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2013/01/30

『現代思想の使い方』 高田明典

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「現代思想の使い方」 
高田明典 2006/10 秀和システム 単行本 303p
Vol.3 No.0907★★★★☆

1)26人の現代思想家、あるいは哲学者たちが紹介されている。そのリストがウィトゲンシュタインで始まり、ネグリで終わる限り、当ブログとしては無視はできない。その他、フロイト、ニーチェ、デリダ、フーコー、ユング、ハイデガー、レヴィナス、フランクル、ドゥルーズ、マルクスなどと言ったおなじみの名前もあれば、この本で初めて知る人物も紹介されている。

2)お、これは面白そう、と手元においては見るが、なかなかこのような総花的な本には手がでない。ひとつひとつのアプローチは面白いし、著者としてはそのように敬遠されることをこそ避けたいのだろうが、読み手のこちらとしては、やっぱりなかなか簡単に読み込むことはできない。

3)それでも巻末に付録としてついている「現代思想を使いこなすための厳選ブックガイド」はためになる。それぞれの人物の著書を数冊に絞って、導入項を作っている。たとえば・・・

4)ウィトゲンシュタイン
「ウィトゲンシュタインはこう考えた---哲学的思考の全軌跡」鬼界彰夫著(講談社2003)
「ウィトゲンシュタイン全集6」大森荘蔵他訳(大修館書店1975)
「ウィトゲンシュタインのパラドックス---規則・私的言語・他人の心」ソール・A・クリビキ著(産業図書1983)
「ウィトゲンシュタインの言語録---クリビキに抗して」コリン・マッギン著(勁草書房1990)
 

ニーチェ
「ニーチェ入門」竹田青嗣(ちくま書房1994)
「ニーチェ全集十一(善悪の彼岸/道徳の系譜)」信太正三訳(ちくま学芸文庫1993)
 

ユング
「ユング心理学入門」河合隼雄(培風館1986)
「こころの構造」江野専次郎訳(日本教文社1970)
「ユング心理学辞典」A・サミュエルズ他訳(創元社1993)
 

ハイデガー
「ハイデガー---存在神秘の哲学」古東哲明著(講談社現代新書2002)
「存在と時間(上・下)」細谷貞雄訳(ちくま学芸文庫1994)

ドゥルーズ
「批評と臨床」守中高明他訳(河出書房2002)
「ドゥルーズ没後10年、入門のために」(河出書房新書2005)
「襞(ひだ)---バロックとライプニッツ」宇野邦一訳(河出書房新社1998)
「スピノザ 実践の哲学」鈴木雅大訳(平凡社1994)

ネグリ
「未来への帰還---ポスト資本主義への道」杉村昌昭訳(インパクト出版会1999)
「マルチチュード(上・下)」幾島幸子訳(日本放送出版協会2005)
「<帝国>」水嶋一憲他訳(以文社2003)

5)一部既読のものもあるし、今後読むかどうかもわからないが、リストだけは作っておこう。このリストは、このリストの順番で読むことを薦めているところが面白い。ドゥルーズについては、「スピノザ 実践の哲学」をぜひ読みたい。ネグリについては、関心ありつつ敬遠しつつあるところだが、興味深い記述があったので、長文だが引用しておく。

6)<帝国>というネグリ=ハートの概念は、指摘されてからまだ間もなく、ネグリ=ハートによって「解決策の一旦」が提示されてはいるものの、どの程度有効であるかはわかりません。では、私たちはこの問題をどう考えていけばよいのでしょうか。

 ネグリ=ハートは、<帝国>のシステムを「内部から崩壊させる」うえで、マルチチュード(衆合=確固たる組織・体制をもたない人の群れ、群衆)の役割を重視しています。<帝国>の力の源泉はマルチチュードそのものであり、前述のように<帝国>の住民の欲望や不安や反感などが「まとまった動きを見せた」時に、それを力として吸い上げ、管理の妥当性を標榜するのがこのシステムの特徴です。したがって、このシステムの「力の源泉」を枯渇させることを目論むのが近道であるということになります。

 その方法は、「個別の価値観を持つ個人が、ある一つの特定の問題に関しては賛成・反対を述べ、必要である場合にはその特定の問題ごとに集まり、そしてその問題が解決したら解散する」というようなイメージです。それは「一人で反対する」もしくは「一人で賛成する」ということです。そのとき、他に反対・賛成する人がいれば、動きをともにしても構いませんし、また、個別の反対を貫いてもよいでしょう。

 しかし「それでは運動として力を持たない」と感じられる向きもあるでしょう。

 端的に言うならば、「運動として力を持つ」ということ自体が、<帝国>のエネルギー源となっているわけであり、「運動として力を持つ」=「<帝国>というシステムに力を与える」ということになってしまうという「巧妙なシステム」をかいくぐらなくてはなりません。そのために重要なのは「水面下で価値を共有すること」であり、「ともに闘う」という活動を広げることであると思われます(決して「地下活動をする」という意味ではありません)。

 スローガンもなく、組織もなく、単に「個別の問題をどうにかする」ということを考えるためだけの活動であるとき、<帝国>というシステムはそれをうまく取り込んで力とすることができなくなります。「一人で考える」ことの集成としての活動のみが、このシステムに対応しうると考えられます。高田p225

7)この部分がこの本の結論部分であってみれば、仮にネグリの正しい理解ではなかったとしても、高田明典1961年生まれ45歳時の「思想」としてみてみるならば、当ブログとしてかなり親和性があると思われる。また、こう理解してこそ、当ブログがこれまで積極的にネグリを読み込んできた理由にもなるのであり、この視点から、ネグリ再読を試みるのも楽しいはずである。

 

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