで開かれた地平があり、この人がなかったら、なにかが欠けてしまっていただろうと、素直に思える。
7)先日、この本の出版を記念してパーティが開かれたようだ。彼を指標として生きてきた後輩たちも多いに違いない。この生でも彼はマスターでありえたけれど、もし、もう一生あるのなら、もっと広範な影響力をもつ最新のマスターとなるだろう。生前からそんなことを言うのは失礼だが、なんだかそんな思いが湧いてきた。
8)著者の本は手元に何冊もある。私の知らない著書もたくさんあるに違いない。だが、この著者は、なかなか追っかけの対象にはならなかった。一冊一冊が大きな書物だったので、その一冊を読みきることが大変だった時期がある。もちろん本書のように、きわめて読みやすいものもある。
9)いずれ、著者追っかけのリストを作ってみようと思う。
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