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2013/01/11

『哲学者たちの死に方』 The Book of Dead Philosophers<6>

<5>よりつづく 
哲学者たちの死に方
「哲学者たちの死に方」 <6
サイモン・クリッチリー (著), 杉本 隆久 (翻訳), 國領佳樹 (翻訳)  2009/8 河出書房新社 単行本: 372p 原書 The Book of Dead Philosophers 2008

1)およそ190人の哲学者たちの、死にまつわるエピソードは、1960年にイギリスに生まれた西洋哲学者サイモン・クリッチーによって書かれ、1975年、1978年生まれの若い日本の研究者たちによって邦訳されている。

2)ソクラテスから始まり、それ以前の哲学者たち、中世のキリスト教的哲学者たち、わずかに中国古典哲学、そしてルネッサンス期の哲学科学者たち、近代の哲学者たち、現代の哲学者たちへと続き、ほとんど「西洋」哲学史の概観が網羅されている。

3)そのほとんどは、名前を初めて聞くような、なじみのない哲学者たちであるが、この書の特徴は、ひとつひとつの記述が細切れに小さいことと、常に彼ら自身の死を取り上げようとしている姿勢である。

4)しかるに、いくら哲学者たちとはいうものの、一読者にとっては「他者の死」に過ぎず、死を学ぶ、という時の死は、結局は他者の死であり、自らの死、ではありえない。もっとも哲学者たちひとりひとりは、自らの死と全うに対峙したのであり、その姿勢は、読者ひとりひとりにとって、自らの死に対峙するための参考になることは当然である。

5)著者はヨーロッパ大陸の哲学者であり、その細かい哲学者列伝には、インド哲学や、中国哲学、あるいは中東圏などの哲学者たちにはほとんど触れていない。だから、全球的な地球人スピリット探究者にとっては、食い足りないばかりか、いわゆる西洋哲学の至らない点も多く見えてくる、というシステムになっている。

6)最近まで当ブログがランダムに読書を続けてきて、科学、芸術、意識、のトリニティを考えた場合、科学は「始まり」、芸術は「続く」、意識は「終り」に対応しているのではないか、という直観を得ている。

7)同時代人たちの死を考えた場合、例えば、スティーブ・ジョブズを「科学者」に無理にでも分類した場合、彼は、新しい何かの「始まり」を信じていた雰囲気を感じる。イノベーション、という掛け声のもと、様々なムーブメントを起こしながらも、結局は2011年に56歳と7ヶ月の人生を閉じた。

8)ジョブズは、始まりを強く意識していただろうが、彼もまた長い闘病の中で、自らの「死」と対峙せざるを得なかった。

9)同時代人としての芸術家、劇作家・石川裕人の死を考えた場合、彼の人生は、つづく、つづく、の創作に費やした一生だった。彼にとっては、次回作こそが最高傑作なのであり、本質的に、今回の作品で「完」にはなりえない、という人生であった。その石川にも、次回作を構想しながら、静かに死は忍び寄った。その時、彼もまた自らの「死」と対峙していたはずである。

10)当ブログにおける「死」についての関心は、他者の死についてではなく、自己の死である。そしてまた、そこにこそ救いが、「終り」があるはずであると直観する。それはあたかも、始まり=A、続く=U、終り=M、となり、まさに阿吽、AUMとなる、この世の真理へと導かれるはずである。

11)西洋哲学に偏っている本書であり、また哲学史的に前近代の部分に多くを割いている構成であり、実際に共感して読める部分はそう多くはない。それでも、スピノザとかウィットゲンシュタインとか、ニーチェ、あるいはハイディガー、エマーソン、フッサール、ラカン、レヴィナス、ドゥルーズ、デリダ、ラッセル、などなど、当ブログですでに触れている哲学者たちへの考察も登場する。

12)ひとつひとつのコメントは、ある意味、いままで知っていた哲学者たちとは違った側面の紹介であり、それを190つないだこの本は、哲学者たち、というより、著者サイモン・クリッチリー本人の「死」に対する考察となるような構成となっている。

13)読み終わってみれば、「哲学者たちの死に方」という邦題がふさわしかったかどうかは定かではないが、このような、ちょっと難解な内容を一気に(といっても一週間かかったが)読ませてしまう効果はあっただろう。

14)前半部分はともかくとして、後半部分、とくに現代哲学者たちのへのコメントは、いずれまた再読したい、と思う。

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